第39話


「出会ったことが……原因…?」


「さっきも言いましたように、彼女の能力だけでは、こんな大掛かりなことはできません。智樹様が凛様と出会うことで、力を貸すことになってしまったと思われます」


「力を貸すって……そんなことした覚えないけど…」


「もちろん、無意識でしょう。いえ、『できるようになってしまったから起こった』という方が正しいかもしれません。今まで凛様は、無意識ながらもこの事件のような事を起こそうとしていたはずです。ですが、凛様の力だけでは不可能だった。だから今までは何ともなかったのでしょう」


「なるほど……」


「この事件が起こった日を覚えていますか? あなたはきっと決意したはずです。『凛だけを愛する』と。その決意が、凛様に助力することになったんだと思います]


 確かにあの日俺は小百合先輩を振って凛を愛することを決意した。まさかそんな小さなことがこの事件に結びつくのか。いや、凛にとっては小さなことではないのかもしれない。


「あなたの『異常に運が悪い』という能力は『自分を不幸にしてでも、他人を幸せにする』能力とも言えます。つまり、2人分の力を利用して今回の事件が起こったのでしょう。博隆様はそう予想しています」


「なぜ博隆はそんなこと分かるんだ?」


「それは博隆様が凛様の事を愛しているからです。そして博隆様自身もこのことを望んでいた。だが、あなたの存在は博隆様にとっては邪魔なのでしょう。それだけが、博隆様にとって今回の事件の不満だった」


「なるほど……だから俺を殺そうとしているわけか」


「いえ、それは違います。あなたを殺すのには別の理由が存在します」


「別の理由……?」




「あなたを殺すことによりこの事件が解決するからです」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る