第4話
酒場を
カウンターの中で汚れてもいないグラスをつまらなさそうな顔で
「キラーエイプの首だ。賞金をくれ」
マスターはディアスを
「賞金をよこせ」
ディアスがクーラーボックスを相手に向けて開けてみせる。巨大猿の頭が表れ、
クーラーボックスとはいっても、氷は入れておらずただ密閉するために使っているだけなので、この
悪臭に慣れきったはずの賞金稼ぎたちが
「聞こえている、そういうことするんじゃねえよ」
「聞いているなら反応しろ、己の職務を果たせ」
マスターは答えない。ただ不機嫌な顔にさらにシワを寄せるのみであった。奥の手金庫から数センチ大の長方形のプラスチックケースをいくつか取り出し、カウンターに叩きつけた。
透明なケースの中にはさらに小さな長方形の金が入っていた。
国家、政府が機能していない状態で
信用されるものは塩と金とダイヤモンドくらいのものだが、塩で買い物となると大量に用意しなければならないのが難点である。普段の買い物に行くだけでもカバンいっぱいに塩を詰め、大きな取引の度に塩のコンテナを用意しなければならないならないのでは、やはり通貨として適当ではない。
ダイヤは流通量が少なく、純度、大きさにもバラつきがあるので価値の統一が難しい。
こうして価値の高さと加工のしやすさで金が通貨として選ばれたのだが、砂金では交換しているうちに目減りする恐れがあり、むき出しの小粒や金属片では
その、カウンターに置かれた数個のクレジットであるが、ディアスはただじっと
「おい、足りないぞ」
またもマスターは
相手を無視していれば精神的に
ライフル肩から下ろし、片手で持ってマスターの背中に突きつけた。
「金を出せ」
マスターは
「てめえ、正気か?」
「この街に正気の奴がいるとでも思うのか?」
ハンターは街をミュータントから守り、この砂と岩の世界に人類の居場所を確保する
だが、ディアスは非難される
「俺はただ、賞金を正しく払ってくれと言っているだけなんだ。何かを間違っているかい?」
マスターは答えず、せめてもの抗議とばかりに顔いっぱいに不機嫌さを浮かべるが、ディアスにしてみれば賞金をねこばばしようとした奴のご機嫌などを取ってやる義理はない。
銃口こそ下ろしたものの、射抜くような視線がマスターの手元を追っていた。
やがてカウンターの上に追加でクレジットが置かれる。ディアスは目で数えると、間違いのないことを確認し、
「あまり、つまらん嫌がらせをしないでもらいたいな。ハンターオフィスの
ひとこと釘を刺してから、ディアスは
その背を睨みながらマスターは
「ちっ、ダルマのヒモが
その言葉が終わるか終わらないかといった瞬間、風を斬り
何が起こったのか理解できない。恐怖で
腰が抜けてその場にへたりこむマスター。ディアスはその姿をしばらくつまらなさそうに見ていると、やがてふんと鼻をならして、今度こそ振り返らずに出ていった。
カウンターの内側は安酒と小便まみれで掃除が大変だろうが、それはディアスの知ったことではない。
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