女スパイ・レーナ 3/3
改造を施した「道具」によって散々もてあそばれ、レーナはぐったりと動かなくなった。
……危ない。意識が、飛ぶ所だった……。
だが、気を失ったフリをしているだけで、その意識は依然はっきりとしている。
ここまでされてまだ、彼女が耐えられるのは、
もうそろそろ、かしら。
この絶体絶命の状況を脱する策の完成が、間近になっていたからだ。
「そろそろ仕上げと行こうか」
「ん、ん……」
そんなことを知るよしもないボスは、下品な笑みを浮かべて自身のベルトに手を掛けた。
そのとき、
「ここからさ――」
パカーン、という景気の良い音と共に、ボスの声と動きが止まった。その頭部には、刃と柄が一体で作られた
ボスは頭から血を噴射しつつ、気色悪い笑顔のまま固まっていたが、その身体が彼を殺した人物に蹴り倒された。
「間に合った、か?」
ボスの頭を斧ですいか割りした、銀色の目をした少女が、レーナの拘束を解きながらそう訊く。
レーナの策とは、状況開始から2時間半が経過した場合、この少女と組織の兵隊が突入し、レーナを救出するというものだった。
数時間ぶりに四肢が自由になったレーナは、ええ、と疲れたように答え、
「助かったわ、ルカ……」
ルカ、と呼んだ、背の低い少女を抱きしめる。
レーナは先ほどまでの態度とは一変して、
「ちょっと手間取った。ごめん」
「ルカ……」
弱々しい声でルカの名前を呼び、レーナは彼女をより強く抱きしめる。
「大丈夫。私はここだ」
そんなレーナへ力強くそう言い、ルカは彼女の背中に腕を回した。
少女らしい柔らかさがあまりない、引き締まった体格のルカではあるが、レーナにとっては、これ以上になく安心出来るものだった。
ボスの頭に刺さる手斧を抜いたルカは、刃に付いた血をボスの脱いだ服で拭った。彼女はその刃にカバーを掛けて、背負っていたバッグに入れた。
「さっさと出るぞ。レーナ」
それを再び背負ったルカは、自分が持ってきた服を着たレーナにそう言う。
「分かっ――、あれ?」
彼女はそのまま歩き出そうとしたが、足が付いてこずに転倒しそうになった。
「私がおぶる」
レーナの身体を素早く支えたルカは、そう言ってバッグをレーナに渡す。
「ありがとう、ルカ」
にこりと笑ってそう言った彼女は、それを受け取って背負った。それを見て、ルカはレーナの足元に
レーナを軽々と背負ったルカは、
「帰ったら、私が「消毒」する。少しまて、レーナ」
視線を背中のレーナに向けてそう言った。
「徹底的にお願いね」
「消毒」の快感を想像し、レーナは背中をゾクゾクさせる。
「まかせろ」
ルカは表情を変えずそう言い、スタスタと建物の外に向かって歩き出した。
女スパイ・レーナ 赤魂緋鯉 @Red_Soul031
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