第44話
アイザックと呼んでくれ。男はそういった。
腕はどうしたのかと聞くと、
ディアスは、どうしてここで戦っているとわかったのかと聞こうとして、すぐに間の抜けた質問だと気付いてやめた。
これ以上無いくらいわかりやすい
「やられっぱなしってのは気に入らなくてな、つい追いかけて来ちまった。で、
「残念ながら俺もあんたも正気だよ。一体目を倒した直後に
「ああ、するってえと何かい?俺の腕を潰した奴と、俺が弾をくれてやった奴は、まったくの
「そういうことになる」
「オゥ………ジーザス」
腕を潰した相手に
ディアスにもその気持ちはよくわかる。カーディルの手足を喰らったミュータントは結局、自分の手で倒したわけではなく、他人の
その後、
「わかる……」
「そうか、わかってくれるか」
聞くは
「ところでひとつ、頼みがあるんだが……」
言い出すタイミングを
「なんだろうか」
「痛み止めがあったら分けてくれないか」
アイザックの顔が青白いのは、照明弾に照らされたからだけではないだろう。腕が取れて骨が
傷口からぽたり、ぽたりと骨を伝って血が
ディアスは今までそこに気付かなかったことを
「痛むのかい」
言いながら、
「正確にはこれから痛みだしそうってところだな。何かがじわじわ上がってきて、もうすぐ痛み止めが切れそうなのがわかるっていうかなぁ……」
「なるほど、そいつは怖い」
注射器を
「もう終わったよ」
「え?」
腕を見ると、確かに注射針の
会話に意識を向けている間にさっさと注射して、痛みも不安もなく済ませるテクニックだ。
「ほぅ、ほほぅ……やけに
アイザックは本気で感心したようにいった。
「まあ、色々あってな……」
色々あった、とはハンターの用語で、これ以上聞くなという意味に等しい。
まだカーディルの精神が安定していなかったころ、夜中にうなされる彼女に
「傷口の
「
ちらと失くした腕を見る。ここへは
(そうか、俺の腕は無くなっちまったんだな……)
命が助かるとわかってから、急に
なればこそ、親身になって相談に乗ってくれる存在がありがたい。素早く戦車によじ登るディアスの背に向けて、彼の
ハッチを開けて車内に
「あぁ良かったディアス、無事だったのね」
と、カーディルの明るい声が
そこに人馬の頭を
「無事、って。外の様子はカメラで見えるだろう?」
「そうだけど。カメラで見るのと、実際に会うのは違うの」
「そういうものか」
「そういうものよ。ミュータントの
「他人に
文句があるわけではなく、ちょっと
「それでもさ、もうちょっと私に
「
「うーん、ごもっとも」
そういって笑いあう二人。車内に
ディアスは物入れから凍結スプレーを取り出し、カーディルの
ズキリ、と右足首に鋭い痛みが走る。人馬に
「ディアス、どうしたの?」
物入れに足を乗せたまま動かぬディアスを
足の痛みも治まらぬまま、ディアスは振り返ってぎこちない笑みを向けた。
「いや、なんでもないよ。行って、すぐ帰ってくる」
そういって、逃げるように出ていった。
またひとり、戦車の中に残されたカーディルはため息をついて呟いた。
「気付かないわけ、ないでしょうが……」
止まれといって止まる男ではない。カーディル自身、ディアスの
大切な人、世話になった人の為に全力で行動できる、それは彼の
(そこは私がしっかりしないと。よし、彼の傷が治るまで仕事は取らせない。マルコ博士にだってビシッと言ってやるわ……)
決意を固めながら外部カメラを回す。音声は拾えないが、
(それは!あたしのオトコだから!いつまでも
カーディルの
ハンターの関係など、困ったときにちょっと手を貸すくらいでちょうどいい。
これでようやく帰れる。安心してディアスの帰りを待つが、なかなか戻ってこない。見ると、彼は人馬の首を切り落とす作業にかかっていた。
(忘れてた、そういえばそれがあったかぁ……)
結局、
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