第5話 はじめての学園生活3

次の日の朝、朝食を食べて一人で学園に向かう


色々な人に注目される分少し気分が悪いがそれも乗り越えないと


それにしても不思議とあれだけ昨日動いたのに筋肉痛は残っていない、何故だろうか


「おはようございます」


門に入る時に挨拶をされてとっさに返事を返す


「おはようございます」


挨拶をくれたその子は紫色の瞳と髪をしていた


「あら?珍しいですね蒼い髪とは」


「いえ、貴方も紫色の髪は珍しいですね」


彼はにっこりと笑う


「ですが兄弟に同じ髪の子がいますから」


そうか、僕と違って一人じゃあないんだ…


「それでは」


僕より背が高いし大人っぽい雰囲気から多分先輩であろう、そう思いながら制服を見て見ると中学生の制服なのだ


僕は中学生に負けているのか


「少し、お話ししませんか?貴方は時継くんのお弟子さんですよね?」


「あ、ええそうですが」


何故だろうこの人の目の前では畏まってしまう、雰囲気というか何というかオーラと言うか


「ふふ、私は無伊善龍、貴方の師匠とは友人です。よく話を聞かされますので」


「はぁ?」


僕の顔を見て彼は少し笑う


「移動しましょう、こちらへ」


僕は圧倒されっぱなしである、年下に圧倒されるとは恥ずかしいな


「無伊さんは師匠とどうやって出会ったんですか?」


道中の雑談に聞いてみた


「助けてもらいました、あの人は理不尽を許さない人ですから」


その短い言葉だけで十分であった、


師匠らしいなとしか言えないですな


そこはほとんど人の寄り付かない場所、この学園の中庭であった。


「無伊さんは中等部ですよね?」


「ええ、そうですよ。貴方が先輩になりますね。」


そう言えばまだ自己紹介していないや


「そうですね、自己紹介が遅れました、僕は氷月雹霞です、氷月と呼んでください」


無伊さんはにっこりと笑う、この人の笑顔は師匠と違った魅力がある、師匠が豪快な笑顔に対してこの人は繊細で上品な笑顔だ


「氷月さん、時継さんは最近どうされていますか?」


師匠の友人だ、気になるのは当たり前であろう


「えーと、何と言うか楽しそうですね」


その言葉に安心しただろう、ホッとした表情を見せた


「元々私の奉公先である天ヶ峰家におられたのですが、マリア姫様の護衛が入りまして、それから寮暮らしを始められたので心配していたのです。」


天ヶ峰家、この街で最も権力を持っており、なおかつ世界の6分の1の富を持っている大財閥である、師匠がそこと関わりがあるとは…底知れない人だ


ちなみにこの学園の理事長も兼任しているらしい。


とどのつまりこの人天ヶ峰家の執事さんなんだ


「毎日朝ごはんを作ってもらって、僕の居場所を作ってくれて感謝しています師匠には」


「ふふ、あの人は口は少し悪いですが世話焼きで良い人ですからね。私もたまに一緒に料理を作ったりするんですよ?」


「いいですね、僕も覚えないといけないな」


そんな他愛もない話をしていると予鈴がなってしまう


「善龍さん、また今度」


僕の口からそんな自然な言葉出てくる、自分でも疑ってしまうような言葉だ


「ええ、そうですね雹霞さん」


いつのまにか名前で呼ぶ仲になっていたのだ


僕にとって初めての男友だちだと思っていいのかな?


教室に入るといつものメンバーが雑談をしていた


「あ、ヒョーカおはよう」


「雹霞おはよう」


「おはようございますマリア、夕美さん」


僕は席につくと机の中に何かが入っていた


弁当箱だ、付箋が貼ってありそこには「今度から持ってくの忘れないように」と師匠の字で書いてあった


弁当箱を取り出すとマリアと夕美さんが興味津々に寄ってくる


「何々、彼女からの弁当?」


「えー!ヒョーカ彼女さん居たの!?」


ええい、何故そうなるんだよ!


「師匠の手作り弁当、栄養バランス完全のね」


愛情があるかどうかは僕にはわからないけど


「あー、時継くんのね」


「あの人なんでもできるね」


正直そう思う、でも厳しいからなあの人…


そう思っていると先生が入って来たで僕達は席に戻る


午前中は昨日と同じような授業を受け昼休憩に突入する


「姫様、御食事はいかがされますか?」


いきなり現れたルナさんに驚く


「びっくりした、ルナさんいつの間に…」


「すみません雹霞殿、雹霞殿は今日はどうされる予定で?」


お昼の予定だよね?


「ヒョーカ今日こそは食堂よね?」


「そうそう、ねぇー舞奈」


「そうですね、みんな待ってますよ」


僕はどうやらこの四人に弱いらしい、いつもなら嫌われてもいいから逃げるのだがこの四人から嫌われるの嫌だ。


師匠は多分何をやって嫌わないだろういう自信があるから別枠で


「わかりました、食堂に行きますよ」


僕は弁当を持って立ち上がる


「わーい、ねぇルナ今日は何にしようかしら」


「私はステーキ定食ですが、姫様はAコースで良いではありませんか?」


昼から重いもの食べるなルナさんは、まぁこの人は動くからよく食べるんだろう


「ええ、昨日はらーめんを食べたしそうしようかしら」


「私はーうどんにしよー」


「ふふ、私は和食定食で」


みんなメニューが決まったようで十全十全


「おや?雹霞さんではありませんですか」


善龍さんが足を止めて僕に話しかけた


「善龍さんはこれからご飯?」


「ええ、珠美様はご友人と昼食なので私も昼くらいは友人と食べようと思いまして」


彼は笑顔を崩さない、それは生来なのかそれとも執事としてなのかはわからない


「ぜ、善龍さん?無伊善龍さんですよね!握手をしてください!」


マリアが興奮気味に善龍さんに近づいた


「マリア姫様ですね、私などにそのように、光栄の極みでございます」


優雅に執事らしい挨拶をする、さほど驚かないでマリアはにっこりと笑う


「知ってくださって居たのですね。ですが音楽家として貴方に憧れないものなどいません」


へーそうなんだと思っているとルナさんが耳打ちをしてくれる


「貴方も[名もなきものに送る鎮魂歌レクイエム]は知っていますよね?」


そりゃあまぁこの世界であの曲を知らない人の方が少ないだろう、CM、映画、ゲームなと色々な作品で使われいる


それに僕も個人的に曲を持っているくらい好きだ


この曲を使った者はモーツァルトと同等レベルの神の子とか言われているらしい


「それを作ったの彼です、世界最高峰の音楽家無伊善龍、音楽家なら憧れない人はいない存在です」


え!マジでそんなに凄い人だったのか、まぁでも僕にとっては一人の友人だからどちらを向いても良いのだ


「姫様のピアノも聞き惚れるものがあります。私はファンですよ」


そんな言葉にマリアは嬉しそうに反応する


それ程までに憧れのなのだろう


「マリアちゃんは毎日聞いてるんだよ」


「そうですね、部屋に遊びに行ったら毎回流れてますね」


なるほどそれ程までに好きなのか


いいじゃーないですか?


僕は弁当を開ける。


中は野菜を中心にしたものであり多分カロリー計算もしてあるのだろうと思われるカラフルなものであった


「おや?その弁当は時継さんが作りましたね?」


「はい、師匠手作りです」


「そりゃまぁ、朝弁当を忘れていく弟子がいたからな、全く不甲斐ない」


師匠がそばに居てびっくりしてしまう、気配も何もなかった


「善龍くん、今日は反故してくれて構わんよ、俺は下白夜と飯を食うから、弟子と仲良くやってくれ」


「分かりました、すみません時継さん」


師匠は手を振って食堂の人混みへと消えて行った。


「ふふ、時継くんは私達に気を使ったのね」


そうなの?


「だって、雹霞は時無先輩好き過ぎでしょ」


「あの男のどこが良いのだが、女たらしの様にしか見えませんわ」


まぁ僕が師匠が好きなのは否定しないとして、師匠は女たらしではないと思うんだけど


「舞奈さん、師匠べつに」


「姉様はあの男のどこが良いでしょうか、顔ですかね?」


成る程、姉がゾッコンなのが気に入らないだけの様である、シスコンなのですね


「ふふ、雹霞さんは愛されていますね、少し影がある方なので心配していたのですが」


完全にトラウマを乗り切ったわけではないが最近は割と気にならなくなっていただけ


それでもまだ心の底では人が怖い


「そうだと良いんだけど…多分この人達は僕の知らない誰かと姿を重ねているだけだと思う」


善龍さんにしか聞こえない様に呟く


「そうだとしてもですよ、それに時継さんなら気に入られているんですから胸を張りなさい。」


そうだよね、でも僕の根本的な所は暗いんだ、ずっとそうやって生きてきたから、それでもカラ元気をやめない様にしている…


「雹霞は昼からは私と一緒にスポーツだよね?」


そういえばそう言う約束をしていた様な気がする。


「そうなんですか、私もスポーツなので今日は三人で出来ますね」


嬉しそうにする二人を他に僕の心は冷えていた、どうやら自覚してしまうらしい、あおいろの世界はもう見る事は出来ないのだと


そう思いながら弁当をつまんだ。


善龍さんが少し微笑みながら見ているのは何故だろうと思いながら


********************


昼休憩が終わり服を着替えて外に出る


「オラァァァ!!!しつこい!」


「アハ!旦那様ダーリンその肉を斬らせて!血を浴びさせて」


グランドの真ん中で斬り合っていた二人が見える、周りの人間は慣れているのか反応しない


「姉様…あの男の何が良いんだか」


昼間と同じセリフを吐きながら僕の隣に武道服姿の舞奈さんが座る


「あれは妖刀まで取り出して…千桜殿は本気ですね。」


えー、本気で殺し合っているの?


「てか、雹霞は見えてるんだ、みんな正常なのはあの二人が高速で動いているから見えないだけだよ」


そういえばさっきから立ち位置が変わり続けている様な気がしたけど気のせいではないらしい


「時無殿曰く雹霞殿は直の目に特化しているらしいですよ」


「成る程」


千桜さんの刀が弾かれてそれを師匠は取る


「ふふ、旦那様には敵いませんは」


「バーカ、お前血桜まで使いやがって!今から仕事なのに!」


千桜さんの持っていた刀鞘に収めて舞奈さんに投げ渡す


「舞奈くん預かっていてくれ」


「ええ、姉様は後で説教ですよ。さて、雹霞はどのスポーツ、武術をしたいですか?」


師匠には武術を習っているからな、だけどスポーツをする気にはならないしなー


「雹霞殿、私と剣を使ってみませんか?」


ルナさんの国の剣術か…どうしよう


「ルナさんの国の剣術、私はやってみたいですね」


そういう事でルナさんの国の剣術を習う事になった。


基本的には三つの構えと武器があるらしい、一つ目はロングソード、二つ目はショートブレード、三つ目は盾とショートブレードらしい


「私はロングかな」


舞奈さんはロングソードを軽くふる


「ロングソードは、切るというより叩き潰すイメージですね」


鎧相手ではそれが一番得策だろう


「ほうほう、ルナさんは盾と剣だったよね」


「ええ、体術と剣術を合わせた様なものですね。」


僕はショートブレードを手に持つ、師匠の動きを真似して空を噛んで軽く切り裂き銃を構えてトリガーを引く


「それは…あの男の技だな、癪だけど武術に関しては私や姉様より、上ですからね」


「時無殿に勝てる相手などほとんどいませんよ。それより雹霞殿は筋が良い…本当に初めてですか?」


「うん、見よう見まねだよ」


簀巻きを剣で斬り銃を撃ち離脱して一気に距離再び詰めて蹴りをかまして銃を撃つ


「ルナさん、一回勝負してみたら?」


「良いですね」


いきなり?僕は剣術を学ぼうと思っていたんだけど?


「まぁいいけど」


いきなり試合が始まってしまう、ルールは簡単相手に攻撃を当てて致命傷になったら終わりである、怪我をしない様に本物ではなくゴム状のものではあるが


定位置に着き僕は銃をホルスダーに収める。


ギリギリまで使わないのがベストだろう


「はじめー」


その声とともに僕は距離を詰める、長期戦は僕にとって不利である。


剣を首筋に向けて斬りかかるが剣で塞がれ盾を押し出してきた。


僕は盾を足蹴りして距離を取りを取るが気がつくと目の前に剣先がありそれを避ける


「よくよけましたね」


褒められても嬉しくない、頬をかすめているのだから


すぐに足払いをするがよけられ距離を取られる


師匠ならどうするだろうか


「そうだね」


剣を思いっきり投げる、ルナさんは驚き盾で防ぐが僕は距離を詰め剣を握っている手に銃把で殴りつける


一瞬ひるんだ瞬間に相手の剣の峰を蹴り飛ばす


「あまい!」


結局徒手空拳で取り押さえられて僕は負けになる


「うーん、うまくいかない」


多分師匠なら盾をアイアンクローで破壊するんだろうな


「いえいえ、素人の動きではないですよ」


「そうだね、ルナさんもかなり強いから勝つにはまだまだ鍛錬がいるよ」


そう言われた。


後の時間は舞奈さんと柔軟をしたりルナさんと駆け足といった具合であった。


授業が終わった後は昨日と同じ訓練をして今日が終わった。


明日は音楽か、僕の人生どうなるんだろう、そう思いながため息をついた。

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