探偵たち

安良巻祐介

 

 蛍滅都市における「探偵」とは、魂【マブイ】を喪った人間の事だという。

 彼らは人体改造を重ね、怜悧なる頭脳回路と意匠骨格のみを残して自らの構成物を取捨してゆき、論象体とでも言うべき畸形に変質していった。

 混沌を絵に描いたような伏魔街に敢えて暮らしながら、隠されたものを追い求め暴きたてんとする者たちには、それほどまでの覚悟が必要だったのだ。

 彼らのある者は、玻璃質の外套を纏い、夜警帽の庇の下から目鼻のない貌を覗かせ、紅緑灯の照らす四つ辻を逃げる何者かを追ってゆく。またある者は、改造の過程で特別にあつらえたその衒学マスク、エッチング中の人物のような、端正過ぎて温度のない笑みを以て、寄り合いの雑算所で後ろ暗い親分衆を滔々と責め諭す。

 彼らは人の理から外れてまでも、この百鬼夜行都市において「真実」の一点のみを求めた紛れもない狂人の群であった。そしてそれゆえに、貴賎善悪を問わず、住人たちからは等しく恐れられてもいたのだ。……

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探偵たち 安良巻祐介 @aramaki88

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