全てはこの時の為に


肺に溜めた息を吐く。

呼気に含まれる水分を増幅し鯉霧と成す。


懐から実母の形見、焦茶の珠を取り出し指で弾いた。

強く弾かれた玉は霧の中を飛び、転がる岩肌に打つかる。


小さな音と共に珠に罅が入った。


珠の中から何処か懐かしく感じる経が溢れ出す。


シンカのものとは異なる経に鬼が反応して振り向く。


左腰にぬ結え付けていた小さな鞘から短剣を抜く。

美しい翡翠色の剣身が煌めく。


嘗て恋焦がれ、命を賭して助け出した美しい女の瞳と同じ色の剣身。


彼女に贈り、その彼女が死を覚悟した際に愛する妹に贈った。

妹は命を失いかけるもの生き延び、短剣を彼女に返した。


カヤテはシンカが旅立つ前日、その短剣をシンカに託した。


そんな短剣を今シンカは振りかぶり鬼に踊りかかっていた。

音もなく飛び上がる。


翡翠の短剣の刃にシンカの血液が纏わりつく。

すぐにそれは凍りつき、翡翠の刃を赤黒く覆う。


シンカに背を向けた鬼の首筋に飛び上がりながら鋒を向ける。漸く見せた急所に対する隙。


首の皮膚は薄い。

僧帽筋、頸板状筋、肩甲挙筋の筋を見極め振り下ろした。


「カッ!?」


翡翠の刃が半ばまで鬼の首に突き立つ。

だが鬼は直ぐに腕を振り回してシンカを跳ね除けた。鬼の背を蹴って逃れようとするが鬼の手首の先がシンカの脛に当たる。


逃げていた事と、鬼が大分弱っていた事で最悪の状態は避けられた。

鬼の手首を切断していなければより高威力の攻撃となっていただろう。


脛に痛みが走る。


脛骨に罅が入った事を痛みで察知した。受身を取って転がり立ち上がる。


痛む。


身体は震える程冷えている。

しかし全身の痛みに全身脂汗で濡れそぼっていた。


荒い息を吐く。鬼が首筋に刺さった翡翠の短剣を抜き取り捨て去った。


傷口からは血が流れ出なかった。

見れば翡翠の短剣は刃が半ばから折れていた。


「オワリダ。コロス。オマエヲコロス。オマエダケハ、コロスッ!」


ゆっくりと油断なく、腸を引き摺りながらも鬼が近寄って来る。


そして右手に持った木の枝を突いてきた。

体を落として躱す。


直ぐに薙ぎ払われる。

地を前転してこれも躱した。


鬼の力に枝が耐えられず持ち手から折れて明後日の方向に飛んでいく。


残った持ち手をシンカに向けて投げつける。

転がって躱す。


枝が地に減り込み周辺に土砂を降らせる。

転がって距離を取り起き上がる。


鬼は別の太い枝を拾い上げ、手首から先を失った左腕を樹の幹に突き身体を支えて槍のように枝を構えた。


シンカも立ち上がる。

吐き気がする。貧血のせいだろう。

頭痛も酷い。頭の中で大きな鐘が鳴らせれているかの如く、脈拍と共に鈍痛の波が訪れる。


それでもシンカの戦意は失われない。


確かにこの鬼は強い。途轍もなく。


カヤテに出会う前のシンカであれば既に息はなかっただろう。

幾重にも積み重なった経験がシンカを支えていた。


これまで挫けそうな程の苦難を幾度も乗り越えてきた。

これまではそれを乗り越えてきた。


大切な者達を守る為に、どれ程辛くとも立ち、武器を振るい、経を練って来た。


嘗てのシンカは大切な者を得て己が弱くなったと評した。

そして到頭気付いた。


弱味は確かに増えた。


しかし彼女らを守る為に立ち上がった時、その力は何倍にもなるのだと。


今もそうだ。


シンカの背に背負われた多くの命。

彼女らを思えば苦しさにただ喘ぎ、目を閉じ耳を塞いで背を向ける訳にはいかないのだ。


生きる事は辛い事だ。

平坦な道など存在しない。


何をするにも犠牲を要し、苦痛に溢れている。


だが、ただ辛いだけが生ではない。

苦難の合間には小さくとも幸福が溢れている。


それを見つけられるかが幸福か不幸かの境目だ。


そしてその幸福を守る為に人は戦う。


シンカも同じだ。何よりも失い無くない幸福と比較すれば己の命すら投げ打てる。

それがシンカの見つけた愛の形だった。


愛の為なら己の命すら差し出す。


痛みも苦しみもシンカの愛の前では瑣末な物だった。


人生とは、争う事だ。

敵が鬼か、人か。病か権力か。

戦う相手が嫌いな人間か戦争か。


大小の違いはあれど、その種類に差は無い。


それがシンカの哲学だ。


武器を抜く。

ダーラから下賜された龍の爪から鍛えられた短剣だ。


鬼が枝を突いてくる。

シンカの中心線目掛けて三度。


不用意に受けては圧倒的な怪力に吹き飛ばされるだけだ。

ただ、目前の攻撃に集中する。


時の進みが遅くなったかのように感じる。

樹々の葉、下草のそよぎ。流れる雲、舞う土埃。

全てが鮮明にシンカの目に映った。


世界は美しい。

そんな事を感じた。


例え片手片脚だとしても。

積み重ねた技術と経験は自分を裏切らない。


誰かの言葉が脳裏に反響する。


例え努力をしたとしても、必ずしも報われるとは限らない。

しかし、努力をしなかった者が報われる事は有り得ない。


シンカは努力して来た。

逃げなかった。


故に手に入れたのだ。幸福だと思える物を。それを守って来た。これからも守る。今も。


その努力が、苦痛が、経験が、全てが自分を形作っている。

無駄な経験など何一つとして有り得ない。


塵芥の様な小さな一つ一つがシンカの中に積もりシンカを形作っているのだ。もっとだ。


足りない。

力が足りない。


嘆くだけか。違うだろう。それは違う。辛い事は何度もあった。


身体の痛みなど瑣末な痛み。心の傷に比べれば。

失う事の苦しみは何にも勝る。


手脚を失ったから。血が足りないから。痛みで思考が鈍るから。関係無い。家族を失う事に勝る苦しみがあろうはずが無い!


「ああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」


喉が掠れる程の咆哮を上げた。


シンカに向けて伸びる木の枝にダーラの短剣を添える。


身体が熱い。

経が巡っている。

骨を、神経を、筋肉を覆っている。


凄まじい衝撃。

指、手首、肘、肩の順に衝撃を流す。力は胴を伝い足元へ。

地面が鬼の力を流されて爆発する。

足元が崩れる前にシンカは跳び上がり蜻蜓を切って着地。


二撃目。

身体の右へ枝を流し、同じ様に力を受け流して飛び上がる。

蜻蛉を切って着地。


三撃目も同じ。

左側に受け流す。再び跳び上がり蜻蛉を切って着地。


薙ぎ払い。

潜って躱し足の裏の動きだけで1寸にじり寄る。

鬼は枝が折れぬ様に力を抑えている。


着地した脚が痛む。

己の足の骨に祈る。

折れないでくれと。耐えてくれと。


ダーラの短剣は龍の爪だけあり頑丈だ。まだ使える。


「ッ、ラアッ!」


躙り寄るシンカに鬼が再び突きを放つ。膝を折って体を落とし躱す。シンカの頭上に鬼の拳が到達する。

枝を握る親指に向けて短剣を振るう。

岩断ち。


鬼の親指が切断されて枝がすっぽ抜ける。


「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」


シンカの剣速と鬼の力に耐えきれずダーラの短剣の柄が折れる。

まだだ。


最後の武器を取り出し握る。

クウハンの針。

砥木で作られた硬い武器だ。


クウハンの最期を思い出す。


クウハン。シンカは彼の背を見て力を磨いた。


戦闘ではシンカが勝つだろう。だが今もなお彼はシンカの目指す理想の戦士だった。


強く、理知的で里想いの戦士。


半身を失い、己で傷を焼き塞ぎ、情報を伝える為に腕だけで森の中を逃れた。


家族に愛していると言葉を残して死んでいった、偉大な戦士。


皆が命を賭してここまで辿り着いた。


シンカも同じだ。命を懸ける。


ここ迄の道のりは全て導かれた物だ。


何が導いたのか。精霊か、運命か。或いはそれ以上の何かなのか。


だが間違い無く、シンカは導かれて来た。

間違い無く、シンカは襷を受け取り今ここにいる。


皆から一体何を受け取って来たのか。

武器?想い?分からない。


「………皆……俺に、力を……」


テンキ。ヨウロ。ヨウキ。クウハン。


彼等を思う。


鬼が再び枝を拾う。


しかし握る事は出来ない。親指が無いのだから。


その場で跳ねる。近くの樹の幹を蹴りさらに上へ。

枝に片腕で取り付き身体を振って更に上へ。

片脚片腕で枝に取り付き、身体振って次の枝へ。どんどんと上へ登っていく。

そして大樹の頂点を越える。


沈み行く太陽の僅かな上端が見える。

群青色の美しい空に、所々かかった雲が橙色に染められている。


僅かな時間、その美しい空を目に留めシンカは落下を始めた。


「父さん、母さん」


落下しながら胸に手を当てる。

そこに手紙が入っている。


シンカの身体は再び枝葉の中へ。


通り過ぎる枝を蹴り落下速度を上げる。2本、3本、4本。

鬼の突進もかくやという速度に達する。


針を逆手に握り直す。


機会は一度。


彗星の様に落下しながら腕を振りかぶる。


枝葉が切れ、鬼が見える。位置に間違いはない。


轟音が鳴り響く。


あまりの威力にシンカの腕は耐えきれずひしゃげた。


強く地面に打ちつけられ何処かの臓器が破裂した。

経で強化していても耐えられなかった。咳き込む。


喀血した。息が苦しい。肺か。


鬼が首筋を抑えている。


先にカヤテから受け取った翡翠の短剣を突き刺した場所だ。

そこを狙った。


肉の中に潜り込む翡翠の刃をクウハンの針で更に深く突き刺した。

鬼が首筋を抑えるその指の隙間から鮮血が鼓動に合わせて迸った。


「……オ、ノレ…オノ…レ……」


倒れ込む。


初めと比べれば明らかに弱々しい動き。

しかしまだだ。


シンカは転がりながら距離を取る。

再び咳き込む。喀血が顎を血に染める。


「…コノ、トゥティラが…コケブタゴトキ…ニ………。…ウヌ…ダケハ……ミチズレニ…シテクレルッ!」


鬼が再び立ち上がった。

大樹を支えにふらつきながら身体を起こす。


シンカは再び激しく咳き込む。

その瞬間鬼の姿が消えた。


シンカにできたのは全身に更に経を循環させ肉体の強度を上げる事だけだった。


大樹に叩き付けられる。

首を抑えられている。


「げ、ゲッゲッゲッ、ゲゲゲゲゲッ!」


にたりと鬼が嗤う。


「っ、しくじっ」


ゆっくりとシンカの首を掴む力を強めていく。


「かっ、が、ぐ、ぐ、くっ」


抗おうと右手で手刀を放つが効果は無い。意識が薄らみ始める。


その時、甲高い鳴き声が耳に届く。


羽音と共にヤカが鋭く降下し、鬼の残った片目を突いた。


鬼は絶叫を上げて顔にしがみ付くヤカを捕まえようとしたが、ヤカは素早く飛び立つ。


鬼は闇雲に羽音を目指して腕を振り回す。

飛び立ったヤカは逃げ去ろうとする。


しかし余りに速い腕振りはヤカを捉える事は無かったものの、その風圧で小さな身体を薙ぎ払った。


吹き飛ばされたヤカが錐揉みになりながら木の枝にぶつかり地に落ちた。


ヤカはもう動かない。


ヤカ…。


シンカの経が高まる。限界を超えた速度で経が練られ、身体に樹形の火傷ができる。


突如視界が真っ暗に染められた。

急激に起こした行法の副作用。

シンカの眼球は感雷によりその機能を失った。


鬼が絶叫を上げた。

直ぐに距離を取る。


再び咳き込む。当然の様に喀血する。

息苦しい。しかし経が残る肺の機能を底上げし呼吸だけは続けられる。


だが激しい動きはもう出来ない。

武器も無い。


ひしゃげた腕が邪魔だ。

神経が切れたのか肘から先は痛みすらない。

邪魔だ。


白糸を吐き出して右腕を切断する。


先の一撃は鬼の臓器をこれでもかと焼いたはずだった。

だが鬼は苦しげに唸り声を上げながらもまだ立っていた。


激しい動きにいつの間にか壊れかけていた靴を跳ねて脱ぎ捨てる。


両腕は失われて、罅の入った左脚だけがシンカに残された武器だ。


対して鬼も襤褸雑巾の様な有様だ。

しかしそれでも立っている。


正に王だ。


逃げる事ははなから選択肢には無い。


再び咳き込み、喀血。もう長くは持たない。


その時、跳ねて体勢を整えていたシンカの脚が何かを踏んだ。

鞣した革の肌触り。シンカの外套だ。


その生地の下の何かを踏んだのだ。


脚の指で外套を掴み跳び上がって裏返す。小さく跳ねてそれが何か探った。


柄だ。


それが何か咄嗟にシンカは分からなかった。


だが脚の指で形を確かめ、それが何であったか思い出した。


天海山で山渡りを滅ぼした時、シンカは腹の膨らんだイリアの妹達を見て、その姿を森渡りの里で自分を待つリンファに重ねた。


シンカは彼女らを見逃した。

その時、イリアの妹がシンカにこれを投げて寄越したのだった。


なんのつもりだったのか。真実を知る機会は最早存在しないだろう。


直前に姉を殺したシンカに、なぜあの様なことをしたのか。

いや、今なら何となくその理由がわかる。


彼女は姉よりも腹の子の方が大切だったのだ。


姉の死がどうでも良かったという事では無いだろう。


だが彼女は腹の子を守りたかったからこそ、何故自分達が殺されかけているのか自問自答したに違いない。そして一族としての滅びが因果応報であると結論づけたのであろう。


しかしそれでも、子は守りたかった。


見逃され、彼女は姉の仇に対して感謝すら感じてしまったに違いない。


容易に想像できる。子が産まれたシンカには分かる。

同じ立場に立ったとしたら、シンカも同じ様に感じるだろうから。


それは鍔無しの短剣だった。

掌大の暗器に近しい武器だった。


脚の親指を短剣の下に差し込み、弾いた。

短剣が回転しながら飛ぶ。


シンカは短剣の動きを経で感じ取り、口で咥えた。

鬼が首筋から血を噴き出し、臓器を引き摺りながら肩足立で近付いてくる。


鬼の体温も低い。

弱っている。

両目を失いながらも音を頼りにシンカに少しづつ近付いていた。


シンカは大きく鼻で息を吸った。


そして残る脚を地に強く打ち付ける。

破裂音が周囲に響いた。


それは絶技であった。

地に打ち付けた時の力を利用し、シンカは滑る様に直進した。


無手・蜂鳥渡り


クウハンから学んだ技だ。


大地と並行に浮きながら距離を詰める。


そして加えていた短剣を吐き出した。

鬼の直前で浮かせていた脚を着く。


音も無く距離を詰めたシンカに対し、鬼は気付けず僅かな着地音に身構え、頭部を守る。


足元に落下する短剣。

回りながら落ちる短剣の向きを経で把握する。


無手・蹴り独楽


跳び上がり後方回転しつつ蹴りを放つ技だ。


ナウラ。カヤテ。ヴィダード。ユタ。リンファ。シンリ。

引き伸ばされた時間の中、シンカは心中で妻と子の名を呼んだ。


これで駄目なら、本当に万策が尽きる。

余す事なく足先に力を伝え、低い位置から短剣の柄を蹴り上げた。


短剣は滝を遡上する魚の様に蹴り上げられて鬼の右脇腹から体内に潜り込んだ。


「ガッ!?」


短く息を吸い上げ、鬼は動きを止めた。


打ち込まれた短剣は腸やその他の臓器を斬り裂き、その果てに深く心臓に突き刺さり、到頭朱顔鋼鬼の息の根を止めたのだった。


シンカの着地後、その図体が地に倒れ伏す。


呼吸音も、心音も無い。


流れ続ける血液が黒土に染み込んでいくだけだった。


到頭、シンカはやり遂げたのだった。


荒く、濁った呼吸をしながらシンカは倒れる。


「……ああ………」


感じる。

全ては繋がっている。


全ての細い道が、川の支流が本流に流れ込む様にここまで繋がっていたのだ。


今までの出来事が走馬灯の様にシンカの脳裏を駆け巡る。


狩幡の浜辺でナウラを助け、三尺具足の群れと戦わなければ、シンカは自分をも巻き込んだ感雷の制御を誤り、鬼に止めを刺すことができなかっただろう。


カヤテを助け、様々な経験を積まなければ、到底戦い続ける事はできなかっただろう。


ヴィダードと縁を結ばなければ経の探知技術は磨かれず、最後の一撃を繰り出す事が出来なかったはずだ。


ユタに心を許し、彼女を助けなければ手足を失って戦い続ける事はできなかった。


リンファを許して結ばれなければ、彼女の短槍・素貧を借り受ける事は出来ず、鬼の動きを鈍らせる事はできなかった。


ダーラを助けなければ彼女から龍爪の短剣を受け取る事はなく、ミトリアーレを救えなければ翡翠の短剣はグレンデーラの瓦礫に埋もれていただろう。そしてコンドールから青鈴岩の剣を授かる事もなかった。


ナウラの言葉に従って、ヴィティアで捉えた山渡りを助命せず、そして死にゆくヨウキを許さなければ翅は1本足りず、鬼の脚を切断する事は叶わなかった筈だ。


クウハンの最期に立ち合い、情報を引き出す事に執心し、彼の最期の言葉を聞かなければ。里の運命と同時に針を託されることもなかった。


そして、天海山でイリアの妹を見逃さなせれば、鬼の心臓を刺し貫く事はできなかった。


シンカの歩んで来たこれまでの道。

1つでも別の選択をしていれば、鬼は倒せなかった筈だ。


全ては、繋がっていたのだ。


幼いシンカを置いて鬼に殺された実の両親。

彼等の死も。


オスカルを助け友となった事も。

グレンデルに味方した事も。

ヴィティアで戦争に巻き込まれた事も。

里が山渡りに襲われた事も。


全てこの結末にたどり着く為に意味があったのだ。


リンレイに引き取られ、彼の妻達、母達と誼を結んだ事も。


5人の妻を娶った事も。


何もかも全てがこの道に繋がっていたのだ。


圧倒的な朱顔鋼鬼の存在の前に幾度挫けそうになったか。


その度に今まで死んで行った同胞達の顔を思い浮かべた。


愛するものを守る為に城壁から飛び降りる青鈴兵。


僅か10歳で年下の同胞を守る為に戦い死んだセンバ。


父と母の手紙。

妻達のシンカに対する愛。

幼い息子。


そしてずっと旅を共にして来たヤカ。


苦しい旅が、ここで漸く終わったのだ。

辛い戦いが、ここで漸く終わったのだ。


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