データベースより

番外壱:文書

 ・船の上で書かれた日記


 明日には南のとう辿たどく。もしかしたらこのページが私が残せる最後の言葉かもしれない。しかしこうかいはない。

 この船にはしんらいできる多くの仲間が朝日はまだかとびており、学生時代からの親友からは帰った後で家族付き合いによる外食に行こうと話し合うほどだ。

 親友、みことの妻はとうばつたいゆいいつの女性隊長ではあるが、今回の作戦には連れてこられなかった。かのじょほどのいつざいが私たちの身になにかあった場合、失うにはしいからだ。


 しかし南の離島にてあっせつ王をたおせば彼女が戦うこともなくなる。それほど希望あふれる作戦なのだ。おにの根絶を目的とした討伐作戦なのだから。

 私にも愛した女性がいる。彼女との間にふたの男児がいる。尊にもむすがおり、話を聞けば同い年だという。私は今から鬼と戦うことが楽しみでならない。こんなことは初めてだ。

 我ながら最高の人生だ。真実の愛を手に入れ、るがない友情を築き、子供達に明るい未来をわたす役目を引き受ける。私と尊の子供ならば、きっとすぐに仲良くなるだろう。


 早く太陽がのぼらないだろうか。そうぜつな戦いが待っているのはわかっている。おそらく仲間の何人かはせいになるだろうか、結果を考えればにとはならない。

 私や尊が死ぬ可能性ももちろんあるが、それでも必ず悪鬼羅刹王を倒す者がいる。彼の者さえ倒せば、鬼はいなくなるのだから。

 いつかこの黒い海が青くなる日がくるはずだ。大戦前の貴重な写真でしかかくにんできなかった、あの青い海を子供達に見せてやりたい。


 私達は果て無く続く豊かな大地と青い海、そして際限のない大空を子供達に渡したい。ドームによる保護区で守られる生活は、自由をおうするにはきゅうくつすぎる。

 胸が高鳴る。きんちょうきょうこうよう感と期待、全てが私をてる。興奮のあまりむらさきいろの目が赤くなりそうだ。もちろんじょうだんではあるが。

 横で同じく日記を書いている尊も同じ気持ちなのか、彼のやさしい赤い目もあかりに照らされてかがやいている。のぞいてみれば、彼は顔も見たことない息子へ言葉を残している。


 彼とその妻は最大規模であるこの討伐作戦の主導者だ。そのため自らにせいやくを課している。それが作戦が成功するまで息子に会わない、だ。

 しな話だが、彼らはそれだけ真面目にこの作戦にいどんでいるのだ。彼の息子は両親の顔も知らず、妻の兄に育てられているという。

 しかし作戦さえ成功すれば対面できるのだ。彼は心底うれしそうに息子に最初に語りかける言葉を探しているらしく、それを日記に書いている。


 私も帰ったら息子達になんと話しかけようか。それとも妻に渡す愛の言葉を探すか。迷ってしまうが、どちらにもかける言葉は決まっている。

 ただいま。この言葉こそ短くもらしい単語であることは伝わっている時点で明らかだ。やはりこのあいさつきにしてはいかないだろう。

 そろそろる準備をしなくては。そくで激戦にえられないようでは笑い話にもならない。もう少し書いておきたいが、やむをえない。


 愛する家族よ、親友の家族よ、本土できっぽうを待っていてくれ。私は必ず世界平和を実現してみせる。




 ・船の上で書かれた日記(字が大きくれている)


 体が重い。これを書くことすらおっくうだが、正気を保っている間に多くの真実と、私のざんを記しておきたいと思う。

 最初に聞いてほしい。すまない。私達は大前提をちがえていたのだ。悪鬼羅刹王など、鬼の首領であり指導者など……どこにもいなかった。

 ああ、どこから話せばいいのか、頭がまとまらない。いつまでも消えない血のにおいが私の頭をきまわし、のどおくを酸味でかしていく。


 まんであった白い隊服すら、いまや親友の血で赤黒くなっている。そう、私はおそろしいことに、親友である男──尊を殺した。

 弁明したい。しかし事実は変わらない。それでも聞いてくれ。こうするしかなかった。私達は未来のため、子供達のため、愛する者のため、たもとわかつしかなかった。

 世界平和という理想は同じだったはずなのに。どこかで捻じれてしまった。まるで鬼の角のように、私達は一本筋でいられなかったのだ。


 結論から言おう。南の離島に鬼など、いなかった。私も最初は意味がわからなかった。人がいないのは当たり前だが、おにぴきすら見当たらない。

 荒れた大地が広がっていた方が良かった。しかし目の前には青々とした植物に野生で生きる動物。大戦前でしか目にできなかった自然のおんけいがあったのだ。

 清らかな水源、熟された果実がみずみずしいままにぶら下がり、じゅんたくな土がくつうらここよいかんしょくを伝える。ただの楽園がそこにあった。美しすぎるあまり、私はすでに死んだのかとさっかくした。


 しかし生きていた。ならば歩いて原因をめるしかない。私達は緑の群生をけて、見つけた。この世のまわしいほどの真実を。

 今でもうそであってほしいと願っている。信じていた物が根底からくずれ、世界全てが反転したかのようにあらゆる物が恐ろしく感じた。

 だからこそ私達はあの道を選ぶしかなかった。世界平和と口では述べながらも、全く逆の結論をぶつけるしかないほどの事実。


 鬼を発生させたのは――――おうだ。


 世界大戦。今となっては失われたかくや生物兵器を多用した、科学の悪徳をんでませた戦い。とある研究チームはもっと有効な自動兵器を作るべきだと論文を提出。

 人間と見れば見境なくおそてきな生物兵器。そのねらいから外れるための結界装置の開発。いざという時にたいこうできる手段としてオリハルコンを利用した能力感受システム。

 鬼、ドーム、能力保有プレート。その全ては戦争利用の物であり、多くの化学薬品を利用したことで研究チーム、煌家と呼ばれる全員が目に異常をきたした。それが赤い目の正体。


 彼らの悪行全てが南の離島で放置されていた研究所に残っていた。さらに最悪なことが書かれていた。世界中に散布された鬼を発生させる薬品の効力は、地球のじょう能力を最大限発動させても五百年はけいぞく

 しかし煌家の血は重度の遺伝子けっかんにより、それをふくんだ者達全てが子孫を残せるのは三百年先までだ。煌家の血は人口の半分へと確実に取り入れられている。どんなにうすまっても、遺伝子はがれる。

 この時点で赤い目を自慢としていた多くの者が声にならないさけびを上げた。未来のため、子供達のためにがんってきたというのに、あと百年ほどで自分達の子孫はえる。血脈を揺さぶる話だ。


 私や尊も例外ではない。どんなに息子達が子供を残そうとも、あと百年。孫かひ孫までしか残らない計算だ。私が愛した妻にこんなことは伝えられない。

 さらに資料を調べていけば、化学薬品の効能は地中にんだ人間の感情や無念といったものをがいねんてきな物から物理的に形成し、肉体とかたよった感情をあたえることで暴走させるらしい。

 困ったことに仕組みについてはさっぱりだ。開発者の名前はキリフダ・みつ。業界ではクローバー博士と呼ばれた、天才れんきんじゅつとある。科学者ではないのだろうか。


 なんにせよ悪鬼羅刹王などいなかったのだ。いや、あえててきするならば、それが煌家なのだ。私達の救世主が、終末への先導者だったのだ。

 人間が何千年戦争をしてきたか。何兆という死者を出して来たか。その全てが鬼となって私達の前に現れている。それが五百年は続き、それなのに人類は減少していく。

 はやあの保護区の中で幸せを享受し、すい退たいしていくしか道はない。そう思いかけた時、尊がある資料を見つけた。


 鬼を発生させる化学薬品に対抗する中和薬。これを世界中に散布すれば、十年ほどで鬼の発生を失くすことができるという。

 強力な薬品であるため、自然にえいきょうを残すとあるが、構っていられない。最初はそう思って大喜びしたが、恐ろしいことに気付いていしまった。

 鬼のいない世界。それは大戦時の世界にもどるということ。現在は鬼のきょうで戦争するひまもない。だから鬼の次はすいじゃくした世界のけんにぎる人間同士の争いだ。


 事態は最悪だ。各国に能力保有プレートは散らばり、鬼に対抗するための兵器も保有され、討伐鬼隊はゆうしゅうな軍人として働ける。

 保護区のドームはあくまで鬼から身を守るためのものであり、戦争兵器には効果がない。十年後、私達の息子がとしごろの青年になるころだ。

 その時代に鬼の脅威がはいじょされたと見切りをつけられたら、各国がいっせいに戦争を始める。勝者が今後百年は覇権を握れる機会なのだから無視することはない。


 私はこの南の離島で見つけた全てを無視するべきだと主張した。息子達に戦争を味合わせるくらいならば、鬼と戦わせた方がましだ。

 戦争は人間同士のみにくい争いだ。鬼のように倒せば終わりではない。倒した敵の息子も、孫も、家族も、全てがにくしみを向けてかえしていくふくしゅうの戦いだ。

 しかも戦争では民間人もばくげきの標的になる。忘れない、何百年とうともくうしゅうと核の恐怖を本土は忘れない。忘れさせてくれない。


 しかし尊は全て公開するべきだと主張した。人間を信じ、鬼を倒し、人は手を取り合って生きて行くべきだと言った。

 彼ならば私の意見に賛同してくれると思っていた。だからきょうがくし、らくたんした。今は夢物語を話すのではなく、現実を話すべきだというのに。

 最高の親友だと思っていた。しかし主張一つちがうだけで争うことになる。ゆずれないおもいが他の仲間にでんし、激しい口論が始まった。


 そして変化が起こった。南の離島に鬼がいなかったのは、人間がいなかったからだ。人間がいるならば、鬼は発生する。

 私達の口論にさそわれたように多くの鬼が姿を現し、きばつめを向けてきたのだ。そこからは乱戦となったが、恐ろしいのは鬼ではなかった。

 現れた鬼は多くが五行鬼、病鬼は見当たらず、妖鬼がほどほど。おにしゃはそれほど多くはない。しゅしゃいっさい姿を見せなかった。


 こわかったのは鬼ではない。この機に乗じて意見を通そうと、私の主張に賛同する仲間を殺そうとする、尊の主張に賛同した者。その逆もしかり。

 船に乗っていた者の多くがれだった。そのため鬼は障害ではなく、私はおそかる仲間と殺し合いすることになった。多くの血が、この隊服ににじんだ。

 半乱狂となるしかなかった。私には本土に残してきた愛する妻と子供がいた。彼らを置いて死ぬことなどできない。ましてや人間の手で死にたくなかった。


 だれもがくるっていた。そして私は、自分の刀で、同い年の息子を持つ、最高の親友を――殺した。


 主張した尊が死んだことにより、負けをさとった者達は意見を変える者もいれば、自害する者もいた。まみれになる頃、鬼は姿を消していた。

 煌家が残した文書をしょうきゃくしようとも思ったが、その気力すら残っていなかった。この島ではなにも得られなかったという結論を持ち帰るため、私達は船に戻った。

 その際に気になった資料を私はふところかくした。キリフダ・三葉が残した、アニマルデータとアンロボットを利用した延命方法、それとは違う方法の特効薬というこうもくだ。


 船に戻った私達は波に揺られている。海中に石がまれるような音がしているが、あれは仲間を殺したことに耐えられなかった者達が自殺する音だ。これで四人目。

 もしかしたら波音にまぎれてもっと多いかもしれない。私は自分の主張が間違っているとは思えない。人が人を殺せば、こうなることは目に見えていた。芽はむべきだ。

 それでも私が尊を殺した事実は変わらず、今も指先がふるえる。どんなに握って爪を立てても、冷たさが消えない。かたが重い、たましいすら冷えていく。


 また一つ、水面に落ちる音が聞こえた。もう寝よう。これ以上聞いていたら狂ってしま……いいや、おくれか。




 ・スメラギ・げんぞうてた手紙(読むには見苦しいひっせき


 いきなりこのような手紙を送って申し訳ない。本来ならば貴方あなたに話す資格などない私だが、どうか最後まで見てほしい。

 最初に謝罪申し上げる。本当にすまない。私はよくのために親友である、貴方のていを殺した。どうかごくに落ちることを望んでほしい。

 しかし私自身も限界が近い。意識がまともである間に貴方に預けたい大事な物がある。血でよごれてはいるが、解読するにはじゅうぶんな物である。どうか血に関してはれないでほしい。


 キリフダ・三葉。彼は天才だ。この博士は煌家があらゆることをもみ消し、忌まわしき血を広めることで地位を確立するのをした上で、とある解決方法を残してくれたのだ。

 残念ながらアニマルデータとアンロボットに関する項目は現時点では再現できない。いや、正確には技術が異次元すぎる。文明自体が違うと言ってもいい。だが重要なのはもう片方だ。

 煌家の血には大きな遺伝子欠陥がある。それによりけいしょうだが不治の病と思われる病気や、百年後には人類史に大きな損失を与える期限切れという事態が起こる。


 くわしくは彼の資料を見てほしい。だが煌家の血に宿る遺伝子欠陥をてんする特効薬を彼は発明していた。これ一つで我々は子供達を救えるかもしれない。

 風邪かぜに似たしょうじょうが治らないぜんそくに近い不治の病。あかを宿す目を持つ子が多くかかるため、赤風病と名付けられている。今もこの病は増え続けている。

 この病気は病院生活では問題ないが、いっぱん生活において激しい運動をするだけで一気に熱が上がって人間の限界温度をえるという恐ろしい病気だ。


 そして百年ほどで人類の半分以上が血を残せないのは、この病で起こる熱が関連している。主に男児のせいそうに高熱でげきを与え、せいしょく機能をそこなわせるのだ。

 つまり熱へのたいせいがない。煌家の遺伝子欠陥は主にここへ集約する。キリフダ・三葉はその熱への耐性を上げる薬を数式と成分表で残している。開発し、はんばいするには時間がかかる。

 私が貴方にこの資料をたくすのは、私にはその時間がないからだ。なにより私がこれを公表しようにも上からの圧力がかかる。


 むのは大変心苦しいが、貴方に伝えたい。討伐鬼隊のその上、政府。彼らは煌家が残した全てを知り、その上でちんもくを続けている。

 南の離島で見た物全てを彼らは知っていた。それを承知で我々を南の離島で討伐成功をいのるなどたわごといて見送った。帰ってきた我々は討伐鬼隊にざいせきする資格全てうばわれた。

 それだけではない。彼らは南の離島で見た全ての口外を禁じ、少しでも口答えした者はその場で殺された。後にその者の家族も殺されている。


 今の私は半分きょうじんとしてあつかわれ、正気を保っている間はかんの目がある。この手紙が荒れているのは狂人のりして書いた手紙であることを許してほしい。

 私の部下にぶき御門みかどという信頼できる部下がいる。この手紙はいに来た彼らにたのんだ物である。見終わった後は処分してほしい。狂人の振りして暴れながら渡したが、不安はぬぐいきれない。

 私は近々本格的に狂う。昨日も夢の中で鬼を殺そうとし、気付いたら息子の首をめていた。意識もない間に動いて殺そうとするなんて、常人では考えられないことだ。


 いやむしろ狂って死にたい。狂いきれずにいるのが苦しい。ずっとずっと苦しくて、しかし打ち明けられない。私は自分の正義を信じ、親友を、尊を殺した。

 だがキリフダ・三葉の資料を目にするたびにもっと早く見つけていれば、と頭に虫がくように不安が襲ってくる。私は人間を、友情を、親友を──信じられなかった。

 私は私自身しか信じなかった。その結果がこの始末だ。命をけて友情を信じられなかった私は、愛情を優先して大事なきずなを自らの手でほうむった。


 すまない。本当にすまない。このような一方的な謝罪と懺悔を貴方に言いたいわけではなかったのに、筆が止まらない。ああ、血の臭いが鼻をかすめる。

 また私は狂う。どうか私が死んで数年が経過してから、貴方がたよれる科学者にキリフダ・三葉の資料を渡し、製薬会社とけいやくして薬の開発を頼みたい。

 私が死んですぐに開発すれば関連をあやぶむ者がいるかもしれないからだ。これはそれだけ根が深い問題であり、だからこそ原因の根絶につながると信じている。


 水音が聞こえる。人が落ちる音だ。ああ、もう時間がない。どうかお願いだ。私が残せる最後の良心を、どうかかなえてほしい。

 身勝手なのはわかっている。それでも、もう、これしかない。もしも貴方が人を信じ、鬼のぜつめつを願うならば、南の離島に信じられる者をしてくれ。

 そこに煌家の全てがねむっている。そこに尊は眠っている。この世の全てが、悪鬼羅刹王の代わりにちんしている。どうか頼む。


 命を賭けるにあたいする友情が、それを信じる力が、私にあれば────。(この先は読めない)




 ・脳波測定によるけんたいが修羅になった際の思考


 ワタシハナニヲシテイルノダロウ。コノ手ノ中ニアッタ、花ノくき、ハドコダロウカ。ポキリ、ト折レタ美シイ花ハドコニ。

 アンナニ美シイ花ヲ、ワタシハ手ニイレタノニ、オッテシマッタ。真実ノ愛ノヨウニれいれんナ匂イガ、イマモ心ウズカセル。

 じゃダ。ナンダ、コノ者タチハ。イヤ、オボエテ、イル。ヤブキ、ミカド、ハヤマ、ソシテ……尊ノ妻? アア、ソウカ、ソウカ。


 スマナイ。スマナイ、スマナイスマナイスマナイスマナイスマナイスマナイスマナイ……。


 シカシ子供タチヲ、オイテ、イケナイ。ワタシノ妻ハドコダ。イヤ、ドチラモ首ヲメテ、イヤ、デモ生キテ、イヤ。イヤ。イヤッ、イヤッァアァアアァアアアアアアア!!!!

 アア、子供ハドコダ。私ノ大事ナ、友情ヨリモ優先シタ、私ノ、ワタシノワタシノ、ワタシノモノ、ダ。アレハワタシノモノダ。イヤ、ワタシガコロスベキモノダ。イヤ。

 ウゥウウアァァァアアアア。チガウ、イヤ、ソウダ、ソウジャナイ。水音ガヒビク、なみだナンテ軽イモノジャナイ。アレハ、人、ノ音ダ。アア、イケナイ。イケナイ。


 血ガ、鼻ヲ、視界ヲ、掠メル。イケナイ、行ケナイ。オイテイケナイ。オイテ逝ケナイ。チガウ置イテ生ケナイ。生カシテ置ケナイ。イカシテオケナイ。

 ソウダ、ソウジャナイ。イヤ、デモ、チガウ、ソウダ、妻ハ、ワタシガ、ポキリ、トオレタ。アア、ソウダ、ポキリ、ト折ッタ。ワタシガコノテデコロシテシマッタ。

 ダカラ、コドモヲ、ノコシテ、イカシテオケナイ。ドコダ、カワイイ、ワタシノ、コドモ。フタリノ、フタゴノ、ダイジナ、コドモ。セカイヨリモダイジナ、タカラモノ。


 アア、ジャマヲスルナ。コロスゾ。イタイ、イタイ、イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ。

 イタ、イタ、イタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタイタ、ミツケタ。

 ソコダ。カクシテモワカル。ワタシノタカラモノ。アマイニオイガスル。コドモトクユウノニオイダ。イマコロシニイク。オイテイカナイ。イッショニ、逝コウ。


(その後の脳波は人間と判断できる物ではありません)




 ・まとめ


 以上、全てがアイゼン・怜音れおんの記録文書となります。二つは政府が保管し、一つは焼却、一つは貴重な鬼の資料として保存されています。

 なお上記全てがしんぴょうせいに足る物ではないことを明示します。また焼却された手紙に関しては存在すらもまっしょうされています。検証の仕様がありません。

 この文書全てをえつらんできる方の条件は、この件全てに関連しない者、とします。繰り返します。条件は「この世界に存在しない者」に限ります。


 全ての保存データをスリープモードに移行します。またのようをお待ちしております。

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