第1話
――この世界は残酷だ。そう僕は思う。
そう思わざるを得ない程、この世界の人生ゲームは理不尽だ。
生まれた時から将来が決まる者もいれば、生まれてから努力して夢を勝ち取る者。
僕からしてみれば、それは才能の有無が差異たるモノだと考えてしまうのだ。
結局この世界は全て、才能のある人間が勝つように出来ている。
それがこの世界の真理であり、現実だ。
『ごめん如月っ!また予定が入っててさっ、今日もすぐに帰らなきゃいけないんだよ!また今度埋め合わせするから、掃除当番代わってくれない?!』
「あぁ、うん。分かった」
ふとした放課後だった。
クラスメイトに頼まれ事をされ、僕は一人教室の中を掃除する。
これはいつもの光景で、もう慣れてしまった環境だ。
頼まれていた内容の中で言っていた予定というのも、その他クラスの人かまたは同じクラスの人たちと遊ぶ為だと知っている。
実際、その現場を見ているのだから――もう何とも思う事はない。
「人生は、諦めが肝心」
僕は、自分の掲げているモットーを小さく呟いた。
そう、人生というのは諦めた方が良いのだ。
夢も希望も持たずに、ただ打算した毎日を過ごしていくのみ。
僕のような人間が努力をした所で才能は無い。それは結局、無駄な努力で終わる。
『まぁた一人で掃除してる。キミは本当に物好きだね』
「…………」
周囲を見ても、誰もいない。
いつもの放課後で、他の皆は既に下校しているはずなのだ。
「疲れてるのかな、僕は」
『あぁちょっと、何を無視してるのさ!――もう、こうなったら』
また聞こえる。そう思った瞬間だった。
「えいや!」
「へ?――痛っ!?」
誰も居ないはずの教室で、僕しか居ないはずの空間で……。
僕は見ず知らずの誰かに突然、後頭部を殴られたのだった。
いや、もしかしたら僕は、背後に居た僕より小さい少年を知っていたのかもしれない。
何故なら、面識も何もないはずなのに……。
とても、とても懐かしい空気になったからである。
「えっと……誰?」
「やっとこっちに気付いた。全くキミは。もう……まったくまったく」
「…………」
だがそんな空気は一瞬で消えて、僕は訳も分からずに首を傾げる。
僕より小さくて、ここの生徒では見た事がないし、服装がかなり変わっている。
冬でもないのに、足元で引き摺りそうなマフラーが良く目立つ。
「さて……まぁ細かい事は置いといて。如月皐月くん」
その少年はコホンと咳払いを一つして、改まったようにこちらに両手を差し出す。
何もかもが分からない僕は立ち尽くすが、少年は一言だけこう言った。
「――キミ、人生をやり直してみないかい?」
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