第18話 機械国家マシスト

ホライ「…リーゼはなんとか助け出せたし、皆も僕とロゼと一緒に魔王復活計画の阻止を手伝ってくれるようになった…。でも肝心のゼオがどこにいるかがまったく分からないな…」

リーゼを助け出したホライ達は一度古城を出て、これからどうしていくかを話し合っていた。

しかしゼオがどこに行ったのか分からないため、誰も口を開くことなくただただ時間だけが過ぎていった。

ニコル「本当にゼオは何も手がかりを残していないのですか?」

ホライ「うん…あいつも『知りたければ追いかけてこい』としか言ってなかったし…」

コール「なんでえ、それじゃあ八方塞がりじゃねえか…」

ヴィン「………俺に提案がある」

コールがゼオに毒を吐くとヴィンが滅多に開くことがない口を開けた。

ホライ「ヴィン。ゼオの事を何かしっているの?」

ヴィン「…ゼオの事は俺にも分からない。ただ、もしかするとそこに行けばゼオがどこにいるのかが分かるのかもしれない」

ロゼ「そこはいったい…?」

ヴィンは突然西の方角を指さすと、ホライ達は一斉にそれを追って首を動かした。

ヴィン「…機械国家マシストは知っているな?」

ニコル「マシスト…!」

ホライ「マシスト?どこそこ?」

ニコル「知らないのですか?マシストはこの世界で最も科学技術が推進した国家であり、その技術を用いればこの世界全土を機械で発展できるほどの力を持っているとか…」

リーゼ「ニコルさん…何だか張り切ってる…?」

マシストの事をホライに語るニコルの目は新しい物を発見した子供のように輝いていた。

ホライ「す、すごい!そんな国があったなんて知らなかったよ!」

コール「…でもよ、そんだけの技術があるなら何で他の国や大陸には機械が大して伝わってないんだよ?」

ヴィン「…考えてもみろ、それほどの技術を他の国に広めたらどうなる?正しく機械を扱えない人々や犯罪に使おうとする人々の手に渡って大惨事になりかねないだろう。

マシストはそんな事が起こらないよう機械の技術を他の国に伝えず、交流を拒みこれまで自分達だけ発展してきたんだ」

コール「な、なーるほど…」


コールが淡々と喋るヴィンに圧倒されている中、ロゼが小さく手を挙げ間に入ってきた。

ロゼ「ちょっと待ってくれ、君が言うにはマシストは他の国の者との交流を拒んできたのだろう?それなのに私達がマシストに行くことが出来るというのかい?」

ヴィン「…その点に関しては心配は要らない。少し待っていろ」

ヴィンは羽織っている上着から小型の通信機を取り出してホライ達から離れた場所で通話を始めた。

リーゼ「すごい…あれが噂で聞く【けーたい】という物ですか…?」

ニコル「実物を見るのは初めてです…。あれがマシストでは一般的に使われているのでしょうか…?楽しみです…」

ニコルはこれからマシストに行けることに、喜びを隠しきれずにいた。

ホライ「…今までそんなに気にならなかったけどさ、ヴィンって何者なんだろうね…?」

ロゼ「組織の人間、とは言っていたが…。まさかマシストの人だとはな…。ますます彼に対する謎が深まるばかりだ…」


「もしもし?」

ヴィン「俺だ」

「おお!ヴィンじゃないか!久しぶりだな~!元気にしてたかよ?」

ヴィン「まあな…」

「いや~お前が任務に出てから中々戻らないから心配したぜ?」

ヴィン「色々あったんだ」

「そうかいそうかい、お前は昔から災難に巻き込まれやすいタチだからな!」

ヴィン「…そろそろ話をしてもいいか?」

「ああ、悪い悪い。で、何の用だ?」

ヴィン「これから任務先で知り合った仲間を連れてマシストへ戻る。少し遠い所だから、迎えを頼めるか?」

「仲間か…。マシストの決まりでは、他国からの来訪者には厳重なチェックをすることになってるけど、大丈夫か?」

ヴィン「怪しいものを持っている奴はいない」

「よし、分かった。すぐに迎えを手配するから、お前の仲間に検査が入ることを伝えておいてくれよ。それじゃあな!」

ヴィン「ああ、悪いな」


ヴィンが通信で話した内容をホライ達に伝え終えたと同時に、マシストからの迎えがやって来た。

ホライ「すごい…車が浮いてる…!」

ニコル「これがマシストの技術…」

ヴィンを除く全員が空から現れた迎えに驚いていると、中から袖をまくったワイシャツを着た気さくそうな男が出てきた。

「よう、待たせたな!」

ヴィン「…すまないな」

ロゼ「ヴィン、こちらの方は?」

「ああ、君達とは初めましてだな。

俺の名前は【レヴァル】。よろしくな!」

ホライ「レヴァルさん、こちらこそよろしく!もしかしてこの車、レヴァルの物なの?」

レヴァル「おう!空気の力を利用した地上波でも空中でも猛スピードで走り抜ける超最新鋭の車だ!」

ホライ「すごーい!」

ホライが目を輝かせてレヴァルを見つめ、レヴァルも腰に手を当てて鼻を高くしていた。

ヴィン「…そろそろいいか?」

レヴァル「あ、悪い悪い。それじゃあ早速乗り込んで欲しいところだけど、まずは君達の身体をチェックさせてもらうぜ」

ヴィン「各自手持ちの物を出しておけ」

レヴァルとヴィンに言われた通りに、全員は持っていたものを地面においてその場に直立立ちをして待機していた。


レヴァル「ん?針金に釘…なんだこりゃ?」

コール「ああ、それは俺のトレジャーハントグッズだけど…」

レヴァル「うーんそっか、危険なものだから預かっておくよ」

コール「マジかよ!?別にアンタらの国から何かを盗もうなんて考えてないぞ!」

レヴァル「念の為、な?マシストを出る時は全部返すからよ」

コール「うう…本当だろうな…」

レヴァルはコールから泥棒グッズを頂くと、次は隣にいたリーゼのチェックを始めた。

レヴァル「えーと…そこのお嬢ちゃんは…」

リーゼ「特に怪しいものは持っていませんが…」

レヴァル「お?可愛いぬいぐるみだなー!」

リーゼ「ああ、その子は…」

レヴァル「悪いけど念の為中身もチェックさせてもらうぜ?」

リーゼ「ま、待ってください!その子はぬいぐるみではありません!」

レヴァル「な、なんだって?」

ホイップ「わーはなしてはなしてー」

レヴァル「おわっ!?喋ったぞ!!」

ホイップはレヴァルの腕から抜け出してリーゼの胸元に飛びついた。

ホイップ「うーせなかひっぱられたー」

レヴァル「いやすまない、生きてるとは知らないで…」

リーゼ「こちらこそごめんなさい、でもこの子は悪い子ではないので…」

レヴァル「ああ、分かってる。見たところ何も持ってなさそうだし、それ以上チェックはしないさ」

リーゼはホイップを頭に乗せて、レヴァルの検査を再開した。

レヴァル「えっと…じゃあ次はその帽子を見せてくれないか?」

リーゼ「帽子ですか?」

リーゼは頭に乗っけていたホイップを一旦下ろして、レヴァルに帽子を渡した。

レヴァル「うーん…中には何も入っていないな…。よし、この帽子は返すぜ」

リーゼ「はい、ありがとうございます」

レヴァル(…にしてもあの帽子、どこかで見たことがあるんだよな…。気のせいか?)


レヴァルによる厳重なチェックはようやく終わり、一行は空飛ぶ車に乗り込んだ。

レヴァル「よし、全員入ったな?」

ヴィン「レヴァル、急いでいる訳では無いがなるべく早く頼む」

レヴァル「任せな。飛ばすからシートベルトをしっかり付けておけよ!」


レヴァルがエンジンを踏むと大きく空気が抜ける音と共に機体がふわりと浮かんだ。

ホライ「ロゼ!浮いてる浮いてる!!」

ロゼ「これはすごい…。鉄の塊がいとも簡単に…」

レヴァル「んじゃあマシストまで、出発進行!」


ホライ達を乗せた車は空高く飛び、想像を絶する速さで北の方角へ飛んで行った。

ホライ達が窓の景色を見ているうちに、空に浮かぶ都市が目の前に現れた。

ヴィン「見えたぞ、あれがマシストだ」

コール「あんなにでかい建物の塊が宙に浮いてやがる!?なんでもアリかよ!?」


車は巨大な都市へ吸い込まれるように進んで行った。

ホライ達が見ていた海や空は一瞬にして高層ビルが大量に立ち並ぶ未来都市へと姿を変えたのだった。

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HORIZON ポン @Poooooon

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