第59話
「なんで連れていってくれなかったの……?」
肉食蝿の調査に関する
丸子製作所の所長執務室。マルコに頼まれての調査ではなかったが、蝿蛙の
ディアスは読み書きくらいはできるし、ハンターの
これが部下の研究員であればマルコも
蝿蛙の意識が肉食蝿に乗っ取られているという発想は、マルコにとって不気味さよりもロマンを感じさせるものであった。前回同行したときに自分が気付くべきであったという、ちょっとした
この発想に
こんなことを言えば全力で否定されそうだが、蝿蛙の頭を鍋で煮ている写真さえ楽しそうに見える。仲良しグループのピクニックに一人だけ
写真に写った、
(それにしても、蝿蛙の頭を煮るという方法の発案者はカーディルくんであると、わざわざ書くところがディアスくんらしいというか……)
「それと前回大量発生した肉食蝿はほとんど居なくなっていたわけですが、こちらは原因不明のままです」
「ああ、そう。どこかに行っちゃったんじゃないの」
「どこか、って……」
あまりにも適当な返事に
「別にいい加減なことを言っているわけではないよ、言葉の通りさ。適当に散らばって、またどこかに卵を産み付けたり、犬型やアリ型などの小型ミュータントの
「そういうものですか……」
あまりにもスケールが大きすぎて、いまいちピンとこないディアスであった。
(結局、俺は自分の目を通してしか物を見れない、
とはいえ、ディアスは
(俺はカーディルとの生活が守れればそれで充分だ……)
それがディアスの
ふとマルコを見ると、彼はレポートを
「確かに蝿蛙の腹は大きいが、これだけの量の肉食蝿が詰め込まれるとなると、
これ以上ここに残っても邪魔になるだけだろう。蝿蛙の
一礼し、立ち去ろうとするディアスの背中にマルコの楽しげな声がかかる。
「それで、次はいつ蝿蛙の
マルコの脳内では
「え?行きませんよ。邪魔なので火炎放射器も取り外します」
ディアスにしてみればもうこりごりだ、といったところである。肉食蝿の大群は見たくもないないし、
(カーディルの義肢を通常のものに取り替えて手伝わせるようなことをしなくてよかった。自慢の黒髪に臭いが染み付いたりすればそれこそ一大事だ……)
犬蜘蛛や人馬の件もある。作業中にミュータントが乱入してこないとも限らないので、あの場面で戦車を行動不能にするなどあり得ないことだが、結果として劇臭を避けたか、意識してそうしたかでは違いがある。
これからも文字通りの汚れ役は自分が、場合によってはアイザックも巻き込んでやろうと、心の中で頷くディアスであった。
ちなみに遠征から戻った後で水を購入して風呂に入った。とはいえ、水は貴重品であるので本格的な
残った水で服を
「僕からの正式な依頼、ということであれば行ってくれるかい?」
「まあ、そういうことであれば……」
食い下がるマルコに対し、ディアスは気乗りはしないがといった調子で答える。
「しかし、今回の
「いいとも。ハンターオフィスとの連絡を
あまり良くはないが立場上、絶対に嫌だとは言い切れず、わかりましたと頷く他はなかった。
(こうなったら、こいつも
暗い楽しみを見いだしながら退室するディアスであった。
その後、蝿蛙がいた地方にはハンターたちもあまり
ようやくそれらしい話が入ったときはマルコ自身、何のことだか忘れていたという有り様であった。
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