5時限目「暇ですか?」「生徒会からの依頼が来たので暇じゃないですね」
「里々朱、助けてくれ!!」
「何よ突然」
「会長殿からお呼び出しがかかった」
「あっ........ご愁傷さまです.....」
執務室の机に突っ伏す翔輔。
この学校の生徒会長からのお呼び出しが原因だった。
過去に何回か呼び出された事はあるが、いずれも面倒な話が多かったの翔輔はめちゃくちゃ嫌がっている。
本来は無視すればいい話なのだができない理由があった。
「ま、諦めて行くしかないんじゃない?何せ会長のお母さんはこの学校の理事長だし」
「それなんだよなぁ〜才色兼備で横暴な生徒会長殿の母親がこれまた才色兼備でその学校の理事長とかどこのラノベだよ.....」
そう、翔輔が学園防衛隊の装備や人員を整える時に理事長の力を借りているのでその娘である生徒会長の事も無視出来ないのだ。
「ちょっと行ってくるから里々朱、ここは頼んだわ」
「了解」
重い重い足取りで向かったのは生徒会室、そしてその奥の生徒会長室。
生徒会室にノック無しで入るのは翔輔くらいで部屋に居る役員達にはこの光景はお馴染みになっている。
「来たぞ〜」
「遅いな?もっと早く来る様にしてくれないと困るぞ」
「こっちもこっちで書類が忙しいから勘弁してくれや、果梨会長」
椅子にふんぞり返るは
「んで、今回のご用件は?」
「んん......
その名前を翔輔は記憶から呼び出した。
不思議な雰囲気を持つ少女だったので微かに違和感を感じた程度しか出てこなかったが。
「鈴々花?いや、深くは知らないな。確かに少し気になる人物ではあったがそれまでだ。何かあったのか?」
「実は銃火器の所有疑惑が上がっていな。少し調べさせたのだが調査中に不審な人影を目撃したとの情報もあって我々では荷が重いと判断した訳だ」
「銃火器の所有疑惑、ねぇ......しゃーねぇ。調べてやるよ。ただし、やり方はこっちに任せてもらうぞ」
いくら正体不明の敵と戦争中と言っても一般人の銃火器の所有は犯罪である。
ただ、戦闘が終わると負の軍隊の死体や武器は跡形もなく消え去るのでその武器を拾う事は出来ないし自衛隊や学園防衛隊が近くに居るので拾いに行く事も出来ない。
だから銃火器の所有で捕まる人数は以前とそれほど変わっていなかった。
(自校の高校生が銃火器の所有なんかで捕まったら大変だから警察より先に動こうってのか....まぁ、こっちにも関係するし適任だな)
銃火器所有で高校生が逮捕される事など滅多に無い。
もし彼女が捕まった場合、どこから銃を手に入れたかという話になれば真っ先に疑われるのは学園防衛隊であるのは明白であった。
自身に降り掛かる火の粉を払う意味でも急ぐ必要があった。
翔輔は1度執務室に戻ると里々朱に声を掛けて帰らせ、自身はそのまま鈴々花の家へと車を走らせた。
学園防衛隊の隊長、副隊長クラスは年齢に関係無く自動車の免許を通常より短期間で取る事が出来る。
目的地に着いた翔輔は持ってきたトンプソンを助手席に残し家のチャイムを鳴らした。
出てきたのは背の低い黒髪ショートの少女、相田鈴々花だ。
「.......学園防衛隊の隊長さん?」
「ああ、翔輔だ。お宅に関するウワサの真偽を確かめに来た」
「!」
それを聞いた途端鈴々花はドアを閉めようとしたが翔輔がつま先で止めた。
「落ち着け、警察に渡そうとかそんなんじゃない」
「本当に?」
「寧ろ警察に渡さない為にここに居る。だから信じてくれ」
頷いた鈴々花は周りを気にしながら翔輔を中に入れて2階のある部屋に案内した。
その部屋にはダンボールだったり季節的に着ない服等が綺麗に片付けてあった。
「ウチの物置部屋。そのクローゼットを開けてみて」
鈴々花が指差す先にあるクローゼットを開けると洋服に紛れて1つ、大きな金属製の箱が見えた。
「ライフルケースか」
「そう、でも開けられない」
「開けられない?どういう事だ?」
「何をやっても開かないの。鍵みたいなのは無いし、こじ開けようにも道具がない。不自然な腕輪みたいなのがついてるだけ」
確かにそのライフルケースには鍵を解錠出来るような物は一切なく輪っかが1つ、紐で繋がっているだけ。
流石の翔輔でもお手上げだった。
「中身について何か知ってる事は?」
「何も無いよ......あ、一つだけ」
「聞かせてくれ」
「これと一緒に出てきた紙には"身の危険が迫ったり、緊張したら腕を通せ"って」
「ん?........まさか」
謎のメッセージを聞いた翔輔は1つの可能性を考えたが、ドアを叩く音が全てを遮った。
「!?鈴々花、ここ最近誰かの視線を感じたりしたか?」
「...あったけど」
「ソイツらだな、どっちが狙いか分からんがやるしかなさそうだ。部屋に隠れてろ」
上着を脱いでM1919A1を取り階段へと向かう。
突入してくる敵を上に登らせない為である。
少しするとドアを破る音が聞こえスーツ姿の男が2、3人見えた。
手に持つロシア製のPP-19 ビゾンサブマシンガンを見て警察で無い事を悟った翔輔は先に発砲し3人を殺した。
マガジンを交換していると肩を叩かれ、見ると鈴々花が居た。
「ねぇ、ケースの開け方教えて」
「......ちょっと待て」
翔輔は鈴々花の手首の辺りを二本指で触ると頷き、言葉を続けた
「ケースに付いてた腕輪に腕を通せ。二の腕の辺りまでしっかりと。俺の予想が正しければ開く」
「分かった」
鈴々花が部屋に戻るのを確認すると残敵が居ないか確かめる為に階段を降りようとしたその時、体の正面に強い衝撃と肩に痛烈な痛みを感じ、翔輔は自分の判断ミスを呪った。
(やっべ.......やっちまった....)
そのまま後ろの壁によたよたと寄り掛かり、座り込む翔輔。
着ていたシャツの赤いシミはビゾンの9mmパラペラム弾が貫通した事を告げていた。
胴体にも何発か当たった様だが、ボディーアーマーに助けられた。
すぐに止血しようとするが黒い靴に傷口を踏まれ呻き声を上げた。
目の前にはサングラスの男が銃口を向けて立っていた。
「くっそ.....お前ら何者だ!?何が目的だ!?」
「お前には関係ない。これ以上学園防衛隊の戦力を増強されては困る」
「学園防衛隊の戦力増強が困るだと?」
「予想以上に消耗したか.....1人にしてはよくやった。死ね」
翔輔に向けて引き金を引こうとした男。
その男の頭が1発の銃弾によって吹き飛んだ。
「........あっぶねぇ。死んだと思った。感謝する、鈴々花」
翔輔の視線の先にライフルを構える鈴々花。
そしてその足元にはライフルケースが落ちている。
「大丈夫!?」
「大丈夫だ、肩だけだからな。俺の予想が正しかったか」
「そうみたい。まさか、心拍数が鍵になっているなんてね」
そう、ライフルケースの鍵は鈴々花の心拍数。
恐らく腕輪によって心拍数を測定し高ければロックが解除される仕組みなのだろう。
「しかし....ケースの中身はWA2000だったか」
鈴々花の持つライフルに翔輔は見覚えがあった。
その名はWA2000。
ドイツ、ワルサー社の開発したセミオート式狙撃銃だ。
重く、高精度のパーツを使った事に起因する価格の高さから正式採用されなかった銃ではあるが、セミオート式狙撃銃の中でも精度が高い物として知られている。
「ケースを持ってきてくれ。早く逃げよう」
「分かった」
翔輔は鈴々花と自分の車に乗って走り去る。
後に残ったのは男達の死体だけだった。
放課後暇ですか?戦争で忙しいです ならや @ITAMI
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