第56話
もう少し近づきたいところだが、このミュータントは倒してからが本番だ。
蛙の食事は続いている。ディアスは主砲の発射装置に手をかけたまま、蝿蛙をじっと観察していた。最も食事に意識が集中する
(蛙のツラをこんなにじっくり
大きく息を吐き、止めた。
蛙の舌が伸びて、肉食蝿を
ミュータントの鋭い感覚が、砲弾を視界の
砲弾はその
体液と肉片を
抉れた腹から黒煙のごときものが漏れ出していた。肉食蝿だ。やはり体内に溜め込んでいるらしい。
(
一撃で倒せるなどと
ミュータント
一瞬だけ身を沈め、今度こそ大きく跳び上がる。
「うおっ!?」
思わずディアスの口から
速い、そして高い。事前に映像で見てはいたが、実際に
一度の
アイザックが苦戦したのもよくわかる。多少、距離を取ったところで大したアドバンテージにはならないのだろう。
(初見でこいつを倒せたのは、やるもんだなぁ……)
戦友の活躍に、心中で素直に
砲弾の装填が完了したことを確かめると、通信機のマイクを
「アイザック、次で
「了解、決めてくれよ!」
戦車から少し離れて、装甲車から降りたアイザックは大口径ライフルを構えた。あの日、一度も蝿蛙に当てることのできなかった銃だ。
蝿蛙が跳び、巨大な
蝿蛙の体を
ここまでは想定内である。予定通りではあるが、アイザックの顔には
避けられてもいいのだが、当てるつもりで撃った。
あれれぇ?当たっちゃったなぁ……などと言いながらへらへらと笑ってやりたかったのだが。
(まぁいい。見せ場は
数匹の肉食蝿が近づいてきた。それを
蝿蛙は空中で方向転換ができる。それは記録映像によって
数秒後に相手がどこに来るか、それを予測した
言うまでもなく戦車砲は飛び道具である。銃でも、矢でも、不思議なことに手応えを感じることがある。ディアスは撃った瞬間、命中と撃破を確信した。
砲弾のコースに、蝿蛙は吸い寄せられるように重なった。対ミュータント用徹甲弾はその身体に突き刺さり、空中で四散させた。
頭が、手足が手足が別々に大地へと叩きつけられた。だが、ディアスたちの視線はそこにはない。
空に形作られた黒い太陽。蠅蛙の
「あれが蛙を操っていたっていう説も、今なら信じられるわ……」
カーディルが呆れたように呟き、ディアスも黙って頷いた。寄生虫がどうとか、神経に
そして、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます