第4話 はじめての学園生活2
教室に帰るとルマリア、夕美さん、舞奈さん、ルナさんが僕の席の周りでたむろって居た
「あ!ヒョーカお帰りなさい」
「あ、うん、なんで僕の席にいるの?」
そこが問題だ、いやでもクラスの視線を集めてしまう…
「姫様が雹霞殿がまだ選択授業を決めてないと言われていまして」
なるほど?分からないよ
「芸術系なら私と一緒よ、専攻は音楽」
ふむ、芸術系ならマリアと一緒か
「スポーツなら私だね、主に古武術だけど」
スポーツ系なら舞奈さん
「私は学問、主に歴史」
学問系は夕美さんか、あれ?ルナさんは?
「私は二年生なので自由授業ですね」
そういえば一年と二年ではカリキュラムが違ったね、さてどうしよう…
誰も僕はあまり得意ではない、普通くらいには出来るだろうけどそれだけである。
「とりあえず体験してみたら?」
そうしようか今日はとりあえず学問にするか
「今日はとりあえず夕美さんお願いします」
他の二人はえーって顔をして夕美さんは嬉しそうにする
「ええ、任せて」
「頼みます、明日は舞奈さん、明後日はマリアお願いね」
「ええ、わかったは」
「了解ー」
そうこうしている間に予鈴がなり僕たちは解散する
「学問系の歴史は図書室でやるのよ」
成る程、昼間は教室は空になると言う事ですな?
わかりやすうござんす
しばらく歩くと別館に到着する、ここは来た事ないと思っていると入った途端に圧倒的な本の量に驚かされる
「ようこそ、この学園の図書館へ」
これが図書館?いやいや、どれだけ大きいんだろう…
本棚を見ると英語、フランス語、ドイツ語、ハングル、中国語、ヘブライ語といった風に分けられておりさらに歴史、小説、資格その他諸々たくさんに分かれていた
「すごいね、で何をするの?」
「学問系の歴史科は自分で好きな歴史を調べてそれをまとめて発表するの」
成る程、考古学の入り口のようなものか…
僕が好きな時代は近代だけどね
「じゃあ近代を調べようかな、日本の明治から昭和にかけて」
「中々にマニアックな選択肢だね、資料が多いしわかっている事も多いからあんまり人気ないんだよね」
やっぱり誰も知らない事を知りたいと思っているんだね
椅子に座り僕は一冊の本を手に取る、歴史書で明治から昭和にかけて簡単にまとめてあるものだ
「ちなみに夕美さんは?」
「私は平安から室町まで、知り合いのお姉さんが陰陽師を研究しているからその手伝い」
ふーん、成る程しっかりした目標があるんだ
そう思っているとドアが開く、師匠が沢山の本を持って来たのだ
「図書委員、他の資料を頼む、B-3ドイツ語と持ち出し禁止の古代資料写しを、許可は理事長と校長からとった。」
何をしているんだと気になる…
「時無くんは仕事の関係で色々調べてるよ、表に出ない歴史を」
師匠はそんな事を調べているんだ…流石というべきだろう
「ん?ヒョーか、明治から昭和にかけての資料か、面白いよなその時代」
師匠は一冊の本を置く
「第二次世界大戦と第一次世界大戦を比べた資料だ、面白いことに負けた方はエリートが、勝った方は落ちこぼれが上だったんだ」
そんな見方をしているんだ、普通の人とは少し違う見方、師匠は世界を僕たちとは違うようにみているのだろうか?
「僕的には明治維新ですね、1日で文化を変える、昭和に起こった戦後と二回あります、両方とも負けて起こってるんですよね」
「敗戦により文化を取り入れて相手に勝とうとする、日本人の気質だ。真似をして改良して良品を作る、それが日本人だ。ちなみに欧米人、北欧人はオリジナルを作るのが上手いな」
民族によって変わるのだろう、面白い、歴史一つにとっても複雑だ
「はい、用意できました。時無さん、しかしこのような量の資料どうされるのですか?」
「簡易的なデータに変えて今後の資料にする、歴史は死んでいない、流れる川のように流れている、いつか役に立つだろう。それに過去から学び今に生かす、それが温故知新という素晴らしい言葉があるくらいだ」
師匠はスラスラとそんな言葉を言う、心の底からそう思っているのだろう
なんと言うか少し古風な感じもするが師匠らしい…
「英雄は言うことが違うね」
そういえばこの学園では英雄だったね
「英雄ではない、二度と言うな」
すごい嫌そうな顔をする、英雄扱いされるのは嫌いのようで殺気を放っている。
「師匠、みんなビックリしているよ」
僕が嗜めると師匠はため息をつく
「悪いなヒョー、ありがとう」
師匠は優しく僕の頭をくしゃりと撫でて出て行く
「…もー師匠は」
僕の嬉しい事を直ぐにしてくれるから…
「さて、勉強の続きをしようか」
「あ、はい」
発表するのは学期の終わりらしく今はまだ調べるだけだと言う
そうして今日1日は終わっていった。
********************
ホームルームが終わると再び僕の席の周りに夕美さんとマリアがやってくる
「ねぇヒョーカはどのクラブにするの?」
そういえばこの学園ではクラブは強制加入だったよな
「決めてないよ」
「じゃあウチは?さっきの延長線上だよ?」
「今日はヒョーカを夕美が独り占めしたんだから!吹奏楽部は?」
いや、音楽にもあまり興味はないんだけど
「悪いな、そいつは未熟者だからウチで修行だ」
そんな話を割って入ってくるのは師匠であった。
「師匠は何のクラブで?」
「オカルト同好会」
一番縁遠いそうなものに入ってるよ!意外すぎる
「時継くんのクラブはクラブの名前を借りた仕事場でしょ?」
そうなんだ…それなら師匠らしい
「マリアちゃんを俺抜きで守れるような男に仕上げる為だ」
マリアは顔を赤く染め上げる、師匠、流石イケメン
「ヒョーカが私を守るために…」
小さな声で何かを言っているが聞こえない
「雹霞、他のクラブがましだと思えるくらいですが頑張ってくださいよ」
夕美さんの優しい目が凄く怖い、いや夕美さんではなく今からの内容が
「行くぞ」
師匠の後ろをついて行く、一階に降りて少し歩いた所に小屋があり、その小屋にはオカルト同好会とデカデカと達筆な字で書いてあった。
中を開くと映画で出てきそうな無線機器や爆弾などを作れそうな工具、それに銃や弓矢、日本刀などまで置いてあった。
オカルトという感じではないけど?
むしろ戦争の前線基地?
「ここは弾薬置き場でもあるから火気厳禁な」
そんな危ないと思っているとコンクリートの床にある蓋をあけると地下に繋がる空間がある
「えと何でこんな空間が?」
「第二次世界大戦の時の防空壕だ」
成る程、ここは結局空襲を受けなかった為に古い建物や跡地も残っている
中に入るとそこそこ広く丁寧にコンクリートで固めてあった
「今日持って行くのはスナイパー用と拳銃用だ」
師匠は弾薬ボックスの鍵を開けると中から弾倉を取り出す
「ヒョー、お前の持っている弾倉は睡眠薬だ、これに変えるぞ」
弾の入った弾倉にビビりながらホルスダーに入っている弾倉と交換する。
師匠は見たことないリボルバーを取り出し弾を込めて行く
「師匠のリボルバーは無骨ですね」
「ん?何でそう思う?」
「だって普通のリボルバーなら多少の柄があるし、師匠のは多分引き金の遊びを殺してるしすぐさま撃てるようにしてあるよね?」
銃には遊びという引き金を引いても撃鉄が落ちない空間がある、師匠のにはそれがない
「よく分かったな、俺のはギリギリまで遊びを殺しているから少し力をかければ弾が出るぞ、お前は直の目はあるらしいな、感の目だけを育てれば良いか」
感の目?
「おいおい説明する、さて行くぞ」
地下から上に上がり鍵のかけてある箱からスナイパーライフルを取り出すと学園から湖の方へと向かう
銃声が聞こえるところから多分クレーン射撃部があるのだろう
「こいつはA&E社の作ったボルトアクションのスナイパーライフルだ、様々な弾を撃てるように銃口の取り替えが可能になっている」
A&E社?
「銃は色々あるんだね」
「俺が気に入ってる会社だ、ここは銃の名社だ」
そうなんだ、僕が気にいる銃もあるのかな?
そう思っていると目の前に的が見える、離れたところでクレーン射撃をしているのが見える
師匠はリボルバーを取り出すとかなり離れた的に6発当てた
「いま6発撃ちましたよね?」
「良く見えたな、やはり直の目は良いようだな、普通の人間なら見えないぞ?ガトリング以上の速度だぞ?」
てか、師匠そのスピードでリボルバー撃てる方が…
うん、人間ではないでしょうに
「お前はスナイパー向きだな、ほれ」
師匠は背負っていたスナイパーライフルを投げてくる
「俺は何でもできるがどうも感の目が強くて直の目が弱いからスナイパーには向かないんだよな」
なるほど?よくわからない、師匠は何を言っているだろう?
「感の目と直の目がわからない」
「感の目とは直感の事だ、直の目とは動体視力と只の視力の事だ。俺は目よりも直感に頼るからな」
成る程、僕は直の目が良いのか?
「肩を付けをしっかりしてあの的を狙えよ」
僕はスコープをのぞいで引き金を引く、面白いように的に当たる
2発、3発、4発、1発ずつ弾を装填して撃つ
「ふむ、風で少しズレているが概ねあたり…大したものだ」
師匠感心しながら的を見ている
「あとは感覚の問題だな、やはりお前はスナイパーだな。接近戦は最低限にしよう、中距離は一応教えようか」
どうやら僕の教育プランが決まったらしい
「師匠、どうせなら自分のライフルが欲しいのですが」
「そうだな、今日は後体力作りをして終わりだ」
このあと僕は地獄をみた、スナイパーライフル、銃剣、弾倉をもって制服のまま師匠に追いかけられながら走り、硬い体を柔軟させられた…
それをトータル二時間…気がついた時はベットで寝かされていたのだ
「痛い…」
時計を見ると19時30分をまわっており僕の体は悲鳴をあげていた
「起きたか」
目の前には師匠がいた、どうやら僕の頭に乗せているタオルを変えに来たらしい
「うー…」
「まだ軽い方だぞ、飯が出来ている」
だるい身体を起き上がらせリビングに行くとルナさん、夕美さん、舞奈さん、マリアともう一人知らない人がいた、薄い赤色の瞳とロングの髪の毛、舞奈さんによく似ている
「あら、起きましたのですね、初めまして私は舞奈の姉の桜華千桜です。あなた師匠、時継さんの将来の嫁ですのでよろしくお願いします」
師匠のお嫁さんかー、師匠は安泰しているね
「姉様、あんな男のどこが良いのです」
舞奈さんはあまり気に入らないようだが
「そうだぞ千桜、俺は結婚しないし、勝手に嫁を名乗るでない。生涯独身を貫くのだから俺は」
あ、成る程そういう事でしたか。
師匠は確かに結婚には向かない性格をしているよね
「ヒョーカ体は大丈夫なの?」
「だから言ったでしょ、他のクラブがマシに見えるって」
「全くこの男は、姉様ならず雹霞まで…」
「まぁ時無殿の訓練内容は我々ガーディアンでも付いていけないですから」
「大丈夫じゃあないよ」
そんな内容をやらされていたの!?
「お前らは甘すぎる」
師匠、僕は一般人ですよまだ…
そんな言い合いをしているうちに師匠の料理ができていた
「今日はお客さんが多いので適当料理、中華炒めの盛り合わせと、この時期の野菜適当煮物、唐揚げにしました、付け合わせのレモンは瀬戸内海産だから食べても良いぞ」
美味そう、店を出しても良いくらいのクオリティの高さで食欲をそそる、さっきまでの疲れなんて忘れてしまうくらいに
全員で手を合わせて食べ始める。
後から出てきたオニオンスープも美味しい…
「ねぇヒョーカ、私のことを守るために頑張ってくれてるの?」
いきなりのマリアのセリフに噴飯しそうになるが美味しいご飯を口から出すのはもったいなくて我慢する
「…まだ分からない、師匠に言われたまましているから」
そこの気持ちは僕にもまだ分からない
いつかこの気持ちに答えが出る時が有るのだろうか?
「雹霞殿はいつからこの街に?」
ルナさんのセリフに僕は一瞬固まる
「この学園に入る三日前です」
僕のセリフに千桜さんと師匠以外は少し残念そうな顔をする
「まぁ昔この街に住んでいたことがありますけど」
2回目の言葉に四人は目を輝かす、なんでだよ
「その時の思い出は何かあるの?」
「…あまり話したくないんです、まだ心の整理がついてないので」
期待して裏切られるだけ損だ…僕の過去なんてそんなものばかり、最近楽しかったからなんとも思わなかったけどダメだよ僕はやっばり
僕の頭はくしゃりと撫でられる
「無理するな」
その一言にどれだけ救われるか、やっぱり今はまだ師匠が一番、いつかは変わるかもしれないけど
僕の今の目標は師匠に認められる事だ
「ごめんねヒョーカ」
「すみません、私が配慮に欠けました。」
「そこまで暗い過去だとは思ってなかったよ」
「そうですね、落ち着いたら話してくれること祈ってます」
彼女たち四人は悪くない、僕もこのトラウマを乗り越えないと、髪と瞳があおくて差別されるくらい
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