題名はダジャレ的だったが、内容はあらゆる意味で衝撃的。
本作は「憲法9条が役に立っている小説」という縛りがある企画の作品である。しかし、内容はとても読みやすくなっているので、安心してお読みください。
主人公は日本を母国とする医師で、災害現場に派遣されている。日本は本当に武器や兵力を捨てた。しかも派手に。そして日本の迷彩服はピンク色になった。ここだけでも、衝撃的だ。さらに、国一つが日本に関わることで、消されたことが示唆され……。果たしてその理由はなんだったのか?
何かを得るために、何かを犠牲にするということは聞いたことがある。
しかし、人間は何かを手放すときにも、別の何かを犠牲にしているのではないか? そんな事を考えさせられる、短くても深い作品。
是非、ご一読ください。
日本国憲法第9条は、物語を紡ぐ創作者にとっては、誰もが最も避けるべきと考えている『忌み手』のテーマです。
なぜなら日本国憲法第9条は、全ての「戦争行為」という表現手段を禁じ手にするからです。
そして『争い』というものがはぶかれた物語とは、人の心には強く響かないものなのです。
それが日本国憲法第9条という法律が持つ文章の強力無比な力であり、また限界でもあるのです。
この作品は、その誰もが「禁じ手」で心に迫らないとする限界に挑んだ、勇猛で果敢な作品です。
さらには、私が自主企画で求めていた主旨をしっかりと理解され、作者さまらしさで表現してくださっている作品でもあります。
レビューの見出しにある言葉は、私が第9条の解釈で感じている言葉の中の一つです。
この作品は、その言葉を今持てる力で必至に表現しようとしていると力強く感じる作品でした。
人を蘇らせることは、人を殺めることよりも難しい。
この作品の物語は日本国憲法第9条が示す、数ある「平和」の中の一つを確かに表現しています。