批判的であること≠批判しかできないこと
タイトル通り、「批判的であること」と「批判しかできないこと」の違いはどこにあるのだろうかと考えていた。批判的である人はありがたく思うのに、批判しかできない人を不快に思うのも何故だろうと思っていた。
「批判」というと、最近ではどこか「否定」という単語と同義な雰囲気がある気がする。
批判というのは、私はありがたいと思う。だがやはり批判的であることと、批判しかできない、というのは明確な違いがあると思う。
今回はそれについて、少し考えてみよう。
批判的であることは、立派なことだと思う。誰だって、心地よくいたい。そしてできれば接する相手に自分を良く思ってもらいたいものだ。媚を売るとか、そういう話ではなくてこれは高度なコミュニケーションを取る人間のある意味では宿命的な本能ともいえるかもしれない。
それのためには、簡単にそして無責任に相手を褒めてやればよい。今は「褒めてもらいたい・肯定してもらいたい人」が多い。客観的な批判や指摘なんていらん、という人も少なくない。だから、適当に(この場合は雑に、という意味ではなく適切というのに近い)「褒めて」おけばお互いに心地よい。
さて、そうした中で嫌われることを覚悟で相手の瑕疵を冷静に客観的に突くことはそうできることではない。
それを勇気を持ってやっている人は立派だと思う。そして、そういう風に指摘をして来る人というのは、大抵の場合的確であると感じる。そしてそういう人はそのように「指摘(批判)している」自分の立場を驕らない。
対象者に、「あぁ、なるほどな。そういう作り方もあるよな」と思わせるだけの客観性がある。
これが批判的である人だと、私は思う。だから、批判的である人の言葉は素直に聞けるし入ってくる。
対象者の瑕疵も含めて、相手に対する敬意と愛を感じるからだ。滲み出る発信者の心意気とでも言うと大袈裟だろうか……。
最近では私はよく感想をもらう。これはありがたいことだ。無批判に「良かったですよ」と言ってくる人たちばかりではない。だが、私に感想をくれる人は大抵の場合「批判的である人」だ。書いている私よりも、作品を丹念に読み込んでいるなぁと思う人もいる。
だから、「批判的ある人」、こういう人たちは大切にしなければならないと思う。
一方で、批判しかできない人はどう違うのか。
私は他作品の感想欄やエッセイ、ツイートなんかを見るのが好きで、ふと気がついたことがある。批判しかできない人は基本的に愚痴っぽい、自らの経験や価値観を物差しにした論しか展開できない傾向にある。
よって、彼らには「私が〇〇の時には」「〇年前では」「最近の〇〇は…」という言葉が散見される。
自分の中に確固とした価値観を築くことは悪いことではない。むしろ大切なことかもしれない。だが、そうした価値観もまた、多くの様々な価値観の中の一つであること、もっと言えば「一つでしかない」と相対化して捉えられなければ、そこからはみ出たものは早晩、愚痴の対象になり下がる。
批判しかできない人は、この相対化、具体的には自らの経験や価値観を相対化することができていないと感じる。絶対化してしまっているのだ。
また、批判しかできない人には特徴がある。
「上から目線・具体例がない・突っ込まれると逃げる」の3点だ。この種の人は結局何を言ってもこじつけて、自分の価値観を正当化するために真意を捻じ曲げるので、まともに話すことができない。
あくまで「ご意見ありがとうございます」と平身低頭するのが賢明かもしれない。一つの意見だと捉えれば、「こう考える人もいる」と勉強にはなる。
私は、批判というもの自体は悪いと思わない。むしろ健全なものだと思う。人間という存在が、やはり一枚岩、全く同じ価値観や思想を持っていないことの表れであると思う。
だが、現代はとかく自意識の肥大した時代だ。批判というのも、ある種の手段として使われることがある。
私は批判のための批判が、最も見苦しいと思う。「自分は他人とは違う」それを誇示したいがための批判や逆張りは、醜いとさえ思う。あなたなりの言葉で発信すれば賛否の如何といったことのみで見ている人はあなたのことを裁断しないだろうに、と思う。
批判は単なる手段ではない。そこから、新しい世界、人間関係へと広がっていくいわばパスポートのようなものだ。賛否というのは、いわば一番最初の基本的な関門であって、そこから続く、「ではなぜ?」を自分の言葉で、たとえ相手が不出来であっても最低限の敬意と礼を欠かずに発信する必要があると思う。
批判的である人は、謙虚で慎重だ。
批判しかできない人は、傲慢で傍に人無きが若しだ。
広い目で見れば、多様性のもと批判しかできない人がいたっていいわけだ。それでも、悪目立ちするのは後者の方だろう。いつだって賢明な人たちは地味で大人しいものだから、割りを食う。
「批判的であること≠批判しかできないこと」
両者は明確に違う。
私は改めてそのことを、こうして整理したかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます