第6話はじめての学園生活4

午前中は昨日と同じで昼食は今日は1人屋上で食べている。


師匠の弁当をゆっくり食べる機会だし…


僕の立場を再び思い知らされた、僕は彼女達の過去の人物に重ねられているだけだと


だから誰にも会いたくなくここでご飯を食べている。


「靈、直接何をしに来た?並木も止めろよ」


「友人に会いに来て何が悪い?龍炎…お前が偽名を使い始めて心配しているんだ、時無時継、あの人と仕事をするときの名前まで持ち出して」


「その通りだ、友人の少ないのに気にならんわけないだろう」


師匠の声と知らない人の声が聞こえた。


「ヒョー、来なさい。お前には真実を話しておこう」


僕が盗み聞きしている事に気がついていたようだ…


「あら?蒼い髪の子?貴方の弟子ですか?」


「そうだろうな。ふむ、良い目をしている。お前は直の目が良いようだな。」


いきなり黒い人に褒められたけどびっくりする。


「自己紹介をしましょう。私は汐留並木です。」


「…宙上靈、お前スナイパー向きだ。教えてやる。」


黒い人は自分の身長より大きなスナイパーライフルを取り出した、どこから出したんだろう


「俺は直の目がずば抜けていい、見えるところならどこでも当てれる。」


弾を一発で込めると空を飛んでいた鳥を撃ち落とす


「晩飯だ」


うん、師匠の友人だねー…話を飛ばし飛ばしでするし理解しづらい。


だけどほう1人の方はとても物腰が柔らかいし優しそう。


「ふふ、私はこの2人のお目付役ですね。止めるの大変なんですよ?」


「ですよね、師匠結構常識ないですし…でも優しいです」


俺が常識がないだと?と言いたいような顔をしている師匠を見て僕は苦笑する。


「まぁいい、俺の本名は無伊龍炎だ、別名殺人鬼W、殺人鬼の汚名を着せられてな。それから偽名を名乗って成り行きでこんな事になっているんだ。」


それが真実…でも何で僕に話してくれるんだろう。


「どうして僕なんかに」


「弟子だからだな。隠し事はしたくない。」


そうか、師匠はそうなんだ…嬉しい、僕は今この人に信用されている。


「ふ、お前らしい。この子は良い子だ。俺たちの弟子にしよう」


「あら?それは良いですね。今日から天ヶ峰に交流留学を二ヶ月ほどね。私と靈は向こうの生徒会と風紀委員会を代表して来ました。市立と私立の橋渡しですね」


この人達が来るの?


師匠は露骨に嫌そうな顔をする


「ヒョーしばらく相手ができないからルナくんと舞奈くん、千桜にメニュー渡したから言う事を書くように。特に千桜の」


千桜さんは確か舞奈さんのお姉さんで師匠を殺そうとしている危ない人では?


「千桜はああ見えても巨大な組織の長だ、人の扱いは慣れているからな。」


師匠はそう言い残すと屋上から飛び降りた、何階だと思っているんだろう?


「ふん、ではまた」


「また会いましょう」


残りのご友人さんも同じく飛び降りていくのだ、何と言う感じ僕とは別世界を生きている人達だと僕は思う。


弁当を片付けて僕は下へと降りる。


今日は音楽のため何をすれば良いかわからない、別に音楽に興味があるわけではなくただ流されているだけで僕的にはどちらを向いても良い。


「あ!ヒョーカ、行きましょう」


教室に帰った思ったら腕を組まれる


マリアは大きな胸をしているので当たるのだ。


とわいえ僕は背が低いためマリアより背が低いんだけとね。


正確には肩に当たるというのが正しいだろう。


そのまま移動のため連れて行かれる


「マリアはピアノだったよね?」


「ええ、ヒョーカは何ができるの?」


「一般的な範疇でね。だけど基本的下手だからしないよ」


「練習しよう」


そう言われてもあまり乗る気にならない。


まぁ僕は元々音痴だし…いや歌を歌う事がない。


そう思っていると大きな建物が目に入る、中に入るとまるでオペラでもするのかというくらいの広さと施設で完全防音が備わっていた


「おや、雹霞さん、来られましたね。本日は私が講師をさせていただきます」


善龍さんが居るなら僕は安心して良いだろう、この人は底抜けの善人だし信用が出来る。


「善龍さんが講師、うまく出来るかしら」


「ふふ、マリア姫様こそお手柔らかに。今日は見学でよろしいので真ん中の席にお座りください雹霞さん」


僕が座ったのを見計らい善龍さんは全員に音楽を奏でるように指示をした。


初めて聞く生の音楽だが圧倒的だった、肌で感じる音と耳に入って来る音…


「トランペット強いですよ、落として、ピアノ半音強く、他の方は今のままで」


僕にはわからないけど違うらしい


「マリア姫様は皆さんに合わせてください、他の方のを飲み込んでいますから」


あ、やっぱりマリアは圧倒的に上手いんだ、聞いていたら素人でもわかる。


しばらくすると善龍さんは手を叩く


「さて、皆さんは休憩をして下さい。」


どうやら一度休憩らしくマリアは僕の隣に座る


「どうだった私の演奏」


「上手過ぎる、素人の僕にもわかるくらい」


「きゃー嬉しい♪」


マリアは思いっきり僕に抱きついてくる。


胸が当たり少し恥ずかしい、だけどそれより良い匂いで少し落ち着く。


それと同時に求められて居るのは僕でない誰かであるのだろうと思ってしまう僕が居る。


そう思って居るとさっきまでの音楽とは全く違うものが流れてくる、あえて言うなら神域にも踏み込んだと、錯覚してしまうほどの美しさで圧倒されてしまう


他の人も同じ様に圧倒されて居る様だ、その音の正体は善龍さんだ。


あの人かバイオリンを弾いている、それだけで…


世界一の音楽家、神の子と言われていたけど本当の様だ


「…ふう、ダメです。まだスランプから抜け出せてませんね。」


「え?これでスランプ状態なんですか?」


「ええ、高音があまり安定してませんですし、新しい音が思い浮かばないんですよ」


僕の独り言があの距離で聞こえたと言うことはかなり耳がいいのだろう


しかし、僕にはわからないことである。


「あれでスランプって言われたら私はもっと頑張らないとって思うの。」


「頑張ってマリア」


「うん。ありがとう」


しばらく僕は音楽を聞いあと今日が終わった。


********************


放課後になり僕は地下室に行きスナイパーライフルを取り上に上がる。


今日は師匠じゃあないから何をするのだろうか?


「氷月さん、こちらですよ」


道着姿の桜華さんが僕を手招く


「雹霞、あの男も、なかなかな役立つではないのですか」


横で嬉しそうな舞奈さんを見る、やはり2人はよく似ている、姉妹だから当たり前なのだが


「今日はストレッチと剣術を頼まれました。雹霞殿、厳しくしますのでよろしくお願いしますね」


ルナさんはフル武装をしていた…


家紋と思われるものが入った盾に傷だらけの剣…


「そうですね。まずはストレッチを軽くしましょう。」


ストレッチ、師匠のストレッチはもはや地獄の様なものであった。


柔軟性に僕が欠けるといい僕の体をマッサージしながら曲げていた、本当に限界まで、関節が外れる直前まで


今日やったのは本当に基本的だが一時間程かけてやっている。


話によると元々バレリーナとかがやる運動らしく舞奈さんと桜華さんはやった事がないらしい。


いつもどうしているか聞いてみると


「動き続ける限り実戦に近い訓練」と言われた


こ、怖い…


「貴方の師匠殿はもっと酷いことをしてますよ?実戦あるのみらしいです。」


うん、そんな気がした。


「君は一般人ですからね。才能はありますがあの人や私たちの様に戦場で生きている人間ではありません。なので体を作るところから始めましょう」


桜華さんは師匠が関わらなければ良い人のようである、そんな雑談をしながらストレッチ終える。


「貴方はショートブレード向きなので私より舞奈さんよりね。」


今日は基本的な事という事で構えと剣の素振りをする、ショートブレードと言うものの結構重たくて振るのもしんどいのだ。


そんな事をして今日一日を終えていた。


********************


夜、寮に帰ると色々な視線を感じる、生活に慣れて来たので周りの事を気にするくらいにはなっていた。


今までは気づかなかったが変な視線で見られているのは確かである。


多分物珍しさと疎ましく思われている視線なのだろう


「ヒョーカ、お帰り。どうだった今日は?」


あと多分マリアによく話しかけられるのが原因の一つであろう。


「疲れた…ごめんマリアもう寝たいから帰っていいかな?」


マリアは一言「ごめんなさい」と言い部屋へ戻って行った。


ベットに寝転がりあの時の事を思い出す、火事の事件…無理心中にから助けられた時僕はあの紅い髪の人がヒーローに見えた。


だけど今は少しあの人を恨んでいる。


あの時死んでいればあの後に味わう日々の苦しさを味合わなくても良かったのではないかと


「僕が弱いからいけないんだけど」


そんな事を呟く。


そう言えばあの頃の、あおい色の世界の僕は明るかった、髪の色で差別されても明るかったのに…


こおり君と呼ばれていたあの時にはもう二度と戻らないのだろう、僕は捻くれて暗くなってしまったのだから。


僕の意識は微睡みと共に消えて行った。


********************


「生き残った事を怨んでいるのか?」


紅い髪のお兄さんが炎から連れ出してくれそう僕に尋ねる。


「僕は…」


答えが喉に引っかかる、両親が無理心中をしようとして家に火を付けた。


僕は炎のなかお兄さんに助け出され生き延びている。


「恨むなら俺を恨め、死ぬ運命だったお前を助けた俺を。合言葉を教えよう。俺は復讐されるもの、お前は俺を恨む者。そう思え」


お兄さんはそう言うと僕に微笑みかけて優しく頭を撫でくれた。


そんなところで目が覚めて目を開けると目の前は天井であった。


時間は真夜中を指しており、お腹が鳴る。


とりあえずリビングに行くとサランラップで包まれたおにぎりが机の上に置いてあった。


テーブルに置かれた紙には「晩御飯食べてないだろ、おにぎり食べなさい」と師匠が書き置きをしておいてあった。


ラップをとりおにぎりを食べる。


冷たいけど暖かい味がする、今の僕にとって信用できるのは師匠だけだから、その師匠の期待に応えれるように頑張ろう。


そう思いながら僕は再び夢の中へと落ちて行った。

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あお色ユメ世界 @muisaika

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