第43話
(この状況でカーディルが何もしないわけがない。敵の
腰を落として、どの方向にもすぐに走れる
激しく首を振り、よだれを
ぎりぎりまで引き付けて、
成功だ。そう思った瞬間、足首に
敵はただの
(このまま
視界が激しく揺れ動く。
人馬の
人馬が
空中で放り出され、大地に受け身をとるディアス。足首が痛むが気にしている余裕はない。自分が今やるべきことは何か、視線を左右に走らせライフルを探した。
「このままくたばりやがれぇ!」
よろめく人馬にカーディルは
人馬は避けようともしなかった。それどころか、正面から受けてたち、両手で正面装甲を掴んで戦車の突撃を押さえ込んだのだった。
「うそぉ!?」
カーディルが
人馬は巨大な歯をむき出しにして食いしばり、手足に
いや、それどころか
(まさか、このままひっくり返すつもり……?)
「やらせるか、この……ッ!」
慌てて砲塔を旋回させてみたりもしたが当然、何ら意味はない。
二本足で立ち、今まさに戦車をひっくり返して無力化させんとする人馬に、ライフルを拾い上げたディアスが
戦車を
ディアスの位置からでは、人馬の頭部は戦車を持ち上げる腕に
ならば、とディアスは人馬の右腕に向けて次々と撃ち放った。肉が
(奴も優先順位ってやつを理解しているということか。今まで倒してきたミュータントどもは、わりとすぐに
戦車が倒されるのが先か、人馬の右腕が
人馬も相当に苦しいのだろう、泡を吹きながら戦車を支えている。だが、倒れない。露出した骨が予想外に硬く、腕を完全に破壊するまでに至らないのだ。
突然、人馬の左足の肉が弾けた。何事だ、と疑問が
人馬の巨大がぐらりと揺れる。状況はよくわからないが、とにかく
腕、足、そして
手足のみならず、胸や腹も骨が
「終わった、のか……?」
数多くのミュータントと戦ってきたディアスでさえ、こいつは
もう戦う力があるはずもない。それでも立ち上がってくるのではないかという不安に
履帯が逆回転し、人馬の皮を
そしてまた、前進。
何をする気だ、とディアスが止める間もなく、戦車が人馬の頭部へと乗り上げた。
(こいつはディアスを殺そうとした!ぶち殺してやる、
その姿は
がくり、と戦車が一段落ちる感覚。頭部が完全に破壊され、履帯が大地に接したようだ。
ほっと一息つくカーディルの
やるべき
ディアスはライフルからスコープを取り外し、正面へと向けて
切り取られた円のなかに、バイクに
右腕の
その男もこちらの様子を探っていたようで、左手で双眼鏡を掴んで覗いていた。こちらに気付くと、双眼鏡を持ったまま手を振って見せる。
どこかで見たような気がするが、思い出せない。そもそも丸子製作所の関係者以外に知り合いらしい知り合いもいないので、
結果、
男は大型ライフルを背に回し、左腕一本で器用にバイクを
できれば到着する前に思い出したい。まだ敵か味方かはっきりしないという意味では
顔は思い出せないが、あの
少し離れた所にバイクを置いて、
「よう、あんたがあの戦車の持ち主かい。さっきは助かったぜ。あんたがいなけりゃ俺は今ごろ馬の
言いながら、男は左手を差し出す。ディアスは一瞬、何のつもりだか理解できなかった。ハンターにとって腕を預けることは自殺行為であり、
それでもなお
しかもこの男には右手が無いのだ。初対面の男に腕を預けようなどと、
ディアスは
(うーん……よし、三番だな)
右手を出しかけて、
「あんたがいなけりゃ今ごろ戦車は破壊されて、俺はなぶり殺しにされていたかもしれん。助かったよ」
男同士が不器用な笑顔を浮かべ、照明弾に照らされた夜空の下で堅い握手を交わした。
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