砂狼の回顧録
第6話
5年前、ディアスとカーディルの他に6人の仲間がいた。ひとつふたつの差はあれど、ほぼ同じ世代の少年少女たちであった。
当時は戦車など持ってはいなかった。ライフル、マシンガン、火炎放射機など、それぞれ
カーディルはその美しさと、
仕事はこなしている。腕も悪くない。だが、人の輪から外れた者は
彼よりもずっと腕の
こうなるとチームを離れてよそに行くのが
口下手なので
いつものように、チームから離れる機会はないかと頭の
その頭も
高さ2メートルほどの、蜘蛛と犬の
「うわああああ!」
残った者たちは叫びながら、それぞれが手にした武器を狙いもつけずに乱射した。腹に蜘蛛の足が刺さったままの男が
最後の呪いの言葉を誰も耳にしていない。いや、たとえ聞いていたとしてもこの
銃弾の雨などお構いなしに、犬蜘蛛はさらに突撃し、カーディルの足に牙を突き立て持ち上げた。
仲間たちは
彼らの心情など、どうでもいいとばかりに犬蜘蛛はまた、現れた時と同じようにすさまじい速さで去っていった。わずか十数秒の間に起きた
つい先程まで狂暴なミュータントがいたことなど信じられないような
恐怖にで顔をひきつらせる者がいた。自分は助かったと薄暗い笑みを浮かべる者がいた。誰もが言葉を発することなく、その場を動けずにいた。
そんな中、ディアスは唇を
「おい、どこへ行くんだ」
後ろから声をかけられるが、答えない。ただ前だけを
「何をしているんだって聞いているだろうが!」
乱暴に肩を
肩を掴んだ男は先程の恐怖のために腰が抜けていたのか、勢い余ってどすんと尻もちをついた。
「邪魔をするな」
どれも正論である。カーディルの命に余裕があり、こいつらが負け犬の目をしていなければの話だが。
「いつからてめえはそんなに
わざわざ小走りに寄ってきて、すぐ横を歩く男が
それはこっちの
ディアスが鼻で笑うと、男の怒りが頂点に達したか、腰の
血が噴き出し、糸が切れたように男はその場でがくりと
残された仲間たちはそれぞれが辺りを見回したり、腰を浮かそうとしたりと、何か行動を起こそうとしていたのだろうが、結局は何もできぬままディアスの背を見失った。
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