第4話

 和也の腕枕でユミが休んで、六時間ほど経ったころ、ユミが意識を取り戻した。

「和也さん、起きてる?」和也はユミのことが心配で、目はつぶっていたものの、寝てはいなかった。

「起きてるよ。それよりユミの具合は?」和也は訊く。好物のプリンの効果だろうか、すっかりユミも元気を取り戻してるようだ。

「和也さんとプリンで、調子良くなったみたいだよ」

 ユミの明るい調子に和也は、「よかった。心配したよ」とユミを抱き締める。


 すっかり元気になったユミは「和也さんを感じたい」といって、和也にしっかりと抱きついて激しく舌を絡めてきた。和也も応えて激しくキスをする。


「ねえ。和也さん……」瞳を潤ませたユミが和也を見つめている。

「ん。なんだい?」和也は、ユミが何かを言いだすと思い促した。

「やだ、また私から誘わなきゃダメなの?」ユミが身体をくねらせている。しまった。ユミが和也を求めていることを悟った。


「ごめん。優しくするから安心して」抱き寄せて頭をなでながら、和也はユミにささいた。

「……ありがとう。待たせてごめん」ユミは小声でつぶやくように言った。

 和也はユミの下着の上から愛撫する。ユミも期待しているのだろうか。はっきり和也がわかるほど呼吸を荒くしている。和也はユミの下着を取り去って、こんどは直接ユミを愛玩する。少し冷やりとした感覚があったが、和也は全く気にならなかった。


「ユミ、綺麗だよ」

 本心からの言葉だ。ユミの身体を数度見ているが、何度見ても、和也は同じセリフしかいえない。透き通るような白い肌に、和也の手のひらにすっぽり収まる形の良い胸のふくらみ。モデルのようにすらっとした両脚の付け根には、控えめな黒い陰り。和也は口と指で、ユミをいつくしむ。和也が可愛がる前から、ユミの身体も和也の下半身を迎え入れる準備をだいぶ整えていたようだ。


 和也には処女との経験はなかった。だが、『死ぬほど痛い、身体が張り裂けるような痛み、痛すぎて泣いちゃった』といった話を、和也も耳にしたことがある。ユミには痛みを経験させたくはない。そう和也は切実に願った。しかも昼間はユミもかなり体調が悪そうだった。痛覚は他の感覚で打ち消せるはずだ、と和也は考える。手と舌でユミを絶頂に導けば、ユミの痛みは和らぐかもしれない。


 そこで和也は念入りにユミを可愛がる。ユミも和也の行動に、満足しているようだ。和也の頭を撫でたり、小さなうめくような声をあげたりしている。

 ユミは和也の入念な愛撫に、満足そうな叫びをあげる。

「和也さん……」ユミが和也を抱き締める。おそらく、ユミが覚悟を決めたのだろう。だがまだもう少し。和也はユミを再度攻め立てる。


「私、もうだめになってる……」ユミが息も絶え絶えながら、和也に伝える。ようやく和也は決意した。和也がユミの身体に覆いかぶさると、ユミは反射的に身体を強張らせる。

「ユミ、大丈夫だよ」

 優しくユミの身体を和也は撫でて、緊張を解きほぐす。和也はユミの冷たい体温は、まったく気にならなかった。ついにユミと一体になれる。悦びが何より上回った。

 気になるユミの表情をうかがえば、静かな笑みを浮かべている。入念な準備が功を奏したのだろうか。


 和也は押しとどめるような抵抗を少し感じたが、ゆっくりとユミの身体を引き寄せて自分の身体と密着させていく。

「つっ!」ユミは、言葉にならない小さな叫びをあげる。だが、和也の背中に両腕を回して、和也に身を任せた。

「ユミ……」

「和也さん、お願い……」

 ユミの表情は痛みと快感の双方を我慢しているように思える。


 ユミと一体となった和也は昂ぶっていて、ユミの身体を配慮したゆっくりとした動きでも、臨界値はすぐだった。ユミも和也を求める声をあげる。

「ユミ、愛してるよ」和也は感情の全てを解き放った。

 ユミの右目から一筋の涙がゆっくりと落ちる。

「ありがとう。……私もよ」

 和也はユミを優しく抱き寄せて、頭や身体を撫でた。ユミも和也をしっかりと抱き締める。和也はユミとの確かな一体感を充分感じて、天にも昇る幸せな気分でいっぱいだった。


 和也は後始末をしてから、ユミの横に寄り添ってユミを抱き締めた。ユミの表情は、極めて落ち着いている様子。気がかりだった痛みはどうだったのか。

「ユミ、大丈夫だった?」

「うん! かなり痛かったけど、大丈夫」

 和也は明るい表情にほっとするが、昼間のユミの体調はかなり悪かった。無理をしているのではないか。

「本当に?」不安になり和也は訊ね返す。

「途中からは結構気持ちよかったよ。へへっ。もう二、三回してもらえたら、癖になっちゃうかもよ?」陽気に笑うユミに和也は癒やされた。ユミのことが好きで好きでたまらない。

 離れたくない、消えてほしくない。ぎゅっと胸にユミを抱き寄せる。


「でもね。もう私から絶対誘わないよ? 次回以降は、和也さんから誘わないと知らない。すごく恥ずかしいんだから……。私、えっちいのが好きじゃなくて、和也さんとイチャイチャするのが好きなんだからねっ!」

 ユミはぷっと頬を膨らましている。だがユミが本気で怒っているのではない。和也もユミの表情で判断できる。

「分かってるよ」和也はしっかりとユミを抱く。最高の気分だ。


 ふと気づけば、ユミがショーツとブラを着けて、パジャマを着ようとしている。

「あ、ユミどうした?」和也は訊いた。

「ごめん。そのあの……まだ和也さんが入ってる感じだから、ちょっとトイレ。すぐに戻るから待っててね。えへへ」

 ユミは照れ笑いをして、和也に軽くキスをすると、ささっと寝室から出ていった。

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