interlude: 長い夜の終わり、新たな始まり
気付けば、あてどなく道を歩いていた。自分の名前を思い出そうとして、何も浮かばないことに気付いた。自分がどんな顔をしているか、どんな境遇だったかの記憶さえ、綿あめのように溶けてしまった。僕は――何だ?
「やあ。久し振り」
声を掛けられた。視界がぼんやりとしているせいで、相手の相好も判らない。
「いやあ参っちゃったよ。まさかこんなイレギュラーが起こるなんて完全に予想外。どうしようか悩んだんだけどねえ、決めたよ。ボクは君を認めよう。君の存在を許そう。おめでとう、君は十三人目だ」
十三人目? 僕が? 一体なんのことだ?
「ま、本当はルール的に限りなくアウトに近いグレーなんだけども。君は面白いからね。面白いっていうのは、大事だろう? 少なくともボクはそう思ってる。それじゃあ、残り十一人、頑張ってね。応援してるよ!」
好き放題に話した後、相手はどこかへ消えてしまった。
どこか懐かしいその声を頼りに僕はまた道を
◇
「ちょっと、君大丈夫?」
突然、揺り起こされた。
「平気? 頭とか痛くない? 駄目だよ、こんなところで寝ちゃあ」
どうやら本気で心配されているらしかった。
「あたしは
きさらぎ? はづき? 変な名前だ。
「如月、
傍らの小さい人影がそう言った。
「あなたの名前は?」
鋭い頭痛。僕は……。僕の名前は……。
「あ……ま……ね……」
「アマネ? なんだか女の子っぽい名前ね。まあいっか。それじゃあ、ついてきて。うち案内するから」
彼女はそう言って、僕の手を引き歩き始めた。まだ頭の中の
/第一章 「三神麻里亜の五日間」――了
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