ランドスケープ

 ごぼうの林を抜けると地面は白米に変わる。昨夜は暖かかったからきな粉が降ったようだ。輪切りのにんじんに腰かけると、どこからか沢山のトカゲが現れる。彼らは、私の前に縦に切ったさつまいもを置き、さらにその上に料理を並べた。一足早い春の花だ。

「特別にご用意しました」

 ひとりだけコック帽をかぶっているトカゲが微笑む。

「今日しかお出しできないメニューなんですよ」

 そっと手に取るとまだ温かい。良い香りが広がる。私も微笑む。

 レタスの開く音がここまで響いていた。


2013.02.02 19:34(Sat)

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