鉄錆びの女王機兵
荻原 数馬
鋼鉄の玉座
第1話
まるで生命の存在を許さぬとばかりに激しく
切り立った
戦車の
乗員は二人の男女。前方に座る男は
後方に
まず、両手がない。肩から先に腕はなく、代わりに腕と同じくらいのチューブが
両足もない。
顔の上半分を
「ディアス、上から来るわ!」
突如、女が電流が走ったかのように身を
発見した。岩山の上に3メートルはあろうかという巨大な猿が、やや猫背で立っている。すでに数発、有効打を与えていた。全身は血に染まり、左腕は千切れ飛んでいる。口からは白とも赤ともつかぬ泡を吹いていた。
だが戦意が落ちるどころか、目は憎しみに
逃げるつもりはない、血よりも濃い
「いいとも、とことんやろうじゃないか……」
ディアスの
「カーディル!」
「了解ッ!」
戦車と同化した女、カーディルに繋がるチューブに無数の小さな光球が浮かびあがり、
一瞬遅れて、先ほどまで戦車があった場所に猿の巨体が叩きつけられる。
あれをまともに食らっていたらどうなっていたのか。カーディルの額から
猿は
ディアスたちも、それをただ黙って見ていたわけではない。
息を深く吐き、止める。引き金を握る手に、じわりと汗が浮かんた。
巨大猿が泡とよだれを
砲弾は巨大猿の胸に吸い込まれるかのようにめり込み、その先端が背中から飛び出した。声にならない声をあげ、猿は地響きをたてて目を見開いたまま
「生身の生き物が徹甲弾なんか食らったら、もっとこう血と肉をドバーッと撒き散らして、弾も貫通するはずでしょう? 仕止めたとはいえ、なんで普通に刺さったままなのよ」
カーディルが
「みっしり詰まった筋肉とはそういうものだ」
答えになっていない答えを返しながら、ディアスは戦車内の物入れから色々と取り出した。
ライフル、クーラーボックス、チェーンソー。これらをハッチを開けて外に出し、
カーディルが着けている大型ゴーグルのアイシールドが自動ではねあがる。
ディアスはその大きな手でカーディルの
「それじゃあ、行ってくる」
「身動きの取れない女にそういうことするの、どうかと思うけど」
同じように少し恥ずかしげな顔のカーディルが唇を
「腕があったら突き飛ばしていたか?」
「抱き寄せていたわ」
視線を
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