第2話彼がまだ学校に通っていたころ
彼の15歳のころの話は先ほど話した通りだが、今回は少し前の話をしよう。
「なんだ、まだ居たのか」
彼は並外れたその能力と性格で大抵の彼を知る人間に忌み嫌われていた。まぁ、当然のことであろう。
「あら、居てはいけなかったのでしょうか」
「当たり前だよ。お前が視界に入るだけで反吐が出そうになる」
「それはもしかして何かの病気なのでは?あなたみたいな人間には理解できないでしょうが」
「失せろ」
「おっと、また気分を害されましたか?では失礼いたします」
決してこの話し相手はこういう態度で接したいわけではなかった。しかし周りの空気と彼の捻じりに捻じ曲がった性格がそうさせた。
教員、生徒問わずこの学校の人々は彼に対してはこのような態度がもはや普通であった。当人である彼もこの状況には特に疑問を抱いていなかった。
しかし世界というものは不可思議なもので彼にもわずかながら「友人」と言える人物がいた。
全部で三人。
一人目は彼の偉大な才能に惹かれた者だ。彼を常に慕い、彼の言葉ひとつひとつまるで神の啓示のようにマメに書き留める人間である。
二人目はただ単純に彼といるのが好きな者。友というのは大抵この要因で出来るものだが彼に限ってはそれでさえ稀に思える。
三人目は彼といることで良いことがあると分かっている賢く、野心に満ちた者である。彼には遠く及ばないもののなかなかに優秀であった。
彼はそれらに対して一切の感動を持っていなかった。彼にとって世界は彼であるか彼でないかによって区別されるからだ。しかしそれらが使えることは十二分に理解していたので、まず彼は二人目の付きまとってくる彼でないものを試した。
具体的には自分と同じ状況に自分以外のものを置いたらどうなるかというものであった。
結果は失敗。二人目は生まれてきた状態になった。他者によってしか食事ができず、他者がいないと自然に天に帰す状態だ。
後の二人がどうなったか。言うまでもない。
あなたがもし望むのであればあなたの彼はあなたの思うよう動き出す。
しかし敢えて彼のすべてを知る私は口出ししないこととしよう。
彼はそのためにあなたと私の中に生まれてきたのだから。
次回はさらに時を遡ってみよう。
彼が彼でなかったころの話である。
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