2. 人はいさ心も知らず
プロフィールを見た私は、また唖然とした。驚くほど何もかかれていないのだ。通常、可愛い女性を使って商品を売りつけられたり、ねずみ講などに引っ掛けられたり事件に巻き込まれるケースでは、女性がかなり綿密なプロフィールを書く場合が多い。例えば次のような場合だ。
・長い間付き合っていた彼氏に振られて寂しいです。
(男性の存在を否定させる文言)
・ドライブに連れて行ってくれるとうれしいな。
(都内の場合には、それなりにお金がある人にフィルタリングをかける文言)
・気軽にメッセージしてください♪
(軽い気持ちで会えることを暗に伝える文言〉
さて、では彼女の場合はというと次のようなものだ。
・ゆっくり仲良くなっていきたいです!
・じっくり向き合ってくれたら嬉しいな♪
・不器用で人見知りですが、よろしくお願いします。
・なかなか自分からいけないので声をかけてほしいです。
これは本心で書いている可能性が高い。というのも男性を引っ掛けるのにも警戒されては面倒なのだ。そのため通常は手早く会って策を打つ場合が多い。また女性が積極的に待ちをアピールするのもレアケースだ。よって、私は「本心で相手を探している」と捉え、彼女とのマッチングを成立させた。
彼女にはすぐメッセージを出した。プロフィールのジブリ好きが目に止まったので、ひとまずこの内容で話をしてみることにした。彼女の名前は衣に音と書いて「いおん」というらしい。源氏名なのか、実名なのか、いづれにせよ風情を感じる。
ジブリ話はすぐに盛り上がりを見せた。というのも、私も相当にジブリが好きで語ることができるからだ。彼女からも「ここまでジブリの話で盛り上がったの初めてだ」との言葉が聞かれた。もちろん、私がすっかり話し込んでいたのは、彼女に常ならぬ想いをいだき始めていたからなのだろう。
彼女の印象といえば、とにかく好印象だ。写真は加工をしているからかもしれないが、とてもかわいらしい。人見知りで不器用なのがまったく感じられないほど、楽しく会話ができている。好きな動物の話、よく出かける場所の話、私服の話、写真の話などなど。
そして彼女から「風景を撮影しにいく」という言葉がでてきたとき、私はこう返信した。
「僕も風景撮りをするの好きなんです。是非どこかいきましょうー!」
それに対する彼女の返答はこうだった。
「ぜひいきましょう!」
今年の夏は、例年よりも少しだけ暑くなる予感がした。
人知れずこそ思ひそめしか Haruka @yuharuka
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