1-3 屋敷の中で師弟は嗤う
リヒテンフェルスside
この世界の魔法には7つの属性が存在する。炎・水・木の[三大基本属性]に雷・風の[二大特殊属性]。そして光・闇の[二大特異属性]だ。この世界に存在する生き物は皆、どれかしらの属性を得ている。―――ごく稀に例外として、どの属性にも当てはまらない無属性を所有する者も存在するが。オレは先生の飼育している
「リヒ。課題は終わったか?」
「はい!呪骨で呪術を作成しました!」
「……黒魔術か。呪骨を使ったのであれば闇属性か?」
「あー……えっと、属性までは確認していません。ごめんなさい」
先生―――[霧の魔女]はオレの師匠だ。先生は冷凍保存されていたオレを見つけ出し、解凍してくれた。オレが冷凍されてから解凍されるまでに何百年も経過しているため、あの時代の硬貨や紙幣も使えなければ行く宛もない。先生はそんなオレを弟子として育ててくれたのだ。
「黒魔術は扱いを間違えると、術者に降りかかるからな。丁寧に扱わなくてはならない。……ほう。炎と闇の二属性か」
「!! 二属性ですかっ」
「ああ。……だがトラップに使うには少々範囲が広すぎるな。それにドロップ品も炎で消滅してしまう。呪骨で底力を上げているのだから仕方がないが」
「うぅ〜 また失敗ですかぁ……」
「失敗ではないぞ。ただ扱いが非常に面倒な代物なだけで、効力は抜群だ。リヒテンフェルス・クロフォード。流石、私の弟子だ」
「!!!」
そう言うと、先生はふわりと微笑んだ。普段は見せないその笑顔は、とても可憐で綺麗だ。―――普段の先生がとてもサディスティックで悪辣で酷薄なのは今に始まったことではないが。たしか先生の元旦那がとても変な人だったから、先生は歪んだらしい。それでも他人のせいにするには歪みが強すぎると思うが。
先生の顔を見つめていると、カランコロンとベルが鳴った。客人を知らせるベルは、異物が屋敷の半径2kmに入った時点で知らせてくる。その音が聞こえた途端に先生はまた、悪辣に微笑んだ。
「さて、そろそろ異物が谷底に落ちるタイミングだな」
「……先生、顔が怖いですよ」
「すまんすまん!」
ガハハと大袈裟に笑う先生に、オレは笑いかけた。―――今回の異物はオレが排除してもいいだろうかと聞きながら。その時、オレは先生の笑顔が一瞬止まったのを初めて見た。
仮想世界パラノイア 林道夏向 @hisahira0928
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