第12話 

 いつもどおりの生活に戻った。


 なんだか寂しい。


 部屋が騒がしかったときのことを思い出す。


「帰ってこないのか・・・」


 ―――ピンポーン


 美郷かと思い、急いで扉を開く。


「○○急便です。」


 やっぱりもうこないのだろう。


 アニメなら再び戻ってきて次のエピソードが始まるのに・・・


 まぁ、仕方がない。現実でそんなことが起こるはずがないのだから。


 お互い楽しく生きているのだろう。


 母さんも死んでしまったし、俺はいつもの生活に戻るだけだ。


 それでも────


 手紙を一通だけ送ります。


 多分読んでくれないとは思うけど。


 読んでいたら一言でもいいので返事をしてください。


 それから



「おーい、和志。学校行かないのか?」


「行くよ?」


「なら準備しなくていいのか?」


「え?まだ7時じゃん。」


「もう8時だぞ?」


 テレビの時計は8時になっていた。


 バタン────


 そして俺はいつもの世界に出かけていく。


 ────苦しくてもいい。


 ────悲しくてもいい。


 なんて思うことはないだろう。


 ────楽しい。


 そう思える生活だと思う。


 俺は和志。普通の男子────








「ようやく行ったわね。」


「とりあえず、あの置き手紙だけ見てみる?」


「もちろん。」


「で、なんでお母さんまで来てるんですか・・・」


「え?なんででしょうね?」


「いや、こっちが聞いてるんだけど・・・」


「心配だからでしょう?」


「いや、パティムネさんまでなんで来てんの。仕事は?」


「今日は有給を取りました。」


「あ、そうなの。」


「美郷。」


「なに?」


「返事、書きましょうよ。」


「でも・・・」


「特別ですからね?」


「「パティムネさん・・・!」」



 手紙とペンを貸してくれた。


 そして私たちは・・・




 読んだよ~!


 今日は17時までには帰ります。


 適当に遊んできなさい。


 ご飯は作っといてあげるから。


 そして、私たちは材料を買いに行くのだが・・・


「私も行くわよ。」


「いやいや、あなたもう死んでることになってるんだからダメだよ・・・。」


「あ、そうだったわねぇ。」


「待っててくださいね?」


「分かったわよ。行ってらっしゃい。」


「私たちに任せてください。」


「またいい所だけ持ってくよね・・・」




「ただいま。」


 ────誰もいないのだから返事はない。


「「おかえり。」」


 ────は?なんで返事があるの?


 そして電気をつけた。

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どちら様でしょうか? 囲会多マッキー @makky20030217

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