余談

ある車中の会話

「……なんで邪魔するの」


「アイツが震えていた」


「普段は全部どうでもいいみたいな反応のクセに、アイツの事になるとガチなんだね」


「アイツが恋愛的な事に苦痛を感じているのは解っているだろう?」


「……人の話をききなさいよ」


「……」


「わかってるわよ。だからギュッて……」


「逆効果だったな」


「……うるさいなぁ。好きなんだからいいでしょ」


「アイツの恋愛に対する恐怖は筋金入りだ。次に同じ事があったら耐えられないという予防線を無意識に張っている」


「筋金入りって?」


「過去に色々あったようだ」


「それはなんとなくわかるけど……もしかして、詳しく知ってるの?」


「男同士だからな。色々話す事もある」


「それズルイ……初耳なんだけど」


「恋愛に対して恐怖を持っているのに、男女関係なく人へのお節介を止められない。難儀な性格だ」


「そこまで知ってて、なんであたしを連れて行くのよ。あたしがちょっかい出すってわかってたでしょ?」


「お前とは協定を結んでいる。ショック療法でもある。ただ、過度は駄目だ」


「完全にあたしの事を利用してるんじゃない」


「そうだ」


「ヒド……。少しはためらいなさいよ、あたしだって友達でしょ?」


「だからこそだよ。同じ目的の協力者だ。それに、お前なら俺で止める事ができる」


「本当ヒドい……」


「そう思うなら俺の本性を伝えれば良い」


「……アイツを大事にしたいっていうのは知ってるから。あたしは暴走しちゃう時があるから、正直ちょっと助かってるし」


「……」


「で、さっきの、いつから見てたの?」


「声をかける少し前だ。あのまま上手く行くのなら止めないつもりでいた」


「デバガメ」


「なんとでも。アイツが幸せになれるなら良い」


「……キモい。ねぇ、アイツの事が好きなんでしょ? なのに男同士の友情みたいにしてるんでしょ? ズルくない?」


「恋愛と一緒にするな」


「なによそれ」


「俺はアイツが幸せなら良いんだ。お前が相手でもな」


「……なんでエラそうなの。やっぱりアイツが好きなだけじゃない」


「……そうだな」

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32歳童貞男の部屋で女子高生がパンツいっちょになる事から始まる物語 伊藤全 @zen_itou

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