第50話
アイザックは巨大なバイクに
(こいつはいい……いけるぞ!)
義肢のパワーに満足しながら
スコープとレーダーを交互に見ながらじっと待つ。
レーダーの反応はさらに強くなり、やがてスコープにも異形の影を
荒野に似つかわしくない、ぬらぬらと光る巨大な
見たことはない。だが、酒場での
(
ハンターのなかにはそういった
酒場に行けば
また、敵の強さを
(
さて、その蝿蛙であるが、まだこちらに気付いていないようだ。たまたま近くに来ただけらしい。
ここでアイザックは1つの選択を迫られた。先制攻撃をするか、しないかだ。
今撃ってしまえば頭に当たるかもしれない。一撃で倒すことができなくとも、体のどこかに命中させればその後の戦いはかなり有利になるはずだ。
一方で、蝿蛙がこちらに気付かずそのままどこかへ去っていく可能性を考えると、わざわざ危険を呼び込むような真似は
プロとしての意識がアイザックに攻撃を
本音を言えば撃ちたい。中型ミュータントを討ち取って己の力を証明したい。
ディアスたちの力量は認めているし、恩もある。まだ短い付き合いではあるが、彼の
(戦車がなんだ、俺はバイクとライフル1丁でやってきたんだ……)
と、いった
アイザックの
(目があった……ッ!)
考える間もなく鋼鉄の指は引き金を絞り、ライフルから暴力の
強力な義肢が反動を抑え込み、弾丸は理想的なコースを突き進む。
最高の手応えだ。これでもらった。そう確信した瞬間、蝿蛙の姿がスコープから消えた。必殺の弾丸は虚しく後方の岩を
(どこだ、どこへ消えた!?)
スコープを覗いたままライフルを左右に振って探すが見つからない。目を離してレーダーを見やると、蝿蛙は右に10メートルほど離れた
(一瞬でそこまで移動したのか、だがどうやって?いや、そんなことはどうでもいい。岩に隠れているつもりなら好都合だ。この銃なら岩ごど
次こそはと放った追撃の
今度ははっきりと見えた。奴は
太陽に隠れるほどのすさまじい跳躍、そして
(いや、飛べよ!羽があるんだから!)
アイザックの
スコープを使わずともはっきりと見える距離にまで近づいた。数匹の
敵の姿が見え、危険が迫ったことで逆にアイザックは腹をくくり落ち着きを取り戻した。
再度の跳躍、これを待っていた。一気に距離を詰めての
「蛙は
太陽を直視する危険があるのでスコープは使わない。だが、この距離ならば命中させる自信があった。
空中で蝿蛙の体がすっとスライドし、弾丸はなんの成果もあげず空を切った。
「なんじゃそりゃあ!?」
ふざけるな、とでも言いたげに歯がみするアイザック。背中の羽は
酒場でこいつの名前は聞いた、外見の
ハンターにとってそうした情報は飯の種であり、ごく限られた上級のハンターにしか狩れない敵として難易度を上げて賞金を吊り上げる意味もあった。
(どう考えたっておかしいだろ……)
少し前まで、アイザックもそれは当然だと思っていた。最近はミュータントの脅威やハンターのあり方について考えることが多くなり、情報の
蝿蛙の跳躍、その巨体で押し潰そうとするのをアイザックは左手一本でハンドルを操り避ける。右手に構えたライフルで反撃するも、
(もっと引き付けなけりゃあな……ッ!)
この距離ならば、と引き金を引くが、同時に蝿蛙の長い舌がぶぉんと重い音を立てて
乾いた空気を引き裂く発射音。しかし、弾丸は蝿蛙の脳天ではなくあらぬ方向へ飛び去った。
アイザックの右手に舌が絡み付いているのだ。
「う、うおぉぉ!」
パワー比べにもならなかった。バイクは倒れ、アイザックはそのまま引きずられる。
まずは右手が口の中へ突っ込まれる。
突如、蝿蛙の後頭部が
「こいつが奥の手ってやつよ!」
太陽を背にして堂々と立つ者、アイザック。包帯の取れた漆黒の義手を高々と上げて勝利を宣言した。
ピクリ、とカエルの腹が
この時はまだ知らなかった。なぜ蠅の王、ベルゼブルなどといった
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