第40話

「博隆様の考えでは、あなたを殺すことにより、この事件が解決すると考えています。もともとこの事件は、智樹様と凛様の2人の力が必要です。ですから、その片方の力を潰せば、この状況が保てなくなり、事件が解決すると考えているのでしょう」


「『でしょう』? その言い方ですとあなたはそう考えていないように聞こえますが」


「するどいですね。その通りです。私は智樹様が死ぬことでこの事件が解決するとは考えていません。そしてそれが、私が博隆様を裏切ってここにいる理由です」


「カオリさんはなぜ、解決できないと思うのですか? 俺的には博隆の考えも一理あると思うんですけど」


「私は、力を使っているのは事件が起きた瞬間だけだと考えているからです」


「つまり、今は力を使っていないと?」


「はい。凛様の世界は既に完成しており、力を使わなくても保っていける状態だと考えています」


「なるほど、もしそれが本当だとしたら……」


「あなたの死は完全に無駄なことになりますね。私はそれを止めるために来ました。こう見えて、私は智樹様の事を結構評価しているので」


 えぇ……。全然そんな風には見えないのだが?


「じゃあ、ほかに解決策というのはあるのですか?」


「……。あくまで私の考えですが、1つだけ存在します」


「それは……?」



「凛様の本能が幸せだと感じることです」



「本能が感じる?」


「つまり、心の底から幸せだと感じることができれば、凛様にとってこの世界は必要なくなります。そうすれば、自然と元の世界に戻るように動くはずです」


「そう、うまくいきますかね?」


「……わかりません。ですが、今はそれを信じるしかないと考えています」


「確かに……つまり、今後の目標は……」



「『智樹様を守りながら、凛様の幸せを探す』といった感じでしょうか」




 ……なんというか……アバウトだなぁ……











『幸せ』とは何か


『幸せ』のとらえ方は人それぞれだ


 その『幸運』は本当に『幸運』なのか


 その『不運』は本当に『不運』なのか


 それは本人にしかわからない


 他人が勝手に決めていいはずがない

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

そして彼女は[挿絵あり] のんこ @nonko1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ