ラクサスの王都ガジュマにある高級宿の一室で肉を叩く鋭い音が響いた。


シンカの頰がナウラに張られた音だ。


「どうして叩かれたか分かりますか、シンカ。」


何時も硬いナウラの表情であるが、加えて今は頰が引きつっている。

体温も高い。

激昂状態と見える。


「俺は反省していない。同じ状況になれば何度でも同じ事をするだろう。」


「っ!この!」


振り上げた腕をナウラは自ら止める。


「どれだけ心配したと思っているのですか!」


「ナウラ。私が言うのも何だがその辺にしておいては貰えないだろうか?シンカは私の為に・・」


「貴女は黙っていて下さい。そもそも貴女がむざむざ捕まるからこの様な事になったのです。」


「ええぇ・・厳しいな・・・」


カヤテががっくり項垂れる。


「ユタは兎も角、私とヴィーは貴方の妻です。どの様な苦楽も共にします。夫婦とはそう言うものではないのですか?」


「さり気無く僕の事外すのやめて欲しいなあ・・」


「多少の危険であれば共にすればいいと思っている。先の様に絶望的であればナウラの様な小便臭い小娘を連れて行けるはずもない。」


「言いましたね。私の何処をどう見れば小娘に見えるのですか。耄碌しましたか?里に帰って引退しては如何ですか?」


「身体だけ育っても仕方が無いであろうが。」


「そうよぉ。無駄な肉だけ育てても仕方が無いわぁ。」


「ヴィーは黙っていなさい!貴女も何とか言ってはどうですか!先立たれて困るのは貴女も同じでしょう!!」


「ヴィーは何処までもお伴します。何処までも。」


ヴィダードの表情を見ていたカヤテが身震いした。


「馬鹿ですか。お供できないから怒っているのですが。貴女は小娘の状態で身体の成長が止まった様ですが、頭の成長も止まっていた様ですね。」


「カッ!?」


「もう。辞めなよ3人とも。僕は楽しかったよ?惚れた男の助太刀に3人で乗り込む。御伽噺になりそう。シキミって男と闘かってみたかったけど。それは残念かな。」


「ユタ。怒りますよ。」


「わ、分かったよ・・・」


騒がしくなってきたので徐々に壁に気配を同化させ、じりじりと窓に近寄る。


「薬で眠らされたのですよ?仮に1人で行くにしても言葉で説得するのが筋ではありませんか。」


「えぇぇ・・それ、シンカに薬を盛って潰して押し倒してやったって自慢してた人の台詞じゃ無いよ・・・」


「喧しいです!あの頃のシンカはまだカヤテに未練が有りましたからね。仕方がありません。」


「まだ!?どう言う事だ!私のシンカだぞ!」


「ヴィーのです!この腹筋女!思い上がりも甚だしいわぁ!」


「ふ、腹筋の事は言うな!」


「そうだよっ!腹筋の何が悪いのか教えてよっ!あ、でも僕、カヤテ程じゃ無いし大丈夫か。」


到頭4人全員で騒ぎ始めた。

シンカはするりと窓から抜け出し酒場への脱走を図った。


張られて傷付いた口の中を酒精で消毒だ。


「貴女達も少しは怒っては、あっ!居ない!?」


背後から声が聞こえたが聞こえないふりをした。



ラクサスは見栄と誇りを重視する国家だ。

その街並みは華美である。


蜥蜴のように建物の壁を伝い降りたシンカは大人の社交場に向かう。

煉瓦造りの街並みを抜けて近年中々訪れる事が出来なかった女が切り盛りする酒場に向かった。


シンカの姿を認めて扉を開いた女に軽く微笑んで席へと案内された。


所帯を持つと決めて他所の女に手を出すにはない。


女には分からないかもしれないが、これは心の洗濯だ。

女と話す事を楽しむ。

それは決して疚しいことではない。


席に着き酒を頼むと暫くは考えに耽る。


ナウラの気持ちはよく分かる。

自分とて危険を前にして置いて行かれれば忸怩たる思いも抱くだろう。


だが、今回の事は死ぬ可能性が高かった。

最後に彼女達が駆け付けてくれなければ命を落としていただろう。


感謝しているし、その好意を尊くも思った。

だが、死ぬとわかっていて連れて行く事は出来ない。


何度でも同じ選択を繰り返すだろう。


しかし、ナウラがあそこまで怒りを露わにするとは思わなかった。

まさか手が出るとも思わなかったが、昔の恩を感じて言われた事をその通りに行う様子よりも遥かに良いのに変わりはない。


彼女は決して誤った主張をしているわけでも無い。

打擲されて当然であった。


周りの下品な男達の会話も面白いものは無かった。


これからどうするべきか。

一杯目の麦芽酒を煽り、思案した。


ナウラ、ヴィダードと結ばれて里を出た時の傷が塞がれている事には少し前から気付いていた。


里へ帰るか、兼ねてからの予定に沿ってコブシへ赴くか。

或いは古の遺跡探索のためにエラム大湖へ訪れるのもいいかもしれない。


宿に帰って4人に相談しようと決めた。


ケツァルよりカヤテを救出して以来、彼女とはあまり話せていない。その時間も必要だろう。


宿へ帰ると女達はシンカの寝台に横一列に腰掛けて話しをしていた。


「あ、帰ってきた。」


干し肉を齧りながらユタが足をばたつかせた。

奇妙な光景だ。


「シンカ。今回は許します。みすみす薬を吸い込んでしまった私の未熟さと言われればそれまでです。次は気を付ければ良いのですから。」


「出来るかな?」


「・・・」


にやりと笑うと微細な表情の変化でむっと膨れた。


「ガジュマに着いてまだ1日だが、そろそろ次の予定を決めたいと思う。」


言うとむっとしていたナウラは今度は楽しそうな雰囲気を纏った。


「色々有ったが、カヤテを同胞として迎え入れる事になった。彼女の旅支度を整え次第エラム大湖で遺跡調査を行う。」


「えぇぇ、つまらないよ。メルセテに傭兵として向かう方が楽しいよ。」


ユタが足をばたつかせて文句を言う。


「ではユタは1人でメルセテだな。他のものはエラム大湖で。」


「あっ!そう言う事言う?着いて行くよっ!」


ナウラは楽しみなのか自分の手帳を広げている。

笠山、別名ウルク山遺跡の記録を読み返しているのだろう。


「もうユタはいいよ。知識も興味無さそうだし、破門ね。」


「待って!ごめん!ごめんねシンカ!ちょっとした冗談じゃないか!拗ねないでよ・・」


「・・・ちょっと・・?」


「・・うーん、中くらい?」


「さようなら。」


「もお!」


干し肉を齧りながら謝られても特に誠意は感じられないのだ。


「そのエラム大湖とやらで何をする?」


カヤテが問う。


「太古の遺跡があるはずなのだ。遺跡を探し出し、探索し、古い記録を確認する。」


「それは何の役に立つのだろうか?」


「何も。知的好奇心を満たすだけだ。」


「何とも優雅な話だな。」


カヤテは呆れ半分、関心半分といった様子で唸った。


「良い機会だ。今まで敢えて話して来なかった、森と魍魎の成り立ちについてここで話しておこう。」


シンカの言葉に猛烈な勢いでナウラが顔を上げた。

カヤテは何の事かわからないのかとぼけた顔をしている。

ヴィダードはいつも通りシンカの顔を見つめており、ユタは干し肉に集中していた。


長い話だ。


その昔、遥か古代の話で有る。

暦で言えば優に三千を数える程古い時代、大陸にはまだ多くの平原が続いていた。


当時はクサビナ等という国は当然無く、勿論それ以外の国も存在していなかった。金属なども未だ扱う術は未発達で、武具は木製か石製が主流であった。


当時白山脈の東側山麓に浅黒い肌の馬や羊を飼い慣らし、土地を持たぬ民族が住んでいた。伝承では彼らをテュテュリス人と呼ぶが、彼等は馬の扱いに長け、同時に非常に残忍な気性を持つ人種であった。


一方現在のクサビナを中心とした大陸中央部にはランジュー等の北方4国の特徴を持つ民族が生活していた。彼等は地を耕し家畜を飼い慣らして土地に根ざして生活を送っていた。


彼等は集落を築き、物々交換を主体に交易を行なっていた。規模の小さい都市国家を築いていたと言える。

彼等はシメーリア人という名で伝わっている。


はっきりとした時期は分かっていない。しかし今より三千年前には少なくともテュテュリス人は自らが概ねの縄張りとしていた土地から溢れ出した。記録ではこの土地では数百年に渡って穏やかな気候が続き、天災も無く獣はよく取れ続けたと言う。


狩猟を主な食い扶持としていた彼等にとってさぞかし過ごしやすい期間であっただろう。

豊富な食料はテュテュリス人を争わせる事なく養い、恐らくは爆発的な人口増加を齎したはずだ。


故に彼等は溢れたのだとシンカは考えている。


三千年前に大きな天災があったという記録はない。しかし彼等は溢れた。人口を賄うだけの動物がいなくなったのか、或いは住う土地がなくなったのかは分からない。

結果的にテュテュリス人は三千年前大陸全土に進出しだした。

当時の白山脈以東の記録は残っていない。しかし白山脈の西山麓、現在のガルクルトに住んでいたクサビナ人の祖先であるアガド人が浅黒い軽装騎兵に襲われ土地を捨てざるを得なかったと言う記録は残っている。


アガド人は最古の国家を形成しており、拙くはあったが製鉄の技術を擁していた。当時周辺民族を圧倒する力を持っていた様だが、テュテュリス人は巧みな馬裁きで彼等を圧倒し西へと追いやった。


追いやられたアガド人であったが、彼等はテュテュリス人の操馬技術と兵の多さに敗れただけであり彼等が精強である事に間違いは無かった。

必然的に次に追い出されたのはシメーリア人となった。彼等は北や西に逃れて北方4国やラクサスの祖となりった。そしてアガド人に対する強い怨念を持つに至った。


ロボクやラクサスがクサビナを狙う背景にはこうした歴史的事実があると考えられる。


「シンカ。テュテュリス人とは何だ?所謂精霊の民の事なのだろうか?」


「いえ、馬に乗る浅黒い肌の民を私は知りません。身体的特徴はダゴタの民が近いように感じられますが・・」


「ナウラの推測は強ち間違っていない。さて、続きを話そう。」


テュテュリス人は砂漠地帯を除く中央大陸、西大陸の殆どを席巻したと考えられる。

当時の最古の王国、シンカやカヤテの祖となるアガド人を始め、追いやられたシメーリア人。

争いなく過ごしていたドルソ人。太古より争い続けるモールイド人。肥沃な土地にて繁栄していたウバルド人。


皆テュテュリス人に虐殺され、大地に多くの血を流した。


「森渡りにはそんなにも古い時代から大陸全ての歴史が残されているのか。」


「いや、正確には俺やカヤテの祖となるアガド人が残した資料のみが正確な根拠となる。西や東の歴史は当時のアガド人には知るすべが無い。だが、ある事実がそれを証明しているのだ。」


多くの血が日夜大陸中に流れた。

最古のアガド人による王国ヴァルドでは領土は何処も彼処も血に塗れていたと言う。


元々住んでいた民族は血濡れた大地から逃れて生活した。


変化は数年ですぐに現れたという。

始めの異変は植物に起こった。

それは決して悪い変化では無かった。

草木の成長が早まり、作物の収穫が早まった。

しかし既存の品種は消え、新たな種が大地を覆った。


そして次第に森の面積が増え、人々の生活圏は狭まっていった。


次に変化が起こったのは小型の生物であった。

世代交代を経る毎にそれらは身体を大きくしていった。


軈てそれは大型の生物まで波及する。

既存の品種は身体を大きくし人々の手に負えなくなっていった。

その頃には森は大地を覆い尽くし人々を脅かすようになった。


影響は到頭人に迄波及した。

影響を受けたのは血塗られた大地に住み着いたテュテュリス人だった。

彼らは徐々に理性を失い人語を話さなくなった。

彼らは軈て鬼と呼ばれる様になった。


「鬼だと!?鬼は人間が祖だというのか!?」


「豚鬼や牛頭、馬頭等は或いは毛族を祖としているのやもしれんな。」


「成る程。ではダゴタの角族は途中で理性を取り戻した鬼、という事なのでしょうか?」


「それか、本来のテュテュリス人こそが彼らかも知れぬな。多くの人種がテュテュリス人に追われて汚れなき大地に身を潜めた結果、そのままの容姿を保った様に、極一部の彼らはそのまま森に飲まれずに子孫をのこしたのやもしれん。定かではないが。」


「俄かには信じ難いですね。話を聞くに血が原因の様に聞こえますが。」


「うん。これは森渡りの推論であるが、血には多くの経が含まれている。経は脊椎で作られて血中に放出される目に見えない小袋の様なものから生成される。大地に血とともに撒き散らされたそれが影響を及ぼしたのでは、と考えられている。」


「理にかなっていますね。霧の森の王種を思い返せば有り得ない話ではありません。経が含まれた霧を吸い続けてあれが生まれたというのであれば、人が鬼に変わることもさして不思議ではありません。」


「霧の森?王種?何の事だ?」


ナウラが自分の腕を摩る。

余りに衝撃的な話に怖気づいているのだろう。


「何故軽々しく話さなかったか分かったか?今まで様々な事柄を学び、そして目で見てきたナウラはすんなりと飲み込むことが出来た。だがカヤテは飲み込みきれていないだろう?」


「疑って申し訳ありませんでした。」


「私は本当に付いていけないのだが。」


その日はあれこれと議論して1日を終えた。


「ヴィーにはよくわからないけど、兄様が聞けば喜びそうな話しねぇ。」


「ヴィダードには兄がいるのだな。」


「僕もあった事あるよ。いい人だった。ヴィーと違って普通だったし。」


しかし話は何時も他愛の無い雑談へと変じていく。



翌日起床し朝餉を終えると一度シンカの部屋に集まった。


「今日から旅の支度を始める。皆、妹弟子の為に各々装備を作れ。ユタは編上靴。ナウラは外套。ヴィーは菅笠。期間は3日。その後は背嚢、胸当て、腰袋だ。」


「シンカは何も作らないのですか?」


「剣を作る。」


短く告げるとカヤテとユタが身を見開いた。


「ほ、本当かっ!?私は剣にうるさいぞっ?!」


「酷いよっ!?僕も作って欲しい!」


「ユタは真面目に授業も聞かないからな。」


「聞くっ!今度からお肉食べないからっ!」


「・・・・」


「寝ない!心入れ替えてもう居眠りもしないからっ!」


「では暫く様子を見ます。真面目に取り組めばお前の為に剣を作ろう。」


「・・え、どの位・・?」


「俺が納得するまでだな。」


ユタはがっくりと項垂れた。

まるで虐めている様な気分になるが気のせいだろう。

シンカはそのままカヤテと連れ立って街へ出た。


「まさか私がこの様に悠長にラクサスの首都を歩く日が来るとはな。」


「そう言えば敵対国だったか。何度闘ったのだ?」


「4度だ。始めは9歳の時分だった。」


「早いな。俺も始めて森に出たのはそのくらいだったか。」


「ミト様が私の名を呼んでくださったのだ。この子の為にと自分を奮い立たせた。・・・ミト様・・」


「心配をするな。お前の力で彼女は何度も危機を乗り越えることが出来た。マニトゥーで、国境で、戦争で。最後は王家から守った。これ以上の危機は早々あるまい。」


「お役に立てたか・・・。」


「これでお前を役立たずと詆るのなら俺が殺してやる。」


「やめて。本当に。」


「冗談だ。」


「シンカなら出来るだろうから冗談にならん!」


顳顬に手を当てて顔を顰める。


煉瓦造の街並みを2人で歩く。


「これからは第2の人生だ。残りは俺が貰った。構わんな?」


「・・・」


カヤテは顔を赤らめて俯いた。


「駄目か?」


「・・・あい。」


「あい?」


「ま、間違えたのだ!一々突っ込むな!」


カヤテは更に顔を赤らめる。

色白なので赤面が良く目立つ。

森渡りでは無くとも彼女が恥じらっている事が分かるだろう。


「ふふ。締まらんな。」


「喧しい!・・その、済まない。実はな、其方から貰った文を焼いてしまった。大切にしていたのだが、もう会えぬのに残しておくと未練が残ると思い・・な。もう一度書いてくれぬか?」


しおらしい様子で恐る恐る尋ねる。

だがあの手紙をもう一度書くのはシンカには恥ずかしい事であった。


「・・勘弁してくれ。今は共に在るのだ。必要ないだろう。」


「そう言う問題ではない!夜な夜なこっそり読み返す物が今は無いのだ。」


自分の書いた手紙が何度も繰り返し読まれていたと言うのは嬉しい事実だが、矢張り気恥ずかしい。


シンカはカヤテの手をそっと取った。

剣を握り続けて硬くなった努力の手だった。


カヤテはそれを理解していたのか慌てて手を引っ込めようとしたが、シンカは強く握る事で逃さなかった。


「お・・・シンカ。手は・・・私の手は・・女らしく無い。」


「別に。それの何が悪い。」


「いや、その。」


シンカはカヤテの指に自分の指を絡めた。

カヤテは耳と頬を赤らめていたが、彼女本来の気の強さは微塵も損なわれておらず、シンカを真っ直ぐに見つめていた。


翡翠の瞳がシンカの目を縫い止める。


「腕も腿も筋張っているし、背中や腹は・・」


「弱気だな。逆に聞くが、俺の腹が妊婦の様に出ていたらカヤテは嫌か?」


「嫌だな。」


「え?」


「え?」


割と衝撃を受けて若干ふらつくものの気を取り直し先の話は無かったことにする。

そこは腹などどうでも良いと言って欲しかったシンカだが、戦士であるカヤテにとっては死活問題なのかもしれない。


「直向きに努力を続けたお前の身体の、何処に不満が有ろうものか。お前は見目も在り方も美しい。」


カヤテの顔を彩る赤みが面積を増した。


「改めて伝えるが、俺と共に在ってくれ。既に妻が2人いるが、その上でお前を好いている。」


ヴィルマの街を一望できる高台にたどり着く。

尖塔が建ち並ぶ王城と煉瓦の美しい街並みが見渡せた。


「シンカ。嬉しいぞ。私だって女だ。この様な情緒ある場所で、好いた男に告白されたいと思っていた。無理だと思っていたが・・。」


「カヤテは大切な物を多く失って来た。であれば、女としての幸せくらいは俺が与えてやりたいと、そう思っている。」


「・・嬉しい。その気持ち、受け取らせて貰う。これからも、頼む。」


シンカはカヤテを抱き寄せカヤテに口付けた。

幸い人は居なかった。


カヤテは後悔や未練を多く抱えて居るだろう。

口にはしないがその想いは心を締め付け続けて居るのだろう。


シンカはその逃げ道になれればと考えた。

例え逃げ道に過ぎないとしても、この身も心も美しい女騎士を得られた事が嬉しかった。


生きてさえいれば、どんな傷でも何れは癒える。

目には見えず、薬も効かぬ心の傷であれど、自分が癒してみせるとシンカは誓った。


その日、2人は取っていた宿へは帰らず、別の宿にて2人で一晩を過ごした。


出逢ってから3年。初めから惹かれあっていた2人は漸く1つになる事が叶ったのであった。


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