第48話
「それで、なんて答えたの?」
丸子製作所の
彼女の目の前にバラバラになった拳銃が置かれている。
慣れれば普通の腕よりもずっと
同じテーブルを挟んで向かいにディアスが座り、愛用のライフルを分解していた。組み立て、また分解と繰り返している。
当初、訓練はあやとりでもしようかと考えていた。これならヒモ一本を輪にするだけでできるし、二人で楽しみながらやれる。よいアイデアだと思っていたが、これはディアスが予想以上に不器用で相手を
カーディルはディアスの手元を見ながら疑問を抱いていた。流れるような実に見事な動きである。何故、この器用さが銃器にしか
「
手を止めずにディアスは答えた。そうだろう、とばかりにカーディルも頷く。
四肢を失い戦車と一体化して戦う美女、それが世間からどういう眼で見られるかよく理解しているつもりだ。
「君はどうだ、
「ご冗談を。あなただけのアイドルでいられればそれでいいわ」
「そりゃどうも。ひとめ見たときからファンだったよ」
組み立てを続けながら笑う二人であった。
気持ちが通じ理解しあうことは
一方で、ここだけの関係に満足して、他人と理解を深めようという
「まあ、映画を撮ること自体は悪くないんだ。そもそも映画という言い方が悪い。ドラマチックなストーリー仕立てというわけではなく、ミュータントの
「ドキュメンタリーってわけね」
「そういうこと。で、次の仕事は俺たちとアイザックの合同でミュータントを狩る。丸子製作所の装甲トラックも
「合同はいいんだけどさ。アイザックの足はあのでかいバイクでしょう?あいつは顔出しすることになるけどいいのかしら?」
「むしろ張り切っていたよ。お前らがツラを出さないなら俺が主役ってことでいいな、って」
「タイトルは怪獣大決戦?ゴリラ対ミュータント?」
「少なくとも、内容はそうなるだろうな」
ひとしきり笑った後、ディアスはいつの間にやら組みあがったライフルを手に取り、立ち上がって
「記録映像を撮る、中央の連中にミュータントの脅威を知らしめるという点については俺も
カーディルのなかで良識、という言葉とマルコの顔がいまいち
それにしても憎いのは議会の
「豚どもめ……ッ!」
ミュータントの恐ろしさは、それこそ身に染みて理解しているカーディルである。また、つい先日はディアスがあわや殺されるところであった。
それを防衛の責任者たちが、大したことはないなどと認識しているのだ。安全な場所で
「分厚い
「だから、
「それはいいけど……」
「ん?」
「マッドサイエンティストとその一味、男のロマンを求める鉄腕ゴリラ、それと私たち。今回の撮影、このメンバーで何事もなく終ると思う?」
「はっはっは、それはもう……」
ディアスはわざとらしく笑いながら立ちあがり、カーディルの後ろに回ってその白い肩に優しく手を置いた。目だけが、笑っていない。
「無事に終わるわけないだろ」
「そうよねぇ……」
初めての共同作戦、初めての撮影。
何もかもが不安に包まれていた。
他人事のような顔をしているが、この二人も怪しい連中にカテゴライズされてしかるべきであろう。
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