とあるテキスト、「ざっくり理解!アイドル次元」
※前回更新分の修正あるので近況で確認ね(作者)。ひたすら説明だし、読まなくても本編を読み進む上で大きな支障は出ないかと。さっと流す感じでどうぞ。
* * *
さて、早速解説に――といきたいところが、その前に一つ断っておきたい。
私がこれを書いているのは、あの一連の事件から五年経ったとある夏の夜だ。
よって、ここでは現時点での知識体系の概要を綴らせてもらうことにする。理論で観測できない範囲に関しても、部分的に私の能力で構築しうる形で紹介するところがある。察しの通りこれを書いている私も超能力保有者であり、他人が能力を行使した痕跡から相手の能力を分析する能力がある。だからこうして、アイドルのスカウトから研究員に転職しているわけだが。
それでは本題に入ろう。1~5までの項目があるが、原理はいいから能力についてだけ知りたいという人は1~3を飛ばして4から読むという手もある。それでも億劫だという人は最後にざっくり箇条書きにするからそれで知ったかぶりをすれば良い。
(目次)
1.アイドル次元とは?
2.どうして私達の世界と突然干渉し合うようになったのか?
3.「意識」とは何か?
4.法則性
5.能力のプロセス
1.アイドル次元とは?
先にも書いた通り、アイドル次元の正式名称は『高次元情報保有領域』という。今ではすっかり浸透した名前だが、5年前は学者しか使っていなかった。それだけ、アイドル次元の理解が一般市民にまで広まった証拠だろう。
具体的にどんな場所なのかというと、私達が存在しているこの物質世界と比べ、より高次の空間だ。近年では、私達のいるこの世界に、次元数を7足した世界だという仮説が広く支持されている。
ここで少し引き合いとして記述するが、量子コンピュータがどうして以前のコンピュータよりも高スペックなのかご存じだろうか。私も学が深いわけではないので詳しく書くのは地雷だが、素人知識には1ビットに存在しうる情報の量で差が生じているらしい。
既存のコンピュータは、一つのビットで「0」か「1」のどちらかを羅列することで情報を処理する。仮に3ビットだとして、表せるのは001、010、110……合計8個。ここで重要なのは、一度に表せる情報が瞬間的には一つという点だ。
これに対し、量子コンピュータは「0」と「1」を1ビットで同時に表すことができる。一つのビットが「0」であり「1」となりうるのだ。これにより、3ビットであれば2の3乗――8通りの情報を同時に表すことができる。そして、ビット数が上がると2のn乗で並行処理の量が増えるという算段だ。
詳しいことは各自調べてもらうとして、アイドル次元も論理的にはこれに近い。
次元数を7足した世界という言葉の意味は、私達の世界より一つの空間単位で記述しうる状態が7通り多いということだ。もっとざっくり言うなら、やたらめったら情報が存在できる謎空間だ。うむ、謎空間。私達も理解にはほど遠いからこの表現が正しい。
といっても、そこではクォークやら原子やら、既存の量子論で語られる形態でモノは存在していない。あるのは膨大な量のエネルギー、「情報」だ。詳しくは自分で調べるか、有識者にDMで聞け。話すと長くなる。
そしてまたややこしい話だが、情報に加えもう一つ、情報のエネルギーを伝達する因子が存在する。しかもそれはアイドル次元特有のモノで、私達の世界への
もうこの際無視したいところだが、この存在が、人の意識を語る上で欠かせない要因だから実に困る。それでもまぁ、「フタバ因子」という名前そのものくらいは聞いたことがあるだろうか。干渉することのできたアイドル、
とりあえず、アイドル次元では私達の世界に存在する全てのモノが「情報」という形態をとり、莫大な情報保有・処理能力を持つという認識で進んで欲しい。
2.「意識」とは何か?
普通に書けば分厚い本ができる内容。よって、ここで全てを語ろうというのは無理な話だ。何年前にMITのどの教授が見つけたとか、その手の経緯は省いて説明する。
意識。アイドル次元の発見によって、最も大きなパラダイムシフトが起きたものといっていいだろう。意識とは、アイドル次元で生まれうるものだ。
――意識はアイドルによって生み出されるとか、最後にして最初とかでは決してないと一応注意しておく。全人類普遍的な自然則であり、アイドルである必要はどこにもない。
私達の全意識は、先述した「情報」と「フタバ因子」の二つが、複雑なネットワークを構成することでその全体を作っている。構造自体を少し詳しく説明すると、意識を構成する情報を、フタバ因子が連結することで「個」を形成している、といった感じだ。実際は次元数の差があるため、地球の言語ではそれを正しく表現する術は存在しない。なので適当にそんなものと思ってもらっていい。
さらには意識を構成する結合フタバ因子に対しての遊離フタバ因子の存在比がどうとか情報の多重存在性とか頭を抱える要素が諸々あるが、紙幅に余るのでここでは割愛させていただく。誤解を承知で説明すると、意識にとって情報は「肉体」、フタバ因子は「魂」と位置づけられる。そういう観点では、フタバ因子が意識の最小構成単位といって差し支えないだろう。
その全意識の内の一部が、私達のいる物質世界にフィードバック干渉をすることによって私達の知覚・思考するモノになるという仕組みらしい。これを受け、私達が知覚しうる範囲が「意識」、アイドル次元上に存在する知覚外の意識を「意識外意識」ととあるドイツの教授が定義し、現在これが広く浸透している。
また、脳についても、アイドル次元の意識ネットワーク構造をこの世界の次元数空間にフィードバックする上で、その構造が最も効率的なものとなっている事が近年の研究で分かってきた。
それにより、構造自体が大事なら模型でも意識は宿るはずだという連中が既にいる。機械に意識を宿らせるといった所業も、いつの日か可能になるのかもしれない。
3.どうして私達の世界と突然干渉し合うようになったのか?
こんな題目にしておいて何だが、全くもって不明だし、証明も現状不可能だ。Whyに関してはどうしようもないが、Whenに関しては少し手がかりがある。2で軽く説明した、意識から歴史を遡るのだ。
説明したとおり、意識はアイドル次元に起因する。それならば話そのものは難しくない。意識が生まれた時には既にアイドル次元はこの世界と干渉しあっていた。意識の歴史、それこそがこの世界とアイドル次元の交流の歴史を知る鍵である。
……まぁ、察しの良い人ならもう分かっているだろう。ここまで来たとしても、「意識の発現」がいつなのかはさっぱり調べようもないのだ。死者に花を手向けた原始人類にそれを見るのもありだろうし、さらに遡ることも必要だろう。人類の進化に意識の発生が大きく寄与しているという仮説も飛び交っている。二足歩行により容量を増した脳がアイドル次元の意識を受け入れる形状へと偶然変化した、という話は、個人的には腑に落ちるもので正しいように思える。
じゃあ実際に相互干渉の証拠を探そう思うところだが、そうは問屋が卸さない。『アイドル次元に私達の世界の情報が存在する→これはお互いの間に何らかの繋がりがあったからだ』という論理は、アイドル次元の膨大で過密な情報により否定されるのだ。
一枚の紙がある。そこに鉛筆か何かで格子模様を描いたのが私達の世界だとしよう。ではこの時、アイドル次元を描くとどの様になるのか。
その答えは一面真っ黒だ。何なら裏まで塗りつぶしてある。
さて、ここで一つ質問しよう。両面真っ黒の紙の黒の部分だけをなぞり、最初に提示した格子模様を描くことはできるだろうか?
――馬鹿げた質問だろう。平面で描ける物は、際限なく表現できるのが分かる。要は観察者のバイアスでどうにでもなる相手なのだ、アイドル次元というのは。
こうなると、違う格子模様も描けてしまうわけで。いずれ異世界なんかが見つかる可能性も多いにあるだろう。
まぁ、いつかあやつが教えてくれる時を待とう。
4.法則性
(1)能力は意識によって行使される
これはまぁ、何となく理解はしやすいだろう。
アイドル次元が私達の世界に影響を与える、というプロセスに次元数の同期が必要だからというのが現状考えられている原因だ。かつてはその主体である意識が脳の活動によって生まれるのか、それともアイドル次元側の「私達」にあるのかという議論が起こったが、現在はどちらもという結論に落ち着いている。
一方向の時間軸で観測した場合、私達の世界とそれに対応するアイドル次元の情報との間に時間差は無く、全て同時に変化していることが分かっている。
(2)情報の分割存在性
私達の世界――要は物質は、全てアイドル次元に情報として対応するものが存在する。原子一つ一つに座標・構造・エネルギー・ベクトル等様々な情報があるが、それら全てがアイドル次元で別々の情報として存在している。超能力による干渉の際は、どれか一つの情報だけということが可能になっている。
(3)先行優位性
情報への干渉において、もっとも重要な性質だ。干渉飽和性ともいう。一つの情報に干渉できるフタバ因子の数は決まっていて、それ以上の干渉はできない。干渉の強さに大小は存在しないため、結果として先に干渉した方がその情報に対し優位性を持つのだ。
(4)能力のタイプ
超能力は、例外こそあるが大きく分けて「自己対象型」「外部対象型」「無制限型」の3つに分けられる。後ろの二つは文字そのままの解釈で構わない。外部対象型は自分ではないものを、無制限型は全てを対象にとる。
しかし自己対象型はまた変わっていて、「自己」の定義に大きな個人差が存在する。その人にとってどこまでが自己たり得るかが、そのまま対象の範囲となるのだ。
分類しようとするからややこしい話になるのであって、実例で考えれば大して難しくはない。
あなたが今、手にペンを持っているとしよう。自己の定義とは、使用する時にそのペンが自分の一部だと思えるかどうかの話だ。無意識下の領域も多いため、一概にどこから自己に含むのかとかの線引きは曖昧だが。自己対象型の超能力保有者そのものに傾向があるのかもしれないが、想像するよりも道具を自己の定義の中に含むケースが多いことは覚えておいてもらいたい。
5.能力のプロセス
以上のような法則を踏まえた上で、実際に能力はどうやって起こっているのか。ざっくり書くとこうだ。
意識による対象指定
↓
意識外意識によるアイドル次元上の対応する情報の捜索・特定
↓
自身の結合フタバ因子による情報への干渉
↓
情報の変化
↓
物質世界もそれに準じて変化
といった感じだ。詳しくは割愛するので、しりたければ有識者にDMを送れ。私が言うのもなんだが、知らないところで日常になんら影響は無いので研究者になるのでなければ深く考える意味はあまりない。
……とまぁ、要点を触りつつ飛ばし飛ばしでこんなところだろうか。仕方ないので最後にテキトーにポイントをまとめて終わる。
・アイドル次元とは情報いっぱいの不思議空間
・意識とは私達の世界に浮き出た氷山の一角
・能力にも色々法則がある
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