第10話

「わあ! すっごくおいしいんだよね、このお菓子!」

「これが社員は、お手軽価格で買えるんだよー」

「ありがと~!」

「お茶淹れるわね~」

「あ、ありがとうございます」


 ママさんは、キッチンへ移動した。ルミカとルナちゃんと私は、リビングにいる。


「それにしても、毛多いね~」

「うん、ボーボー」

「赤ちゃんって、もっと髪の毛が増えるのゆっくりだと思っていたよ」

「うんうん」


 ルナちゃんを愛しそうに抱っこするルミカは、もう立派な母親オーラを放っている。

 まあ、そんなこと本人には口に出して言わないけれど。


「あとさ、」

「何?」

「ルナちゃんの名前、感じだと間違われないの? 読み方」

「うん。多いよ、間違われるの」


 瑠和。「ルワ」ではない。「ルナ」だ。


「でも『和』って、きちんと『ナ』と読めるよ。電子辞書で調べたもん」

「珍しいけどね~」

「それでも私は『和』を入れたかった。読み方も『ナ』にしたかった。だってナギちゃんから取った字だから!」


 ルミカは、ルナちゃんを産むことを許されたそのときから、生まれた子には絶対に『和』を入れようと決めていたらしい。


「ナギちゃんは私たちにとって、大きな存在だもん! ねー、ルナ」


 ルナちゃんを見ながら、ルミカは言う。


「そうかな~」

「ナギちゃんがいなかったら、私はルナを産んでいたのかな……」

「ちょっと、それはルナちゃんに良くないんじゃ……」

「あ、ごめんごめん!」


 ルミカはルナちゃんの小さな頭をナデナデし、本当に申し訳なさそうに謝っていた。


「でもね、ナギちゃんが私をママにしてくれたんだよ。あのときナギちゃんが背中を押してくれたから……私、今とても幸せに生活しているの」

「ルミカ……」

「ナギちゃん、淋しかった私を助けてくれたのは、ナギちゃんなんだよ。私、これからもナギちゃんと仲良くしたいし、ナギちゃんに優しくしたい。だから……」

「うん」

「これからも、よろしく!」


ルミカの笑顔は、幸せいっぱいだと感じられる程に眩しかった。


「うん、よろしくね!」


 あのとき、お互い大変な状況だった私たち二人。そんな二人が今、楽しく生きている。それを私は彼女たちに伝えたい。そして私も、あのときの再会、そしてルミカに感謝の気持ちでいっぱいだ。


「私の方こそ、ありがとうルミカ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

再会 卯野ましろ @unm46

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ