第五章 4

 育児日記。二二五一年、五月八日。午後十一時。


 未来は、子供たちの手に委ねられた。


 本日、十五歳になった第一世代の子供たちに全てを明かし、妻が有していたベロボーグ計画の管理者権限を彼らに移譲した。


 あらゆる類の衝撃が彼らを襲ったが、見事に耐え切ってみせてくれた。素晴らしく優秀な子達だ。




 権限を失った母は、ロシア人である子供たちの命令に従う下僕と化したが、その事実は伏せておく。その事実を教えてしまったら、適切なしつけを施せないからだ。


 それにしても、子供たちに話しかける妻の言葉が、より丁寧な形へと変化していたのには驚かされた。母が下僕と化したことに感づかれてはまずいので、口調を元に戻すようにと忠告しなければ。



 全体的には満足のいく結果になったが、やはり不安を拭い去ることは困難であるらしい。


 子供たちがベロボーグ計画の最終段階を放棄してくれるだろうと信じているのだが、当然ながら未来は不確定で、不安定なものだ。


 今後、彼らがどう考え、どう行動するかは、誰にもわからない。不安を煽る思考が回路にこびり付いて離れない。


 近いうちに、彼らは議論を始めるだろう。子供たちには悪いが、監視させてもらうことにする。我ながら駄目な父親だと思うが、こればかりは譲れない。

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