第22話
外に出よう、その
愛する者に
覚悟は決まっている。それなりに満足もしている。今さら悪あがきをしようというのは、余計なことでしかなかった。
「もう、いいじゃない。私はここであなたと一緒に死にたいのよ……」
「俺は君と一緒に生きたいのだ」
何事につけてもカーディルに甘いディアスも、今回は引き下がらなかった。
「君にとっては
そういってディアスに
カーディルを救うための行動だが、それを
(ああ、もうどうしようもないくらい私はこのひとが好きなんだなぁ。
左手を伸ばし、ディアスの手を握って優しく微笑む。それだけで意思の
病院からこの部屋に向かったときと同じように、カーディルを
あまり
雑誌から
数日の間、飯も食わず水しか飲んでいない状況で、
(これでも、
最近すっかり
横顔が
相変わらず道行く人々から注目されるが、心なしかその視線に
工場から出てきた研究者ふうの男を呼び止め、マルコ博士に面会したい
案内された応接室に入り、カーディルを革張りのソファーに座らせ、ディアスも隣に腰を下ろした。
予想以上に尻が沈む。ディアスの部屋の安いベッドとは大違いだ。こういった何気ないところから貧富の差を感じて、尻以上に心が沈む。
急な訪問にも関わらず、マルコは5分と
しかしあのときとは違い、顔に薄笑いが浮かんでいない。あまり
「やあ、久しぶり。君のことは覚えているよディアスくん。それで今日はどんな要件かな」
「彼女に義肢をつけていただきたいのです」
「ふぅん、金は?」
「ありません」
マルコは大きく、そして少しわざとらしく息を吐き出した。呼ばれたときからある
「ディアスくん、僕は確かに君に対して多少の好意は抱いていたさ。今、全部消え去ったがね。自分は
マルコの道ばたの
「そっちのカーディルくんに無料で義肢を与えたとしよう。それで、その先はどうなる?同じようにただで
同じような話は何度もしてきた。後悔もしてきた、裏切られたこともある。
一度は好感を抱いた男に対してこんなつまらない話をしなければならないことに、
「僕は、
だが、目の前の男は
こいつはひとの話を聞いているのだろうかと、マルコは
(お話はわかりました、それはそうとして義肢を下さい……などと言い出したらどうしてくれようか)
スイッチが切り替わるように苛立ちが怒りに
「
「へえ?」
「俺の命です」
何を言い出すんだこいつは。マルコとカーディルが同じような
止めようとするカーディルを手で
「博士が何らかの人体実験を行い、その
ディアスの
マルコはここで笑って追い返すか、
「ディアスくん。君は今、悪魔と契約しようとしているのかもしれないよ?」
「天使は俺たちに、何もしてはくれませんでした」
その答えが気に入ったのか、マルコは笑って頷いた。いままでとは
「いいとも、中古の
「ありがとうございます!」
デスクに
カーディルが自分で動けるようになれば気晴らしもできるだろう。義肢の動作に慣れれば一緒に狩りにも行けるかもしれない。
これからどんな条件を出されるかわかったものではないので
「それで、協力して欲しい実験なんだけどさ」
「あ、はい」
頭を上げるとマルコの笑顔、その瞳の奥に狂気の光が宿っているように見えた。病院で感じた悪寒が
だが、それでいい。狂人であればこそ、こんな話に乗ってくれたのだ。
しかしディアスはマルコの顔を
この瞳は、自分を見ていない。
マルコの
「君ではなく、
ついさきほど忠告されたばかりではないか。
これは、悪魔との契約であると……。
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