第11話

「・・・ですよ。」


「・・・さですよ」


 ────なんなんだ?


「朝ですよ?」


「うわっ!」


 ────顔近い!


「うわっ!?」


「おやすみなさい・・・」


 寝てしまった。


 ────待って。起きれないんだけど。


「助けてくれぇ~!」


「何事!?」


「涼葉に、美郷・・・?」


 ────じゃあパティムネさん?


 その割には軽いし・・・


 ────なら、母さん?


 いや。こんなに軽いはずがないはずがない。


(強制送還まであと40時間。)


「誰なの?」


「分からない・・・」


「わからないわけないわよねぇ?」


 ────母さん、恐るべし。


「いや、本当に分からないんだって!」


「それ以上嘘ついたら分かってるわよねぇ?」


 ────嘘ついてないんだけど!?


「本当に知りません・・・。」


「そう。和志がそこまで言うなら・・・」


 ────何をする気だ?


「ご飯なしにするわねぇ?」


「それだけは勘弁!」


「なら、本当のこと言いなさい?」


「本当の事しか言ってないから!」


「和志がそこまで言うなら・・・」


「言うなら・・・?」


 ────朝食抜きだけは勘弁!


「信用するわ。」


 ようやく信じてくれた。


「とりあえず、ご飯食べて学校行きな。」


「お、おぅ。」


 小さなテーブルの上にはご飯に味噌汁、焼き魚等など・・・朝にしては豪華すぎる食卓だった。


「行ってきます。」


「ちょっと待ってください。」


「なに?」


「緊急事態が発生しました。全員強制送還"され"ます。」


「"する"じゃないの?」


「はい。"される"です。」


「パティムネさんでもどうにかならないのね?」


「はい。無理です。」


「分かった。大人しく帰るわよ。」


「ご協力感謝します。」


 そして彼女たちとの別れが来た。


 そして────


 その数日後、母さんが死んだ。


「・・・最後のあの言葉の意味がようやく分かったよ。」


 母さんは既に死んだ存在であった。しかし、未来の科学技術で一時的に生き返らせたということだろう。


 つまり────


 クローン。


 そして、俺は普通の日々を普通に生きていく。


「和志。」


 ────誰だ?


「最後の言葉を贈ります。」


 ────母さん?


「多分、すぐに死んでしまっているでしょうから。」


 ────やっぱり母さんだ。


「和志、出かける時は火と水をよく確認すること。」


 ────最後まで母さんだな。


「そして・・・」


 ────まだあるのか?


「私より長生きしてください。」


 ────そう来たか。


「最後の約束です。守ってね。」


 ────分かったよ。


 そして、メッセージは止まった。


 ────終わった?


「和志!」


 ────今度は涼葉かよ。


「私もね、もう少しで引っ越すから会えなくなるの。」


 ────LINEあるじゃん。


「LINEはあるんだけど・・・とりあえず好きです。」


 ────好きって言われてもな。


「私も言うの!?」


 周りに背中を押されて美郷まで話した。


「えっと・・・どうしよう・・・」


 ────まぁそうなるよな。


「和志、私は・・・です。」


 俺には分かった。


 ────あぁ、知ってたよ。


「私も最後に・・・」


 ────パティムネさんまで話すんだ。


「和志さん。」


 ────はい。


「本当に未来に来なくて大丈夫だったんですか?」


 ────後悔させるようなこと言うな!


 そして


「せーのっ!」


『『人生を楽しみなさい!』』

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