第45話
戦車の
先日、
ここで手術を受けたのだろう。右腕は切り詰められ、肩から義肢接続用ユニットが見える。もっとも、まだ義手は付けられていないようだ。
「よう、ディアス!色々と世話になったな!」
アイザックが左腕を上げて
相変わらず顔色は
どうやらマルコとカタログを広げて何事かを話し合っていたらしい。もっとも、この状況でカタログを見る用件などひとつしかないだろう。
マルコが
「今回の支払いです」
「うん、
クレジットを数えて、
「そういえば、一体は頭がミートソースになっていたが、あれで賞金はもらえたのか?」
当時の様子を思い出しながらアイザックが聞いた。彼も中型ミュータントを狩る
ディアスは
「とりあえず一体は普通に頭部を提出して換金。もう一体の潰れたほうは耳などの
「うへぇ……そんだけやって半分だけかい」
何も言わず、ディアスは肩をすくめてみせた。
その
「怒ってないのかい、戦車の
「怒る?……何で?」
何を言われているのかわからない、といった顔をされてしまった。
何でと言われてしまってはアイザックも
そこでようやく、人馬の頭を潰した件のことだと気付いてディアスは
「ああ……」
と、少々間の抜けた声で
「彼女が怒ったは俺のためだ。
ところどころ主語が抜け落ちたような物言いであり、やはりアイザックにはいまいち理解できない。
ディアスはちらと己の右足を見る。長ズボンとブーツに隠れたそこには、
これはカーディルが巻いたものである。
ぎこちない手つきで、時間をかけて巻き終えた後、
「あまり、危ない真似はしないでね」
「そうは言っても、ミュータント討伐をやっているのだから、どうしたって絶体安全とはいかないだろう?」
カーディルはゆっくりと首を振った。そういうことじゃない、という意味だろうか。今にも
「
その言葉にディアスは、はっと顔を上げる。言われて初めて気が付いた、そして理解した。カーディルの深い怒りと悲しみの意味と、己の
もしも人馬に掴まれたとき、カーディルが戦車で体当たりしてくれなかったら、あるいは
地面に叩きつけられ、武器もなくあちこちの骨も
そしてミュータントに連れ去られた人間がその後、いかなる
彼女は誰よりも事の
「ありがとう、カーディル」
ディアスはカーディルの身を抱き寄せ、
カーディルにしてみれば、ディアスがどういった反応をするのか、怒られることはあるまいと思っていたが、こうも真っ直ぐに礼を言われるのも
「私たち、いいコンビよね……?」
「ああ、最高のパートナーだ」
過去に思いを
「では、これで失礼します」
話は終わった、そういった空気を感じとり、ディアスが一礼して立ち去ろうとすると、その背にマルコから声がかかる。
「ちょっと待った。これ、約束したボーナス」
そういって、クレジットの入った革袋を投げて
つい先程、ディアスが借金の返済分として渡したものだ。既に
ディアスはしばし革袋を
「アイザック、あんたの取り分だ」
残った革袋を改めてアイザックに向けて放り投げた。
右肩を前に出し、そこで右腕が無いことに気付いて
革袋を通してもわかる、大量のクレジットの形と重さに、アイザックは少々困惑していた。
「おいおい、俺は呼ばれてもいないのに顔出してちょっと撃っただけだぜ?分け前をくれるのはありがてえが、こりゃちょいと多すぎやしないかい?いや、くれるってぇならもらうけど」
「それぞれ
それに……と、続けて机の上のカタログを見て、いたずらっぽく笑ってみせた。
「これから金は必要になるだろう?」
そういって、手をひらひらと振りながら部屋を後にした。残されたアイザックとマルコは顔を見合わせ、苦笑する。
「なんともおかしな野郎だ。いかにも
革袋を上に放り、また左手でキャッチするということを
「ある程度の事情を知っている身から言わせてもらうとね、彼がいつもカーディルくんのことを考えていることは、彼の男らしさを否定するものではないと思うよ」
「その、カーディルってえのがあいつの女の名前かい。で、いい女か?」
「一人の男を狂わせるくらいにね」
「なるほど、わかりやすい」
革袋を置いて、カタログを慣れぬ左手でゆっくりとめくる。ずらりと並んだ男性用サイズの義手。それを選ぶためにここへ来たのだ。
「どれにするか、決まったかい?」
「通常の義手か、武器を
ううむ、と
「
アイザックが指差した先は
マルコから始まった
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