Ep.53-2 深遠の対話
◆
「やあ、ずっと観ていたよ。色々あったみたいだけれど、ひとまずお疲れ様」
「君は誰だい?」
「君の夢のなかだからね、誰でも良いんじゃない?」
「ああそうか。言われてみればそうだね」
「うん」
「君が神様?」
「うん?」
「いや、ずっと思っていたんだけどさ、みかげとか僕のようにルールを侵犯する輩がいたらさ、世界が無茶苦茶になるでしょ。だから神様は別にいるのかなと思ってた」
「そんな理由?」
「違うのかい?」
「違うよー。面白いからだよ」
「そんな無責任な……。君はずっと見ていたんだろう? 僕たちの悪戦苦闘する様をさ」
「うん。面白かったよ。なかでも君の果たした役割はいっとう面白かった。ここまで物語を紡いできた甲斐があったというものだよ」
「こんなんが神……」
「別に私は神様じゃない。
あるときは一介の登場人物の一人に過ぎない。
またあるときは人ですらない無機物かもしれない。
さらにある時はあの少女に混じって客を取っていたのかもしれない。
ひょっとしたら君自身が夢の中で独りで会話しているだけなのかもしれない。
かもしれない、ばかりだろう?
可能性に満ちているからこそ世界は面白いのさ」
「今のは神様っぽいね。みかげよりも明るい感じがしていい。好感が持てるよ」
「ありがとう。誉め言葉として受け取っておくよ」
「そろそろ夢も冷めるころだ。多分僕はまだ、最後にやらなくちゃいけないことがあるみたいなんだ」
「それはいいね。是非、君の物語を最後まで見届けさせてくれよ。他にも観たい話や読みたい世界はあるけれど、君のが今一番気になっているんだ」
……神様も大変だね。数多の世界を見て、世界を調整して。僕たちのいる世界は、みかげが駆けまわっていた並行世界は、君の有する世界からすれば水たまりのような広さだったんだろう?
……。
……最後に名前を教えてくれないか。
……名前? はは、名前ね? よりにもよって私にそれを訊くかい? もう自分が誰かなんてことも忘れてしまったよ。遠い昔に人為的に集合的無意識やアカシックレコードにつなげられた記憶はぼんやりとあるけど。それはきっと別の物語のことだし。その世界に君や葉月やしぐれはいないだろうね。
……偽名でもいいから、教えて欲しいな。二度も奇跡を起こした、いや、これから起こすんだ。そのくらいの報酬はあってしかるべきだと思うけどな。
……
ああ、そうだったんだね。君が本当の……。
……。
世界を変えるのはいつだって周りと変わっている奴だ。
さあ。
真の勝者よ。
最後の願いを。
君は……どんな
…………。
☆
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