優しくできない
彼は影を引きずって歩く。私はそれを踏む。前に進めなくなった彼はのろのろと振り返り、私に気付いた。彼が私を見る。楽しい。私が笑うと、彼は困ったようにゆっくり二度首を振った。
「私のこと、嫌い?」
試しにそう聞いてみると、しばらく視線を泳がせた後、彼は小声で答えた。
「わからない」
「じゃあ、好き?」
「わからない」
今度は即答した。楽しい。
私の笑顔に顔をしかめて、ため息と一緒に、彼が聞き返した。
「俺のこと、嫌いなの?」
「大嫌い」
一度言葉を切る。
「でも、大好き」
それを聞いて彼は一歩下がろうとした。でも、私はまだ彼の影を踏んでいるから、彼は動けない。楽しい。
2013.02.28 01:02(Thu)
優しくできない 葉原あきよ @oakiyo
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます