第2話
改めてライフルを
戦車の外部装甲も肉が焼けるほどに温まっており、分厚い手袋ごしにも熱が伝わってきた。これはたまらんとばかりに
猿の
だが、ここから油断できないのがミュータントだ。首がもげても心臓が止まっても、しばらくは動き出す生き物は存在する。こうした体勢から油断をして命を落とした者を
死者を
さらに数十秒、様子を見る。この地方特有の
手で蠅を追い払おうと振ってみたがまったくの無意味なので
猿の見開かれた目にそっと指先を
血が、肉が、真っ直ぐ線を描いて飛び散る。少しずつ筋肉繊維を切り離し、頭と首が切り離されてゆく。こうした作業に慣れているのか
一連の流れをカーディルは再度、外部カメラと視覚を連動して見ていた。その表情にわずかな
飛び回る肉食蝿に生理的な嫌悪がある。それ以上に彼女は全てのミュータントを憎悪していた。
死力を尽くし戦った相手は敵であろうと敬意を示す、それはきっと彼の美点なのだろう。だが、できればパートナーには同じ方向を向いていて欲しかった。未来も、愛情も、そして悪意すらも。
愛する男への想いのなかに、そんな暗いノイズが混ざっていることを自覚し
生きたまま手足を食われ、
唇を
ディアスだ。ミュータントではない。
「ディアス……おかえりなさい」
「うん、ただいま。……って、少し出ていただけだろう」
先ほどまでミュータントの首を切り落としていたとは思えぬ優し気な声を出し、攻撃的な太陽から逃げるように車内へ滑り込んだ。重たくなったクーラーボックスを車内に放り込む。
十数分外に出ていただけで全身が汗みずくである。カーディルが車内冷房を強くすると、ディアスは笑顔で振り向いて「ありがとう」と、礼をいった。
それだけで、少しだけ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます