第7話

 動いていた影を追い、僕は森の中を駆け出す。

鳥のようにも見えるけれど、大樹の枝と枝を飛び移るような姿は鳥では無いだろう。

明らかに人間のような動きで、それはまるで屋根を飛び移る忍者のようだ。


 「…………」


 良くもまぁ、あんな器用に枝から枝へ移動出来るものだ。


 「(僕も、出来るかな……?)」


 ふとそう思い、僕は見様見真似で枝を目指して飛ぶのだった。


 ◆◆◆


 周囲に居る同族たちが、急ぐ様子で森の中を駆けている。

私はその後ろで着いて行き、気配を消しながら息を潜めていた。


 『エルフィ……あの人たちは何を追ってると思う?』

 『――分かりません。けれどもし、あの人なら責任は私にあると思います』

 『別にエルフィが責任を感じる事じゃ無いと思うけどなぁ……』


 草むらや木の陰に隠れながら、エルフィとシルフィは一族の動向を探る。

それと同時に、侵入者が彼だった場合の時の為に備えるのだった。

だがそう予想していた彼女たちだったが、それはすぐに裏切られる事になる。

良い方向に、ではなく……悪い方向へ。エルフィにとっても、この森にとっても。


 ◆◆◆


 「……よっ、ほっ、しょっ……わっ、とと。ふぅ、危なかった」


 見様見真似でやってみた木から木への移動だが、思ったよりも出来るようだ。

けれど僕にとっては、これは大きな疑問が浮かび上がるのである。

それは簡単な話で、何故こんな事が出来るようになっているのだ?という疑問だ。

一般的に普通で、何処にでも居るような高校生に過ぎなかった僕だ。

運動などで体力作りはしていても、ここまで劇的に変化したりは絶対にしない。

それは明らかなはずなのだ。なのに、今の状況がまるで理解が出来ない。


 「(僕の力、な訳がないしなぁ。さて、どうしたものか)」

 『あ?……何だ、ガキが居るじゃねぇか』

 「……っ」


 しまった。深く考えすぎて、周囲の警戒を怠っていた。

黒いローブで身を包んだ集団。数は……十人は越えているだろう。

とても僕一人では、対処出来る方法が思いつかない。


 「――っ!(逃げなきゃっ)」

 『はっ、目撃者を逃がす訳ねぇだろ?ガキが』

 「ぐっ?!」


 無作為に相手の居ない方へ逃げようとした瞬間だった。

目の前が真っ暗になって行き、僕の視界には地面が近づいてくる。

判断は間違っていなかったとは思うけど、逃げるには速さが足らないみたいだ。

僕はそのまま地面に倒れ、闇の中へと落ちていったのである。


 


 


 

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