extra interlude: 十三番目の悪魔

 静謐と喧騒とが織り交ざる常闇の揺り籠の中、は独り目覚めのときを待っていた。

 彼女はいわば、本来なら産まれる筈のなかった存在。偶然と運命に翻弄され、神の悪戯によって産み落とされようとしている偽りの悪魔、偽りの存在。十三人目イレギュラーを補うべく、帳尻合わせとして都合よく創られた、ひとつの悪魔のカタチ。

 ああ――。私は――――。

 彼女は名もなき悪魔だった。特に優れた能力を持つわけでもなければ、伝承としてその名を深く刻んだわけでもない。。これから完成する段階だった。

 自分のモノではない記憶が、次から次へと映像や音声として彼女の空っぽの頭の中に流れ込んでくる。彼女はそれをゆっくりと自分の中に汲み上げる。ただのひとつも、こぼさないように。たった少しでも、うしなわないように。

 たとえ自分のモノではない偽物の記憶だったとしても、自分がその記憶によって創り出されている実感が伴わなかったとしても、彼女には愛おしかった。それらは彼女を基底するかけがえのない贈り物だったのだから。


 落成の瞬間は不意に訪れた。彼女の体内に情報ちしきが満たされ、一個の悪魔として機能し始める。彼女は自分を作った人間へと思いを馳せる。

 きっとは、寂しかったのでしょうね――――。

 これは、一人の少女が見た甘く儚い一時のりそう

 目覚めの刻は、もうすぐ。



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