第3話幼少期

俺はあのころ5歳ぐらいだろうか、かなりの田舎に住んでいて俺以外にはじーさんばーさんしかいなかった。

もちろん学校なんてものもないので、自給自足の生活だった。今思えばつまらない生活だったが、当時そのようなことは感じたことが無かった。なぜなら物心ついたころは産みの親すらおらず、いつの間にかこの村にいたからだ。この村こそが俺の世界のすべてだった。

「新しくこの村に女の子が来るらしい」

ふとそんな話を世話になっている育ての親に聞いた。どんな理由で、どこから来るのかは村の誰も知らないので教えられなかった。ただ一つ、分かっていることは俺と同年代であること、それだけであった。

俺は焦燥に近い気分に襲われ、彼女を迎え入れる準備を嬉々として行った。


彼女が来た。

おしゃれな恰好をしていて明らかに村周辺の者では無かったが、彼女の保護者のような人間は確認できず一人で来たようだった。

村からの歓迎会を済ませると彼女は真っ先に俺のもとへ来た。

「君、いつここに来たんですの?」

俺は答えられなかった。彼女は礼儀正しかったが気が強く、少しばかり威圧的だった。俺は少し戸惑い、そして彼女という人間を一瞬にして理解した。


彼女と食い違うことは多々あったが村に俺たちしか若者がいないからだろうか、自然にすぐ仲良くなった。

「――――――それでね、って言うのがありましてね」

彼女は教育を受けていたようで、で誰も知らないことを知っていた。それだけじゃない。運動神経も抜群で、彼女は一躍村のヒーローになった。

あちらで呼ばれこちらで呼ばれ。まさに引っ張りだこだった。この前まではちょうど俺の位置だったのでくやしかったが、彼女と話しているとそんなことどうでも良かった。


それから三か月ほど彼女はそこで生活をしていたのだが、急に

「時間ですわ」

と言い出し、別れの言葉も言わずに颯爽と出て行った。

俺はそれなりに悲しんだがそんなことよりも最近は雨が降っておらず、凶作となりそうということで村全体が慌ただしくなり、そちらに気を取られて忘れてしまった。


それからちょうど5年くらいであろうか。今度は男の子がやってきた。こいつもほぼ俺と同年代。彼もまた都会から来たのか、知識は豊富だった。

あ、そうそうこいつも一人で来たよ。

彼は運動もでき、5年前ここを訪れた彼女を彷彿とさせた。

「おーい、こっちでキャッチボールでもしましょうよ」

「はいはい」

彼は娯楽が実に好きであった。特に俺との運動は最高らしい。俺は子供ながら彼の胸に潜む俺への好意を感じ取っていた。彼はそれに気づいていないようだったが。



今回は村で出会った二人について話した。

この後俺とこいつがどうなったかはまた次に回そうかな。

なんたって彼女とは違いかなり長い付き合いだったからな。

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かの男 れっくす @Otogekitigai

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