Ep.43-4 終わる日々Ⅳ

 8月24日 朱鷺山しぐれの手記より一部抜粋


 また、朝が来た。今日は私にはめずらしく朝早く起きられたのだけれど、体に力が入らない。まだ眠い。もっと寝ていたい。

 未だに現実感が伴わない状態でこれを書いている。


 今日か、明日か、もう決まってしまう。自分たちの運命も。世界の行く先も。

 何か、方法はないのだろうか。

 本当に 

 どうして

 こんな目にあわなければならないのだろうか。

 

 これならもっと彼とじっくり話すべきだったかもしれない。一つだけ後悔するはずだったのが、次から次へと悔やむべきことがあふれてくる(走り書き)


 わたしバカだ今まで必死におさえてきたものがこんなときになって、(以下数行、判読不能)


 気持ちを落ち着けるためコーヒーを二人分入れている。

 コーヒーメーカーの立てる音を聞きながらこれを書いている。ペンを動かして負ければどうにかなりそうだった。 


 もうあれこれと考えるのは良そう。心に浮かんだことを書き留めておこう。私程度が考えてもわかることは高が知れている。よけいに気が滅入るだけだ。 

 

 私は死ぬのは怖い。けれど人間はいつか必ず死ぬ。私や彼のそれが、今日だっただけの事だ。それだけのことなのだ。欲を言えばもう一度くらい、閉店してしまう前に駅前の洋食屋へ行きたかった。


 自分でもどうかと思うけれど、案外、死ぬ間際には、こういったさりげないことが一番後悔するのかもしれない。

 

 コーヒーが入った。

 飲んだけれどまるで味がしない。


 寝室へ彼を起こしにいき、

 食パンにジャムをぬったところで、


 玄関の方でチャイムが鳴った。


 いよいよだ。


 神様がやってきた(手記はここで途切れている)

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