第11話
ロープでくくりつけてあるものの、落ちそうで心配なのか。あるいは別の不安に
「ねぇ……」
カーディルが
「どうしてこんなことしたの?」
どう答えたものかと考えたが、とっさに上手い言葉が出てこない。犬蜘蛛の
カーディルの救出を名目にあわよくば格好つけて死のうと思っていたら、予想以上にひどいことになっていて、とても放っておけなくなった。
「色々あって引っ込みがつかなくなったのさ」
「なによそれ、意味がわからないわ」
「
納得はしていないだろうが、それ以上の
太陽が二人の頭上に
できれば
また、他にも時間をかけたくない理由がある。
カーディルは今まで1度も痛みを
ディアスはこれを、犬蜘蛛の
時間が経つにつれ毒が薄れ、突如として激痛が襲ってくれば、カーディルの
さらに手足の切断面を
ありとあらゆる条件が、ディアスに早く進めと追いたてる。
もう、汗も出ない。吐き気がする、視界が歪む。
本当にどうということはない、地面の小さなひび割れに
立ち上がることができない。
体力はすでに
数十秒か、数分か、時間の感覚もわからぬまま
「もう、いいよ……」
背後から甘く
「ここで一緒に死のう。来てくれただけでも、一緒にいてくれるだけでも嬉しいから……」
そういって、ディアスの首筋に乾いた唇を
甘美な死の
だが、彼は立ち上がった。
蜘蛛の巣で食われるにせよ、荒野で干からびるにせよ、それは彼女に
「いい女は、男をやる気にさせるのが上手いものだな……」
体力はとうに限界を迎えた。彼を歩ませるものはただ、
(男が無茶をするのは、いつだって女の前で格好つけるためさ。そうさ、何も間違っちゃいない……)
我ながらあまりの馬鹿さ
カーディルにはディアスが
すぐに考えることを止めた。正気だろうが狂っていようが、何ができるというわけでもない。
今はただ、彼の大きな背中に身を任せよう。そう思い目を閉じて、すぐに気を失った。このまま二度と目を覚まさぬことを願いながら。
数時間後、彼らは街に
その間の記憶はひどく
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