第37話
翌日、工場を
ディアスとカーディルはその
(どうせすぐ来ると思っていたよ。ディアスくんがカーディルくんの事で
と、いうことであり、手品を見せられたような顔をされてはかえって
「手にとって見てもよろしいでしょうか?」
ディアスが一応、
「いいとも。そのまま
腕をひとつ、持ち上げてみた。本物の腕に比べなんら
「こうして机の上に並べているとバラバラ死体のようだねぇ」
と、
「
「本当に
ソファーに座ったカーディルは不安げにいった。
「こいつは夢じゃない、確かな現実だ。
マルコが何かを言いたそうにしているのを、ディアスは目で
(事実がどうか、なんてどうでもいい。ロマンティック
視線だけで気持ちが伝わったわけでもあるまいが、とにかくその
まだ
丸子製作所の義肢と接続ユニットは
古い義肢を外し、新型の義足をまず一本取り付けたとき、カーディルは意外そうな顔をしていた。
「あれ、あんまり痛くない」
今までは神経接続の
二人揃ってマルコに視線を向けると、彼は
「接続がスムーズにいっているということだね。
生活するなかで、苦痛を感じる部分が無くなるのは実にありがたい。
これはいいものだ。ディアスは
四肢の取り付けが終ると、カーディルは
5年前は自分の手足があった。そのときと比べてどうかと考えたが、もう思い出すこともできなかった。
ハッキリしていることはただひとつ。自分は今、全てを取り戻したということだ。カーディルは義手を広げて顔を
「わ、私、今まで……こうして泣くこともできなかった……ッ」
ディアスはカーディルの隣に座り、その肩を強く抱き寄せた。
「ありがとう……」
一言だけ呟き、しばらく
やがて、カーディルの右手が何かを求めるように動く。この状況で必要なものは何か。ディアスは
正解だったようだ。カーディルは涙を拭い、ハンカチを広げて盛大に、ぶびぃと音をたてて鼻をかんだ。こういうところが実にカーディルだと、ディアスは怒るよりも微笑ましく見守っていた。
もっとも、マルコからすれば
(こいつ、なんでハンカチに鼻水ぶち
と、理解しがたい二人の心理であった。
その後、契約書にサインをして義肢は正式にカーディルのものとなった。
古い義肢を専用のケースに入れ、立ち上がる。カーディルも目は少し赤いままだが、その立ち
「本日はありがとうございました。ミュータント狩りの方針などについて、また
ディアスとカーディルは
義肢ケースのベルトがディアスの肩に食い込んでいるのを見て、マルコは
「君は本当に、色んな重荷を背負っているねぇ……」
左肩に義肢ケース。右腕はカーディルにがっちりと確保されている。
「楽しいことなら、苦にならぬものです」
ディアスは迷いなく言い放ち、部屋を後にした。
二人が去ったあとのドアを、マルコはしばらく
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