人知れずこそ思ひそめしか

Haruka

1.失恋の向こう側

5月某日、私のこゝろに棘が刺さった。密かに恋心を抱いていた人が所属するコミュニティから去ってしまったのだ。去ってしまったから棘が刺さったというよりも、去る原因を作ってしまったのではないかという半端なこゝろあたりがあるために、私のこゝろは動揺を隠せない。1日、1日と過ぎるごとにじわじわ傷口が抉られていくのを感じていた私は、この痛みを拭うためにある手段に出た。


「28歳、コンサル会社に勤めています。絶対音感があります。」

数日後の私は、スマートフォンを片手にプロフィール文を用意していた。いわゆる出会い系というヤツを使って話し相手でも探そう、という魂胆だった。


最近の出会い系アプリは有用で、比較的素顔と思われる写真を掲載している人も多い。私の使ったアプリは、30歳以下のユーザーの登録が多い。インターネットのレビューを見ていると、どうにも話し相手や気軽なお出かけ相手を求めている女性が多いということだったのでちょうどいい。

女性の顔写真やプロフィールを見て好みを判別していく。Like or Dislikeの判断だ。

無意識に追いかけていた人の姿に近い人に好評価をしていたのは、まだ私のこゝろが明日を向けていない証拠だろう。


登録して30分、最初の通知が届いた。自分が好評価をしたわけではないが、女性側が気になったらしい。プロフィールや写真を見たが・・・うーんイマイチ好みではない、Dislike。続いて、5分後に自分が好評価をしたらしい女性とのマッチング通知がきた。よくよくプロフィールを確認してみると、そう好みでもないことがわかった。自分から「気になるなー」と言ってスルーをするようなものなので忍びないが、ここは将来のためにも我慢をすることにしよう。


そして10分後、また通知音が鳴る。また好みではない子とのマッチングだろうと思っていたが、どうやら誰かが自分を好評価したらしい。アプリを開いた私は絶句した。


大きくキレイな瞳、黒髪で色白な品が良さそうな女性の姿がそこにあった。


否々、さすがにそれはないだろう、釣りかオッサンかねずみ講か、とにかく自分をひかっけようとしているに違いない。とは思いつつも、自分の好みの女性が目の前にあらばもっと知りたくなるのが性。危険な香りがするプロフィールな場合もあるので念のためチェックすることにした。





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