【本文補足】ドル円とドル・ユーロとの関係について →普通に考えれば2023年末にかけて円高のはずなんですが…という内容


https://kakuyomu.jp/works/1177354054884987864/episodes/16817330657332116671

この中で述べた、2022年に急激に円安ドル高が進んだ理由についていろいろと考えてみました…m(_ _)m


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為替のドル円、ドルユーロの関係にはかなり明確な連関性があります。まずドル円ですが、これはほぼ100%、「日米長期金利差で決まる」と言える状況です。日本と米国の10年もの国債などの長期金利の差が大きくなった場合には「円安」。逆に小さくなった時には「円高」です。


たとえば本編でも述べた2022年下半期、米国はインフレのために長期金利は3〜4%に上昇しました。一方、同時期の日本は黒田日銀総裁の判断により、「今なお日本は基本的にデフレ」なので低金利政策(=金融緩和)維持。いわゆるYCC政策によって金利は0.25%のまま据え置かれました。このため日米金利差は大きくなる一方で、このために一時期一ドル150円近辺まで突入したということです。


この後、米国長期金利が落ち着いて下落基調になったこと(それでも3%中盤)に加え、日銀が植田総裁に変わりYCCをより柔軟に活用するという緩やかな政策変更により、日本の長期金利も0.5%くらいに上げて、このラインを絶対防衛線とする…的なコンセンサスが出来ました。このため日米の長期金利差は相対的に縮まり、現在(2023/5/15)は1ドル=136円くらいです。


思いますにアベノミクス下では1ドル=108円±5円程度で推移していました。激しいインフレ下にない安定した環境の場合、およそ1000兆円前後の日本の資産が海外に流れていった影響もあり、おそらくこのラインが一つの基準として今でも有効と思われます。よって現在は「海外の激しいインフレの影響を受けて、円安」と言えるのではないかと思われます。



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他方、ユーロに関しても似たような相関関係があります。こちらはドイツ10年モノ国債の金利と日本10年モノ国債の金利差の関係が重要です。


ユーロはヨーロッパの全ての共通通貨であり、その中でずば抜けて強いのが「ドイツのマルク」という事になります。実際には「マルク」はもう存在しないのですが、「自国通貨=自国国債」であり、ヨーロッパは各国が独自の中央銀行を持ち続け独自の国債を発行し続けています。なので「ドイツ国債=マルク」が実際には存在しているのと同じ…ということです。


この「ユーロという一つの通貨に多数の中銀と多数の独自債権」の問題はいずれ述べるにして、このドイツ国債がユーロ・円の為替レートのユーロ側の起動要因になっており、日本=ドイツの国債金利差は日本円=ユーロの為替レートとほぼ同一の軌道を描きます。つまり、ドイツ長期国債金利が上昇して日本の長期国債金利との差が大きくなれば「ユーロ高・円安」、逆にドイツと日本の金利差が縮小すれば「円高・ユーロ安」という事になります。


とはいえユーロに関してはいくつか考えておくべき事もあり、一つはドイツ国債とイタリア国債との金利差です。ユーロの中でドイツ・イタリアは共に経済を引っ張る超大国(ドイツは域内一位、イタリアは四位)なのですが、イタリアは財政・政治が万年不安定で常に「弱い通貨リラ(=弱いイタリア国債)」です。なのでイタリアの財政状況が悪化した場合、ドイツとイタリアとの金利差が大きくなり、これがユーロ押し下げ要因になります。イタリアの財政状況が悪化した場合にはユーロは他の通貨に対して下落する傾向にあるという事です。


もう一つは現在のインフレという環境に起因する問題で、日本・ユーロ共にエネルギー価格上昇などにより記録的な貿易赤字を出しています。これが両国の「金利差の感応度」を鈍らせると考えられます。要するに「インフレのせいで日本円もユーロも弱い通貨になった。そのうち、どっちがより弱いか競争」という感じです。実際、激烈なインフレ前の2018年頃の円ユーロを見てみると、当時の日本とドイツの金利差が1%開くと実に15円くらい円安になったのですが、2023年の現在では6円程度です。


ワイが思いますに、ちょっと前まではドイツも日本と同じ程度に超低金利時代だった。これは簿外債務(ドイツは他国の国債などを引き受けたりしてユーロ全体を買い支えている)の拡大や、事実上の為替操作(ドイツ「マルク」はユーロにマスキングされることで「実際よりもマルク安」になるため、対米・対中輸出が伸びやすい)などにより「マルクは常に強い」状態だったものがインフレ圧力により「ドイツのマルクが弱くなった」に等しい状況になったためで、このため円とユーロ間の金利差感応度が下がった…と考えるべきと思われます。


なのでユーロ円は「ドイツと日本の金利差」「ドイツとイタリアの金利差」を見ながら、「ドイツの長期金利金利」「日本の長期金利」が異様に高くなればその分相対的に弱くなるので「仮に円安が進んだとしても、その進み具合(金利差の感応度)は鈍くなる」という事になるかと思われます。


この逆がドル円で発生しているようです。確かにアメリカの長期金利が上昇すると日本円が売られる円安にはなります。通常、日米金利差が1%開くとだいたい為替で10円くらい動いていましたが、現在ではなぜか15円も動いています。過剰反応な状態ということです。よって一気になぜか1ドル150円台まで下がってしまったということでした。「ドル円では円が過剰に売られている」ということで、これはユーロ円の逆の動きと思われます。ということは「この世界ではドル一強」と考えるべきかと思われます。


この違いはおそらく、ドルが世界の基軸通貨であることと前述の円・ユーロともにエネルギー価格上昇に伴う貿易赤字が急激に膨らんだことが要因ではないかと思われるのです。

まず基軸通貨についてですが、基軸通貨は他国通貨に比べて圧倒的な優位性があります。特に「有事になったら買われる」という通貨です。これは「国債の選好度」とも呼ばれ、この世の中で最も安全な資産=米ドルという認識があるため、たとえば大戦争が始まった時、アメリカは世界で一番負けないで最期まで生き残るだろうと思われる経済力・軍事力があるので、


今のうちに、ワイの資産を全部ドルにしとこ…(๑¯ω¯๑)


…というドル買いの動きが強まるということです。ということはアメリカが戦争などを始めた時、戦争経費にカネが必要となりますが、この時に戦時国債を発行すれば、


よし!!その米国債(=戦時国債)バンバン買うぜ…(= ゚ω ゚)/


…という流れが出来、このため有事のドル買いもしくは困った時ほど米国にはカネが降ってくるという超羨ましい効果が発生します。この国債の選好度が他国通貨にはない強みです。ちな中国が人民元をなんとかして世界の基軸通貨にしたがっている理由の一つがコレです(爆)。


このためインフレになり、ドルの価値が下落したとしてもアメリカの将来性・経済力などの潜在的な強さから逆に「高金利の米国にカネを入れとけば、むしろ金利分儲かるんじゃね?」というドル回帰の動きがしばしば見られます。勿論、これは米国がリセッションにならない場合には…という条件付ですが。

この「ドルは特別」という状況下で日本もヨーロッパも急激に貿易赤字が拡大。このため日欧はドルに対して相対的に弱くなった。なので現在の所はドル円は過剰に円安に動いているのではないかと思われます。


ということは一つの可能性として、2023年末にかけてドル円はこの過剰反応が是正される+米国経済が不況になることで米国金利下落圧力も加わって「円高」になるのではないかと想定できるということです。昔のように1ドル=108円まで戻るかは不明ですが、120円台の中くらいまでは戻る可能性がある(金利差が広がっているにも拘らず…)ということです。

他方、ユーロ円ですが、こうした動きはないと思われますので現在の1ユーロ=150円を挟んでダラダラと上下するのではないかと思います。勿論、イタリア国家破綻とか何か劇的な動きが出てくれば、こちらは劇的に状況が変わり急激な円高の可能性もあり得る…とは考えといたほうがよいでしょう。


てか、よく言われる格言みたいなものに「円安はジリジリと、円高は急激に」というのがあります。なんのかんの言っても日本円は安全資産とされていて、貿易赤字やら低成長やら世界の周回遅れやら…といろいろと言われていますが、それでも今年もまた世界がリセッションやスタグフレーションになった時には、突然の急激な全面円高…というのもまた「ありえる」という事も念頭においておくべきと思います。



こんな感じなので、ワイはFXはやりません(爆

こんな状況、先なんて読めるかーっ!(# ゚Д゚)?!


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