第5話
美少女、そう呼ばれる類の者たちの存在。
それはゲームの中やアニメの中など、創造物の中での妄想の産物に過ぎない。
僕はそう思っていたのだが、それは間違いだと悟る日が来てしまったらしい。
「…………」
「どうかしましたか?私の顔に、何か付いていますか?」
「あ、えっと……」
何かが付いている訳ではなく、僕は彼女に見惚れていたのだろう。
綺麗な顔立ちをしているし、可愛い系よりはむしろ美人系という容姿だ。
だが、それを言う必要性は皆無と言えるだろう。
「――君は、誰?」
「私はエルフィと言います。それで……貴方こそ、誰でしょう?」
「僕は……」
名乗ろうとした瞬間、僕は何故か言葉が詰まった。
何かが脳裏を過ぎり、そして静かに消えていってしまった。
何が過ぎったかまでは、僕はもう思い出す事は出来ない。
「僕は如月皐月です。エルフィさん、ここが何処だか知っていますか?」
「キサラギ、サツキ……変わった名前ですね。ここはアルフの森ですが……」
「アルフの森?」
聞いた事の無い名前だ。
僕は自分の家の近くにそんな名称の場所があったか、記憶を探ってみる。
だが案の定、そんな名前の場所は脳内検索には引っ掛からなかった。
……となると、ますますここが何処だかが分からなくなってしまう。
「よいしょ、おっとと……」
「何処かに行くんですか?」
立ち上がった僕はよろけながら、彼女の問いかけに頷く。
いつまでも森の中に居ては、ここがどういう場所なのかが不明のままだ。
こういう時こそ、慎重且つ冷静な判断力が必要になるのである。
「うん、少し周りを見てくる」
「でしたら私が案内しましょうか?森の道は険しいですし、迷いでもしたら一日は費やしてしまいます」
「そうなんだ。でも大丈夫。一人は慣れてるから」
そう言って僕は、彼女から離れて森の外を目指す事にした。
のだが……その選択が失敗と分かるのは、少し後の事になる。
そんな事をこの頃の僕は、知る由も無かったのである――。
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